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報告4 北沢メゾットの概要

上野に英語を教えると約束した北沢。彼には、テストの点数をアップさせる秘策があった。

【1】

 私は、上野と約束をした。必ず彼を次のテストで成功させると。そのために、私は彼にお願いを一つした。

「今日、家に帰って準備をするから、今までの英語のテスト持ってきてくれないかい?」

「わかった。テストを持ってくればいいんだな?」

「ああ。それじゃぁ。明日、放課後に会いましょう。」

私は、家に帰るとパソコンを開きファイルを探し始めた。確か、中高一貫部のフォルダーの中に例のデータが入っていたはずだ。それから、インターネットで少し調べ物をしないといけないな・・・。楽しみだ。


 次の日の放課後、上野に今までのテストを見せてもらい確認をした後、彼に今後の作戦について伝えた。

「よし。それじゃ、今後何をやっていくのか説明するぞ。まず、これから行うのは授業の予習です。」

「予習?復習じゃなくて?」

「ああ。予習ですよ。復習は、学校の宿題でとりあえず大丈夫。でも今まではそれだけじゃ駄目だったのでしょう?予習のメリットは次の2つです。一つ目は、授業の理解度と定着度が上がる。授業の内容がわかるようになるし、頭に入りやすくなります。」

「おお。そんなもんか。」

「二つ目は、モチベーションの向上です。君は英語嫌いでしょ?」

「まぁ・・・・。」

「予習を行っておけば、授業も理解できるし、周りにもついていけるようになるから、英語に対するイメージも変わるはずです。「好き」にはならなくても「マシ」にはなる。授業のストレスはかなり減るはずです。」

「そうなのか。で、予習ってなにをするんだ?」

「この問題集を使います。手に入れてきました。お金はとらないから安心して下さい。」

「これは?」

「大手の個別指導塾がよく使っている問題集です。全国の定期テストのデータを集めて作られている。これが、できるようになれば評定3はとれます。完璧に習得できれば評定4はとれる代物です。今からこれをやっていく。ちなみに、5月の中間テストまでの範囲は大体Lesson1から進んでもLesson3までだと思います。」

「なんで、そんなことがわかるんだよ?」

「教科書を出版しているホームページには、年間指導計画案っていう1年間の授業計画の見本が掲載されている。大体の先生はこれをベースに授業の計画を立てるから、これを見れば試験範囲も大体想像がつきます。」

「北沢・・・お前何者なんだ・・・。いったい誰にそんなこと教わったんだよ。」

「えっと・・・・・。ま・・・前の学校の先輩とかかな。さて、さっそく始めようか。まず、10分くらい大事な要点を教えるからそしたら問題解いてみよう。ノートも時間もったいないからとらなくていいですよ。」


 その後、上野は説明を聞き問題を解き始めた。多少苦戦したしミスもあったがその場で丸を付けて間違い直しをさせた。頃合いを見て私は、彼に1枚の用紙を渡した。

「それじゃ。小テストな。」

「え?いきなりできねぇよ!!!」

「まあ、そう言わないで。とりあえずやってみましょう。」

上野に小テストを解かせ、結果をすぐに返した。

「え?満点じゃん・・・・。っていうかコレさっき解いた問題と全く同じ内容じゃん。誰でもできるわ、こんなもん!」

「いや。満点を積み重ねることが大事なんです。筋トレと一緒で、後々になって効果が出ますよ。」

 ここまで、おおよそ50分程度の出来事だった。こんなことで大丈夫なのだろうかと、上野は少し疑問に思った。

「さて、今日の基礎工事はここまでです。次はすぐに効果が出る勉強をしますよ。」

「え!?マジ!?何やるの?」


 私は、彼に教科書の英文が書かれているプリントを渡した。

「はい。じゃぁ、これ。次の授業でやる英文だから、これ訳して音読します。」

「マジかよ!!おれ訳すの時間かかるし疲れるわ!!」

「安心してください。せんせ…私がいます。わからない単語は、辞書引かなくていい。私がその場で教えます。だからそんなに時間もかからないし、しんどくないはずです。訳が終わったら、わからなかった単語をリストにして渡してあげますよ。」

