報告54 帰省するより両親に来てもらった方が合理的な件
北沢先生の補足
今回はギャグ回です。少し辛辣な言葉が出てきますが、脚色だと思ってお楽しみください。
ギャグ回を作るのは、初めてなので面白いかは、分かりませんが温かい目で見て頂けると幸いです。
【1】
私が目覚めてから、2時間くらいだろうか。弟がリビングにやってきた。昨日の疲れが残っているのか、まだ眠たそうだ。
「兄さんおはよう。ずいぶんと早いね。」
「教師だった頃の名残りさ、朝早く目覚めるのが習慣になってる。」
「そう言えばそうだね、学校の始業って大体8時だし。で、兄さん台所で何してるの?」
「今日の支度に決まってるだろ。とりあえず朝食にしようか。準備は出来てるぞ。」
私たちは、テーブルにつき、朝食をとりながら今日をどうやって乗り切るかを話し合った。
「で、兄さん。さっき台所で何をしてたの?準備って言ってたけど。」
「今日の昼頃来るんだろ?料理を作ってたんだ。酒も買ってあるぞ。」
「兄さん昔からそういうの、そつなくこなすよね。お酒も買ってきてくれたんだね。」
「もちろんだ、今回の作戦の要になるからな。」
「何か作戦があるんだね。何をする気?」
「そんなもん、酒飲ませて、酔わせてゴマかすに決まってるだろ。そのために塩分濃いめのツマミを作ってるんじゃないか。今回選んだ酒も、飲みやすくアルコール度数が比較的高いものを選んできた。」
「………兄さん、親にも容赦ないね。鬼畜だな〜まったく。」
「私は、別の部屋で様子を伺ってるから、永が上手く父さんと母さんをあしらってくれ。受験勉強で部屋にこもってるって言っておけば、深入りもしてこないだろう。」
「設定まで完璧じゃん。っていうか、もう本当のこと話しちゃえば。」
「私がこの姿になってお前を呼んだとき、お前に何時間説明したか覚えてるのか?」
「サーセン」
その後も私たちは、両親を迎え入れる準備を淡々と進めていった。
【2】
私たちは、準備を終えリビングでくつろいで居ると、呼び鈴が鳴り響いた。
「来たみたいだな。」
「そうだね。じゃ、行ってくるよ兄さん。」
「ああ。頼んだぞ。」
そう言って私は、リビングの隣にある書斎に移動した。それと同時に、ドアが開く音と懐かしい声が聞こえる。
「久しぶりね、永!仕事忙しいって言ってたけど、元気だった?」
「母さんも元気そうだね。こっちは、ぼちぼちだよ。父さんも久しぶり。」
「うむ…。」
三人の足音は、会話をしながらリビングに近づいて来た。そしてすぐにその足音は聞こえなくなった。どうやら、三人ともテーブルについたのだろう。乾杯の音が聞こえる。母は、一口酒を飲むと弟に言った。
「まさか、永が養子をもらうなんてね。今はどこにいるの?」
「今、隣の部屋で勉強してるよ。受験生だからね。後で挨拶に来ると思うよ。」
「そうよね。邪魔しちゃ悪いわよね。楽しみだわ〜。…明にも見せてあげたかった。」
「…………。」
食卓は、静まりかえってしまった。両親は、私が行方不明ということで何ヶ月も前に弟が伝えた。おそらく、私が死んだと思っている。せっかく子供に会いに来たというのに、ジメジメした空気が漂う。それに耐えかねたのか、父が話題を変えた。
「この、用意してくれた料理上手いな。母さんも食べたらどうだ?」
そういうと、母は私の作った料理を口にした。予想以上に好みの味だったようで、急に母の様子は明るくなった。
「あら!これ、おいしいじゃない!永が作ったの?」
母は弟に聞いた。
「いや、うちの子が作ったんだ。料理作るのが好きみたいでさ。」
弟は、そう答えた。
「そうなの!中学生なのにすごいわねぇ!そういえば、明も中学生の頃に料理を作ってたわねえ。味付けも似てる気がする…。」
「…………。」
また、ジメジメした雰囲気になってしまった。こいつ!マジで、何しに来たんだよ!!!そう思っていると、弟がとんでもないことを口にした。
「そろそろ養子の子見たい?」
おぃぃぃぃぃぃぃ!!!まだ10分くらいしか経ってないぞ!!しかし、私の思いとは裏腹に、弟が部屋に入ってきた。弟は、両親に聞こえないように小声で私に説得してきた。
「兄さんごめん!もうこの空気に耐えられないんだけど!紹介していい?」
「10分くらいしか、もってないじゃないか!そもそも、私がそっちに行ったところで、雰囲気が明るくなるとは限らないだろ!」
「また、勉強するから戻る、とか言ってくれればいいからさ。頼むよ!」
