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報告7 中間テストについて

【1】

 ゴールデンウィークが終わり、中間テストが近づいてきた。試合も終わり、次は上野に点数を取らせなければならない。水上に言われた感謝の言葉、私の中であの言葉が少し気になってはいた。何かモヤモヤする。しかし、今は気持ちを切り替えなければならなかった。悩みの種はもう一つある、私は今回の中間テストで本気を出して良いのだろうか…?


 放課後、私はいつものように上野を呼び出したが、教室には、なぜか水上も居た。

「何でお前も居るんだよ。」

上野が言った。

「テスト近いから教室で自習してるの。文句ある?」

私は気にせず上野に指示をした。

「テスト前だからって特別なことはしない。今まで取り組んだテキスト、本文の訳や単語の確認をすれば良い。あとは、強いて言うなら今までの文法の復習だな。最もこれは、ちょっとずつやってた事なんだけどな。」

「なんだよ。今まで通りか。なんかこうスゲー、勉強法とかあるのかと思ったけど。」

「無い!ただ、ダメ押しでこれを追加でやろう。」

北沢は一冊の本を出してきた。それは都立高校入試の過去問だった。上野は思わず怯んだ。

「え!?入試!?早くね!!」

「いや、この間北野のテストを確認したら、10点分くらいは入試問題だった。それにこれが解けるとモチベーション上がるしな。」

「分かったよ。よし!いっちょやってみっか!!」


 さてと、私も少し勉強せねば。すると、水上が声をかけてきた。

「あのさ北沢、数学ってできる?」


…お前もか。



【2】

 いよいよ中間テストが始まった。私も色々と悩んだが、全力で取り組むことにした。中間考査は5教科のテストを2日間かけて行う。1日目は国語と英語だ。国語は採点に時間がかかるため1日目になることが多い。英語も比較的そうだ。


 テストの問題は、大したことはなく教科書の内容理解を問うものが多い。一部入試問題が出題されているが大したことはないだろう。問題の英語だが、ほとんど今まで上野に解かせていた類似問題だ彼なら問題なく解答できるだろう。私の戦いはこれで幕を閉じることができる。私は胸を撫で下ろした。一つ気になっていたのは、飛田の数学のテストで出題された最後の一問だった。素数の問題が難しすぎる。


nは正の整数で

n^2 + 2n -3が素数となるようなnの値はひとつだけ存在する。そのnの値を求めなさい。


いくら素数を授業でやったからと言ってこれはどうなのだろうか?完全に高校レベルだ、中学生でも無理やり数え上げれば無理では無いが…。仕方ない、高校の知識を使って解くしか無いだろう。しかし、解ける生徒はいるのだろうか。



【3】

 テストも終わり、今日から少しづつ返却される。今日は英語が返却される日だ。上野は英語の授業までの間全く落ち着いてなかった。いよいよ英語の授業が始まった。


 北野が声を上げる。

「今回は簡単なはずでした。なのに平均点が60点です。これはどう言うことなんですかね!?」

また北野の説教が始まった。彼女の話を聞いて、上野は不安そうな顔つきに変わった。そしていよいよ、上野のテストが返却される。北野は上野に声をかける。

「上野くんよく頑張りましたね。もう部活に出て大丈夫ですよ。」

上野の点数は86点だった。まずまずの結果であろう。上野は北沢に尋ねた。

「ところで、北沢は何点だったんだよ。」

「え?98点だけど」

「へ!!!?」

全員にテストを返却し終わると北野がさらに言った。

「今回のテストの最高点は98点です。北沢君よく頑張りましたね。」


うわ、言いやがったよ。やめて頂きたい。


 その後のテスト返却でも、数学以外の教科は、名前を晒されてしまった。数学のテストの際には、上野が私に尋ねてきた。

「俺、数学だけなら自信あるんだよな。最後の問題が難しすぎて出来なかったけど…。北沢どうだった。」

「え?100点だけど?」

「は!?なんで!!どうしてだよ!?」

「その裏切られたみたいな顔やめろ。」



【4】

 放課後、上野にファストフード店に連れて行かれた。私は断ったのだが、お礼をしたいとのことだったので、断るわけにもいかなかった。自宅に帰り私服に着替えた私は、ファストフード店に向かった。最後にファストフードを食べたのは一体いつだろう。


 上野は私にハンバーガーセットを振る舞ってくれた。中学生にとっては大変な出費だろう。私は、ありがたくいただいた。若い頃を思い出す味だ…。美味いかと言われれば普通である。私は上野に質問した。

「これでようやく部活に出られるな。今まで渡したテキストは全部プレゼントしてやるよ。お前はこれからどうするんだ?」

「お前に勉強教わってから、英語が楽しくなったよ。俺、英語が勉強できる大学に進みたい!」

「そうか、良い心がけだな。これからはお前一人でも大丈夫だろう。」

「ところで北沢は、どうするんだよ?高校は都立に行くのか?」

「そ…そうだな…。全く決めていない。」

受験を一度経験していても、こうなると迷うものなのだな。私も考えなくてはなさそうだ。

「北沢がいなかったら俺ダメだったよ。ありがとう。」


 私は上野の言葉を聞いてモヤモヤの原因がわかったような気がした。私は、水上にしろ上野にしろ、私に依存しなければ成長出来ない状況にしてしまった。彼は今後自立し様々な人たちと関係を築きながら生きて行かなければならない。なのに、私は彼が、彼女が私一人に依存する状況を作り出した。私は教師として間違った事をしてしまった。


 とはいえ、これで上野や水上と関わることもないだろう。落ち着いて過ごせるな。と思っていたのもつかの間、次の日の放課後になって一人の女子生徒に声をかけられた。



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