報告73 ノートを使った連絡方法
【1】
私が面談室に入った頃、飛田はその事を知らず、職員室で仕事をしていた。そんな最中、飛田に声をかけた生徒がいた。
「飛田先生、失礼します。」
それは、私のノートを持った上野だった。飛田は、回転イスをくるりと回し、上野の方を向いて言った。
「おや、上野くんどうしたんだい?」
「北沢くんからノートを渡すようにお願いされました。」
そう言って、上野は飛田にノートを渡した。飛田は、そのノートの中身を確認して言った。
「分かりました。確かに預かりましたよ。ご苦労様。」
「失礼しました。」
上野は、軽く頭を下げ、足早に職員室を出て行った。その姿を見守った飛田は、立ち上がり窓際まで移動して外の様子を眺め始めた。その数秒後、上野たち3人組がどこかに走って行く姿を確認した。
(まさか、上野くんがあのノートを持ってくるなんて、想定外ですね。あの3人組、何かを企んでいますね。北沢さんは、一体あの子達に何の指示をしたのやら…。)
【2】
一方で、私は、面談室に荷物を持って待機していた。私が椅子に座って待っていると、北野が面談室に入ってきた。彼女は、扉を閉めると誰も入ってこれないようにカギをかけた。彼女は、椅子に座ると私に話し始めた。
「神田くんから聞きました。あなたが、掲示物の張り替えや連絡黒板へのいたずら書きをしていると。どうなんですか?」
私は、正直に答えた。
「間違いありません。ただし、連絡黒板に記入した内容は、必要な連絡を書いただけであって、いたずら書きではありません。」
「いいえ、勝手に書いたのだからイタズラ書きです!」
それはまた、ずいぶん身勝手な理論だ。とりあえずは、話を聞いておこう。私が北野の発言に反論しないでいると、彼女はさらに続けて言った。
「どうしてあんな事をしたんだ?」
私は、しれっと答える。
「学級委員ですから。」
「勝手な事をするんじゃない!!人に迷惑ばかりかけやがって!!!」
北野の口調は、徐々に強まってきた。私は、挑発するかのように言った。
「どこが迷惑なんですか?具体的に言って下さい。改善しますので。」
バンッ!!!!!!!
北野は、思い切り机を叩いて怒鳴り始めた。
「まず初めに反省しろよ!!!!勝手にやったのは、お前だろ!!!!!誰が掲示物を直したと思ってる!?そもそも学級委員なんだから、指示通り仕事をしろ!!それ以外のことを、勝手にやってどうするんだ!!!」
私は、とぼけながら返事をした。
「指示以外の仕事をした事に問題があるんですね。わかりました。それで、僕はこれからどうすればいいですか?」
北野は少し落ち着いて言った。
「あなたには、学級委員の仕事を今後任せません。調査書にも書きませんからそのつもりで。今後は、別の子を学級委員にしますから。それから、今までやった事をクラス全員の前で謝ってもらいます!」
「そうですか…。」
「それから、もう一つあります。」
「何でしょう?」
「連絡黒板に書かれた内容は、生徒が知らない内容です。…どうやって知った!?まさか、盗聴とかしてないよな!?荷物の中を見せなさい!!」
「構いませんよ。」
そう言って私は、カバンを差し出した。しかし、いくら血眼になって調べても、それらしきものは、出てくるはずがなかった。その時だった。
「北野さん!電話ですよ!!」
扉の外から飛田の声が聞こえた。北野は、私に待つように指示をした後、飛田とともに職員室に向かった。
職員室に戻った北野は、電話の受話器を取り上げた。しばらくすると北野は電話越しの相手に言った。
「私は、塾に協力しないと言ってるでしょう!!書類は作りませんから!!」
そう言って北野は、電話を切った。飛田は北野に尋ねた。
「北野さん。誰からですか?」
「北沢の保護者からです。授業進度の確認の電話です。全く、親子揃ってとんでもない奴らだ。」
そう言って、彼女は面談室に戻り扉を開けた。しかし、もうそこに私の姿はなかった。
【3】
学校を抜け出た私は、わかばスクールに向かっていた。弟に会うためだ。スクールに着くと、私は弟のいる事務室に入った。私は、事務室に弟以外の人がいない事を確認すると、弟に声をかけた。
「すまないな、手伝わせてしまって。」
「大丈夫。北野に電話しただけだから。はいこれ。上野くんが渡してくれって。」
そう言うと、弟は小型録音機を私に渡した。私が、それを受け取ると、弟に質問した。
「で、あの3人はどうしてる?」
「上野くん、水上さん、大塚さんの3人のこと?今は、隣の教室で授業受けてるよ。あの子達から、北野に電話するようにお願いされたんだよ。」
「まあ、そうするように、ノートに書いておいたからな。おかげで逃げ出せたよ。これでだいぶ証拠も揃ってきたな。…だが、今日は流石にキツかった。」
私はそう言うと、事務室の机の中から錠剤を取り出し、飲み込んだ。その様子を見て、弟を見ながら言った。
「兄さん…。次は、どんな手を打つの?」
「ああ。ここからが正念場だ。」
私はそう言いながら、冷や汗で湿った手のひらを握った。
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