私は仕方なく、両親と対面する事にした。両親は、私の姿を見て驚いていた。そりゃそうだ、中学生になったとしても、知っている顔なのだから。母は、キョトンとした顔で弟に言った。
「なんか、小さい頃の明にそっくりね…。あきらー!!どこに行ってしまったのー!!」
母はついに、机に突っ伏して泣き叫び始めた。それに対して父は、冷静に声をかけてきた。
「はじめまして、永の父の祥です。まぁ、座ってよ。」
私は、父の対面に座った。父は私にさらに質問する。
「それで、君の名前は?」
「明と言います。」
父は、その名前を聞き、さらに驚いた。そして、弟を問い詰めた。
「明だって!?おい永!どうなってるんだ!?」
「ぐ…偶然だからね!本当に偶然だからね!!」
弟はしどろもどろに、言い訳をしている。
「あきらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
母は、私の名を聞きさらに泣き叫ぶ。
地獄すぎる。…誰か何とかしてくれ。
今度は父が、私に質問してきた。
「それで、明くん。2度目の中学校生活はどうかね?」
「楽しく過ごしてます…ってはい!!?」
私の聞き違いだろうか。さらに、父は母に向かってこう言った。
「母さん。このくらいにしてやろうか(笑)」
母は、体を起こした。全く泣いている様子がない。一体どういう事だろうか?
「いやいや、すまん、からかって。明のことは、俺も母さんも知ってる。安心しなさい。」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
私と弟は、口を揃えて叫んだ。そんな私たちを無視するかのように父は静かに言った。
「とにかく、明も来たことだし乾杯しよう。」
その後は、四人で食事を楽しんだ。何の変哲もない親子での食事だ。私の格好を除けばの話だが。母は、私に言った。
「まさか、明が中学生になっちゃうなんてね。懐かしいわ〜。」
そう言いながら抱きついてきた。酔っているのだろうか。私は、抵抗しながら言った。
「やめろ!冷静になれって!今、抱きついてるの、40のオッサンだぞ!!」
「えー。でも、今は中3でしょー。」
「中3でも抱きつかないわ!!離れんかい!」
そう言って私は、母を引き剥がした。私は、父に質問した。
「それにしても、何故私の事を知ってたんだ?」
「ああ。そうだね。それは話しておいた方がいいね。実はね、私たちは、明を探すためにビラを配ってた時があってな。そのときに、明の居場所を教えてくれた人が居たんだ。」
「ビラなんて配ってたのか!?それよりも、私の事を教えたその人って言うのは一体?」
「名前は聞いてないんだけどね、明に起こったこと、明が通ってる中学校を教えてくれたよ。まぁ、そんな話は信じられなかったけど、いざ調べてみたら、明の格好をした中学生が居るじゃないか。しかもその子は、明の住んでいるアパートに入っていく。これは確定だと思ったね。」
「だったら、何で言ってくれなかったんだよ。」
私は、父に言った。すると父はとんでもない事を言ってきた。
「いやね。明の事を教えてくれた、その中学校の先生がね。いっそ、ドッキリやったら面白いんじゃないですか?って言ってきてさ。その話にのっちゃた。」
「………………。」
私たち兄弟は、目が点になりながら黙った。それを見て母はゲラゲラ笑っている。父はさらに言った。
「さてと、そろそろいい時間だな。私たちは帰るとするよ。母さん帰るよ。」
「はーい。永、明、正月はちゃんと顔出すのよ。」
そう言って、両親は去って行った。私たち兄弟は、棒立ちのまま二人を見送った。両親が扉を閉めた後も、私たちは、そのまま立ち尽くしていた。
「兄さん…。父さんと母さんに兄さんの事を教えた人って…。」
「あいつしかいないな…。」
「家具、買っちゃったね…。返品できるかな?」
「最悪、金は私が払おう。無理を言ったのは、私の方だ。」
「僕さ、あの人に初めてムカついたよ。」
「そうか、今の私もひさびさにムカついている。」
飛田ぁぁぁぁぁ!!!
いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。
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ギャグって難しいですね。でも、北沢の設定ってイジれば面白いと思うんですよね。何か面白いシチュエーションがあれば教えて下さい!