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報告5 運動後の一杯が最高な件

【1】

 日曜日、久々の休日なのだが…。

「練習かぁぁぁぁぁ。」

思わず声が漏れてしまう。昨日、水上と外部の体育館を使って練習すると約束をしてしまったのだ。私の貴重な休日が…。ここで考えても仕方のないことだ。私は、ジャージに着替え、市民体育館に向かった。


 待ち合わせ場所に行くと、ジャージ姿にラケットバックを背負った水上が立っていた。

他に誰も誘っていないのだろうか。私は彼女に尋ねた。

「他は誰も誘ってないの?」

「みんな用事があるって断られた。」

「2人だけでどうするんだよ。」

「私は北沢と試合が出来ればそれでいい。」

私たちは2人で練習することにした。


 簡単なアップを済ませた後、水上と試合をしたが、もう彼女は私の敵では無かった。水上が私に聞いてきた。

「どうしたら、勝てるの。」

難しい質問だ、私もこれで積み上げてきたものがある。明確な答えはないが、私は彼女にある提案をした。

「水上がやったことない練習メニューをやってみるってのはどうだ?例えば、そうだな。パターン練習とか。」

「パターン練習?それならやってるよ。」

パターン練習とは、決められたコースに返し続ける練習のことだ。

「パターン練習には、色々あって、学校だと難しいパターン練習は出来ないはずだ。それを試しにやってみるのはどうだろうか?」

「分かった。じゃぁ今やってみよう。」


 高校生向けの難易度の高いメニューをやってみたが、それでも水上はついてきた。まだまだ、伸びしろはある。そうしている間にコートを借りていた時間は、終わってしまった。

「もう、時間か。今日はこんなもんだろ。」

コートを片付け、私たちは外に出た。その直後に水上が私に礼を言ってきた。

「今日はありがとう。北沢が初めてなんだ。練習の誘い断らなかったの。」

そうだったのか。この子も苦労しているのだな。私はこの子につい同情しながら声をかけた。

「また、時間があったら練習付き合ってやるよ。」

「ホント?」

余計なことを言ってしまった。


 家に帰り、焼きそばを食べながら一杯やった。運動後の一杯はやはりたまらない。とはいっても、今飲んでいるのは、ノンアルコールのビールテイスト飲料なのだが…。もちろん未成年では購入出来ないので、インターネットショッピングで買ったのだ。本当に便利な世の中になったものだ。それはさておき、午前中は余計なことを言ってしまったのかも知れない。少し不安になりながらも、平日に出来なかった家事を済ませるのだった。



【2】

 次の日の放課後、私はいつものように上野に勉強を教えていた。上野が、北沢に話しかけた。

「なぁ。お前それ何読んでんだ?」

私は、本を見せながら答えた。

「これか?英検の本だよ。せっかく英語勉強してるから受けてみようと思ってな。」

「へー。何級受けるの?3級?いや北沢なら準二級くらい受かるんじゃないか?」

「え?二級だけど。」

「はい!?」

私は、自分の学力が衰えないよう、大学受験の対策を毎日行っていた。とはいえ少し実力を試してみたくなったのだ。そこで、検定に申し込むことにしたのだ。さらに上野が尋ねた。

「ちなみに二級ってどのくらいのレベルなんだ?」

「高校卒業くらいかな。まぁ数検は今度準一級受けるけどな。」

「お前は何を目指しているんだ。…そんなことよりさ、一ついいか?」

上野が北沢に言った。

「俺はもう、大丈夫だから、部活に出ていいぞ。」

「どうしたんだよ?突然。」

「俺は出たくても出れないからさ。北沢は俺の分も部活出てよ。」

予想外の提案だったが、彼の提案に私は甘えることにした。

「分かった。じゃ、部活に行っている日は課題を用意しよう。」



【3】

 次の日、私は部活に行くことにした。平日は週2日部活動に専念し、3日は上野に英語を教えることになったのだ。平日にきちんと部活に出るのは、これが初めてだろうか。体力もかなり付いてきた。私は飛田の課す練習メニューを次々とこなしていった。


 練習をこなす中で気づいたことがある。顧問の飛田は指示を出すだけで何もしないのだ。ノックくらいあげてもいいような気がするが、私は水上に聞いてみることにした。

「水上、飛田先生ってバドミントン経験ないのか?」

水上は答えた。

「バドミントン経験あると思うよ。私が一年生の頃はよくノックを上げてくれてたし。」

「そうか…。」

きっと何か理由があるのだろう。そうは思ったが、これ以上の詮索は無意味だ。私はそれ以上詳しくは聞かなかった。



【4】

 ある日の週末、私は弟とレストランで食事をしていた。

「だいぶ、学校生活に慣れたみたいだね。それでゴールデンウィークはどうするんだい?」

「そうだな。部活の引退試合があるからな、基本的には練習だな。それから、空いている時間は上野に勉強を教える。」

「そっか。せっかく中学生に戻れたのに、教師だった頃と同じで忙しいね。それはそうと兄さん。ジャージで高級店入るのやめてくれよ。」

「大丈夫だ、せっかく個室を取ったんだ遠慮するなって。(中学生なんてどんな格好しても同じだろう。)それよりもそろそろ本題に入るか。職場の方はどうなっている?」

今回、弟を呼び出したのは、私のかつての職場について調べてもらっていたのだ。

「ああ。学校の人たちに聞いたけど、兄さんが職場の人たちと神社に行ったあの日、突然兄さんを見失ったんだって。その後こちらから行方不明になったって伝えて退職ってことになってるね。今は、兄さんの部下だった人が進路指導主任やってるみたいだよ。名前はたしか、高輪たかのわとか言ったかな。」

「そうか、彼なら安心だ。」

「あ!そうだ、兄さんホームページ見て気づいたんだけど、体育祭あるじゃん。」


「何だ?観に来るのか?勘弁しろよ…。」



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