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報告53 トラブルに巻き込まれた時の正しい回避方法

北沢先生からの警告


この話に書かれている、不良生徒の撃退法は、真似しないようにしましょう。

【1】


高校生たちをあしらった私は、大崎を連れて人通りの多い場所に移動した。


「ここまでくれば、とりあえず大丈夫だろ。」


「北沢、お前自分が何をやったのか、分かってるのか?」


大崎は心配そうに私に言った。私は、大崎に言った。


「俺も、君も、彼らから仕返しを受けることは、ほぼ無いと言っていい。安心していいぞ。」


「どこにそんな保証があるんだよ!」


「あいつらは、大金を奪うことの恐ろしさを知らなかった。だからこそ、あいつらはもう終わりだ。」


「どういう事だよ?」


私はスマホを取り出し、弟に電話をかけた。


「もしもし、こっちはうまく行った。予定通り、警察に被害届を出してくれ。」


私はそう言って、スマホを切り、大崎に説明を続けた。


「あの腕時計は、恐喝され無理やり奪われた事にして、警察に通報する。これで、換金しようとした瞬間、速攻で足がつき逮捕されるって寸法だ。」


「でも、あの時計って、お前が渡しただけじゃないか。」


「今、被害届を出しに行ったのは、俺の親だ。大の大人の話と、不良高校生の話、警察はどっちを信用するかな。」


「お前…怖いやつなんだな。」


「それよりも、そろそろ教えてくれないか?学校になぜ来なくなったのか。」



「………それは。」



 大崎は黙ってしまった。しかしそれは、後ろめたい気持ちで黙っている訳ではないようだった。その根拠が彼の醸し出す雰囲気から読み取れた。わたしは、彼に質問を重ねた。


「もしかして、自分でも原因が分からないんじゃないのか?」


 そんなことあり得るのか、と思うかも知れないが、不登校の生徒の中には、学校に通えない原因を答えられない者も少なくないのだ。それは、原因が無い訳でなく、自覚できていないだけで、そこには様々な背景が潜んでいる。これから、それを探らなくてはならない。私がさらに質問をしようとしたその時、大崎は口を開いた。


「……お前は、本当に何でもお見通しなんだな。その通りだ。去年の春、新しいクラスになってから学校に行くことが辛くなった。別に人間関係に苦労していたわけでも何でも無いのにな。ダメなんだ、あそこに行くと。」


「どんなふうに辛くなるんだ?」


「俺な。前に自分で、命を絶ってしまおうかって、思ったくらい追い詰められた事があったんだ。よく小説や漫画とかで絶望って言葉使われるけどさ、あんなもんじゃ無い。どうしようもない絶望感を抱いた事があった。

 不思議なのは、あのクラスに行くと、どういうわけか、その絶望感が蘇っちまうんだ!それが、怖くて怖くてたまらなかった!!これが、学校に通えない理由だ。」


大崎の額からは、汗が滲み出ていた。それは、夏の暑さからくるものではないことを、彼の震えた右手が物語っていた。これではっきりとした。彼が学校に来れない原因はPTSDだ。専門機関できちんとカウンセリングを行えば改善されるかもしれない。ともかく、今日はこの辺にしておいた方がいいだろう。私は、大崎に言った。


「そうか…。すまん、変なことを聞いたな。ちなみに、今日スクールに来たときは、同じような絶望感を感じたか?」


「いや、全くなかった。むしろ、安心感があったよ。前にさ、すごく面倒見のいい先生がいてさ、本当にいい先生だったよ。でさ、北沢。スクールでお前の授業受けてたら、どうしてだろうな、その先生のことを思い出したよ。」


「そうか、なら良かった。なら、うちのスクールにいつでも来てくれ。」


「ああ。ありがとう。」



【2】


 大崎の一件から数日が経った。あの高校生たちは、時計屋で私の腕時計を換金した時点で、足がつき逮捕されたようだ。大崎も、その日以降スクールで授業を受けるようになっていた。初めは、人手不足で大変だった状況も、大学生たちのテスト週間が終わった途端、一気に解決へと向かっていった。まだまだ、夏期講習中ではあるものの、ひと段落ついたと言ったところか。


 しかし、そんな中でまた一つ問題が発生したようだ。先ほど、電話をしていた弟が困り顔で事務室に戻ってきたのだ。


「なんだ永?何か問題でも起こったのか?」


「兄さん…。もうすぐお盆休みだよね。実家に帰って来いって。」


「そうか、まあこっちは、私が居れば大丈夫だろう。顔出してやれよ。どうせこの姿じゃ、実家に帰れないしな。」


「それがさ…。僕が兄さんと養子縁組を組んだのがバレてて、養子の子を連れてこいって母さんが聞かないんだよ。」


「それは、断れないのか?」


「うん。そう思って、今年は忙しいから帰れないって言ったらさ、「じゃ、お父さんと会いに行くから。」だってさ。」


「な…なにぃ!!!!2人はいつ来るんだ!?」


「明日来るってさ。」


「嘘だろ………。」


 これは、急いで準備をする必要がありそうだ。



 次の日の朝、私はいつもとは違うベッドの上で目覚めた。私は、いつものように、身体を起こそうとしたが、どうにも体が重たい。どうやら、全身が筋肉痛になってしまったらしい。それもそのはずだ。両親から連絡があった直後、私たちは慌てて家具屋に行き子供用の家具を揃え、それを弟の家に全て運び込み、本当に養子がいるかのように偽装工作したのだ。その作業は、夜中まで続いた。弟は、昨日の作業で疲れているのか、まだ眠っているようだ。


とにかく、面倒な事にならなければいいのだが…。全く、心配事が増えるばかりである。


 

いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー等頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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