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報告72 正しい行動とは

【1】


 私は、いよいよ神田から警告を受ける事になった。いや、正確に言えば宣戦布告と言った方がいいだろう。私が、いつものように教室に入ると、神田が待ち伏せしていた。まだ、登校時間の1時間以上前だと言うのにご苦労な事だ。彼は、別に用があるわけでもないのに、声をかけてきた。


「これからは、お前が悪さをしないように、毎日見張ってやるよ。」


私は、笑みを浮かべながら、彼に言った。


「そうですか。できれば大事な時期ですから、勉強に専念してもらいたいところですね。それと、勘違いしているようなので言っておきます。あなたにとって私は敵でしょうが、私にとってあなたは、敵でもなんでも無いんですよ。」


私の発言がしゃくに触ったのか、神田は少し不機嫌そうに言った。


「どう言う意味だ!!」


「そのままの意味ですよ。」


私はそのまま着席して、勉強道具を開いた。


「僕なんか眼中に無いって事か!?…絶対に潰してやる。」


そう言って彼は、自席に戻っていった。



【2】


 その日の放課後、私は上野に呼び止められた。


「北沢!北野に呼び出されたって…お前大丈夫か!?」


私は、先程の帰りの会で北野から、面談室に来るように言われていた。おそらく、神田が私の行なっていた事を有る事、無い事、伝えたのだろう。私は、心配そうな上野の顔とは対照的に楽観的に答えた。


「まあ…なんとかなるだろ。」


「何とかならないだろ!!第一、誰だよ?北沢の事をチクッたのは!?……やっぱり神田か?」


上野はそう言って、神田の方を見た。見られている本人は、こちらを見ながら不敵な笑みを浮かべていた。非常に嫌な笑みだ。上野は、それを見て握り拳を作りながら言った。


「あの野郎!!」


上野は、神田を睨みつけた。その様子を見て、私は上野の腕を掴んで言った。


「彼のことは、放っておくんだ。彼のやった事は、正しい行いなんだから。」


「何でだよ!!あんなの北野のご機嫌取りじゃないか!!じゃあ、北沢のしてきた事は、悪い事なのか?」


私は、上野をなだめるように言った。


「そもそも、悪い行いと言うのは、他人から見れば正しい行いになる事もあるんだ。人間社会に勧善懲悪なんて言葉はない!言ってしまえば、お互いの正義をぶつけ合っているようなもんだ。だから、今、彼に暴力や恫喝をしたところで、お前が悪者になるだけだぞ!」


上野は、悔しそうな顔で言った。


「でもよぉ!!何も出来ねぇのかよ!!」


私は、リュックの中から一冊のノートを取り出し、上野に渡した。


「何も出来ないなんて事はないぞ。そのノート、飛田先生に持っていってくれ。」


「どう言う事だよ?」


「飛田先生から特別課題出ててさ、今日提出するの忘れてたわ。これから北野先生と話してくるから、代わりに持って行ってくれないか?」


「お前なー!こんなときに!!」


「じゃ、頼んだぞ。それから、神田には、絶対手を出すなよ。」


そう言って私は、そそくさと退散した。



【3】


 私が教室から出た後、上野は神田への不満からか、私の渡したノートを強く握りながら硬直していた。その時だった。神田が捨て台詞を吐きながら教室を出て行った。


「…生徒の味方なんかしやがって、ざまあみろ。」


その瞬間、上野の中にあった自制心が引きちぎれた。


「は!?てめぇ今、なんつった!!」


上野は、持っていたノートを神田に投げつけそうになったが、その様子を見た他の生徒が、腕を掴んで彼の投擲とうてきを阻止した。上野は、振り向き腕を掴んだ生徒が誰なのかを確認した。その人物は、水上だった。


「そのノート、北沢のでしよ!投げないの!」


「…わかったよ。」


神田がその場を立ち去り、上野が落ち着きを取り戻したところで、大塚が首をかしげながら言った。


「ねえ、2人とも。やっぱりおかしいと思わない?」


「何がだよ?」


「北沢くんが、こうなる事を予想できなかったとは、到底思えないんだよね。」


「確かに…。でも、北沢は何を考えているの?」


「それは、私にもわからないよ。でも、みんなで教室の掲示を手伝った時に、北沢くんこんな事言って無かった?「〝まだ〟この事は、内緒にしておいてくれ。」って。もしかしてこうなる事も計算の内だったんじゃないかなって。」


「あいつの狙いって一体何なんだ?」


「私にも検討がつかないよ。それより、もう一つ気になることがあるの。」


「気になること?」


「北沢くんが渡したそのノート…。本当に、数学の課題が書いてあるのかな?いくらなんでも、このタイミングで飛田先生に渡すの不自然すぎない?というか、上野くんに渡す事を任せた事も不自然だし。」


「確かに…言われてみればそうだよな。もしかしてこのノートを見れば何か分かるんじゃないか!?」


3人は目を合わせ頷く、その直後、上野は私のノートを机に置き手をかけた。



     「それじゃ、開けるぞ。」



     上野は、私のノートを開いた。



いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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