「お・・・おう。」


 こうして、上野の反撃が始まった。



【2】

 学校に通い始めて2週間、大分この生活にも慣れてきたな。朝の5時半、私の1日はここから始まる。顔を洗ったら、湯を沸かし朝食の準備をする。その後、20分の瞑想。あとは時間になるまで数学と理科の問題集を解く。働いていた時に比べ、朝に勉強できる時間があるのは大きい。このルーティンを繰り返せるようになり、生活が変化し始めた。


 変化が出始めたのは、私だけではない。上野の様子も同様だった。英語の授業中にポカーンとしていたが、今は周りについていっている。私が隣にいるのもあるが。グループで課題を解くときも少しずつ自分から英文を書くようになったようだ。そろそろ仕上げの段階だな。


 放課後、いつものように上野に英語を教えていた。毎日続けていたため、気がつくと試験範囲の内容は終わってしまっていた。

「よし。今日はいつもと違うメニューを少しやるぞ。」

この2週間で私も話し方が少し子供っぽく変わったものだ。すると、

「何をやるんだよ。」

上野は少し期待しているようだ。

「今度、単語の小テストあるだろ?それの練習だ。それから、テスト用の対策もそろそろやってくぞ。」

「テスト対策って何するんだよ?」

「過去の問題を見せてもらったけど、一部に都立の入試問題が出題されてたからな。結構な配点だから、これの対策もしておこう。今回のために専用プリントを作っておいた。簡単なものからやっていくから、ゆっくりやっていこう。」

「わかった。」


 「ねえ。北沢いる?」


突然、水上が教室に入ってきた。



【3】

 水上は、相変わらずの仏頂面で私に話しかけてきた。

「部活に来ないと思ったら何してるの?」

「上野と一緒に勉強してるんだよ。」

「それ、部活より大事なの?なんで、飛田先生も許してるんだか知らないけど、ズルくない?」

「土曜日部活行くから。それでいいだろ?」

「そんなんじゃ、いつまで経っても体力戻らないよ。張り合える相手が北沢くらいしかいないから、つまらないし…。とにかく、飛田先生には報告するからね!それじゃ。」

水上は教室から出ていった。


 …めんどくせぇ。正直そう思ってしまった。まあ、彼女も精一杯頑張っているのだから仕方ない。

「北沢、ごめんな。」

上野が言った。

「いや。俺がやりたくてやってるんだ。気にするなよ。さて、続きをやるぞ。」



【4】

 次の日の昼休み、私は飛田のところに向かった。水上が報告したと言った以上は話をしなければなるまい。

「失礼します。飛田先生、お話があります。」

飛田がやってきて別の部屋に連れて行かれた。

「一応、別の部屋でね。水上さんから報告があった件ですか?」

「はい。そうです。」

「実は、もう少し前から君が上野くんに英語を教えてるところを見ていたんだよ。」

「そうだったんですか。彼を放っておけなかったんです。」

「君が部活より大切だと判断したならそれに任せるよ。上野くんに勉強を教えてくれて本当にありがとう。」

「いえ。失礼します。土曜日は参加させていただきます。」

「わかった。」



【5】

 土曜日。私は、いつもの時間に目覚め家事と勉強を済ませてから家を出た。今日は部活に行かなければならない。本音で言えば別のことをしたいのだが、仕方がないか。私は学校に向かった。

 

 今回は、アップと試合だけというわけにはいかなそうだ。アップの後に、ノックとトレーニング、最後に試合といった流れで今日の練習は進んでいった。そして、試合では水上と対戦することになった。水上は昨日の一件もあったせいか気合が入っている。


 結果は、私の圧勝だった。水上がまた、詰め寄ってきた。

「体力あるじゃん。部活出てないのにどういうこと?」

「部活出てないからってトレーニングしてないとは限らないだろ。」

私は、初めて水上と対戦してから、帰宅後に体育館に行き、走り込みと水泳を毎日していたのだ。さすがは中学生の体だ、適応力が尋常ではなく、すぐに体力がついた。

「ねえ。お願いがあるんだけど。」

「なに?」

「日曜日、市民体育館でバドの練習付き合ってよ。」

引退試合も少しづつ迫る中で彼女も焦っているのだろう。私は放っておかなくなってしまった。

「わかった。時間決まったら連絡してよ。」

「ホント。ありがとう。」

私はこのまま行くと過労死するのではないかと若干心配になったのだった。

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