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報告29 放課後学習塾の設備について

【1】


 学習塾の運営準備も整い、学校でもプリントが配布される事になった。私は、飛田にあるお願いをしていた。それは…


学年の先生たちに、この学習塾の説明を行う日時をこちらで指定させてもらうことだった。


 これには、それなりの理由がある。私が指定した時間は昼休みで、その時間、私は職員室隣の放送室で放送委員の仕事として、CDの整理作業をすることになっていた。実は、職員室の会話がここから聞こえるのだ。私は、学習塾に対して他の教員がどのような反応を示すのか把握しておきたかったのだが…。悪い意味で想定通りの反応が聞こえた。


「私の授業だけで十分です!!そんなものに頼るのは、学校として良く無いと思います!」


そう叫んだのは、北野だった。他の人間から教科指導の横槍を入れられて文句を言う事は目に見えていたのだ。その後、飛田は説得をしたものの。


「私は、自分のクラスの生徒にこのプリントは配りません!」


ダメだこりゃ…。プリントはこっそり配るとしよう…。こんなこともあろうかと、プリントを印刷しておいてよかった。本当に余計な仕事を増やしてくれる!!



【2】


 放課後までの間に、私がこっそり学習塾のプリントを配布すると、放課後になって上野が私に質問しに来た。


「なぁ、北沢。ここの塾ってどんなところなんだ?」


「ここには、3つのコースがあってな。一つは補習コース。授業について行けていないと判断された場合に強制的に送り込まれるコース。二つ目は、標準コース。学校の授業の予習復習をメインにやってくれるコース。三つ目は入試コース。今までの復習からスタートして入試対策を行うコース。

それから、この学校の生徒なら自由に使っていい自習室やインターネット室もあって、先生に自由に質問も出来るぞ。」


「マジで!?普通の塾より勝手が良く無い!?」


「ああ、しかもうちの学校の生徒だと全部無料になるぞ。」


「は!?なにそれwwwチートじゃん!!今日から行くわ!!そういえば噂で聞いたんだけどそこの塾運営してるって人さ…。」


「ああ、俺の親だ。今から様子見に行くけど一緒に行くか?案内するぞ。」


「マジで!いいの!?北沢先生!お願いします!!」


「先生言うな!(マジでびっくりするから)」


そんな会話をしながら、私は大塚と水上の所に近づいて言った。


「さっきの話聞いてたろ?2人も来るか?」


「うん。ちょっと見てみたい。」


私たちは、学校を出て学習塾に向かうのだった。



【3】


 学校から徒歩3分のところに、その学習塾はあった。もともとスーパーマーケットだったこともあり、地域の学習塾にしては申し分ないほど大きい校舎だ。それの外観を見て上野が言った。


「なんか…デカくない?でも何かが足りないような…。」


「ああ。まだ看板を作ってないんだよ。」


「そういうことか!で、名前なんて言うんだ。」


「…決めてない。」


「え?」


「時間がなかったんだ。名前決めてなくてさ…。とりあえず、放課後学習塾って仮の名前が付いてる。」


「そうなのか〜。」


「まあ、とりあえず案内するよ。」


 そう言って私は3人を招き入れた。入り口には受付用の大きな机があり、バーコードリーダーのようなものが置かれていた。その机の向こう側には、弟の永が座っており私を見るなり挨拶をして来た。


「お疲れ、にい…。あ…あきら。クラスメイトを連れて来たのかい?」

「う…うん。」


弟の痛恨の失言に私も会話がぎこちなくなる。弟は3人にも挨拶をした。

「君たちは明の友達かい?いつも、明がお世話になってます。学習塾だから、あんまり面白いものはないけど、ゆっくり見てってよ。」

「それじゃ、案内するから。」


 私はそう言って、3人を案内した。まず初めに、集団授業用の教室に案内した。

「ここが、集団授業の教室。個別指導がメインになるから部屋数はあんまりないけどね。その代わり、プロジェクターを入れてみました!他の塾にはなかなかないでしょ?」

「え?何これ?凄いんだけど。」

水上が若干引いている。だが、こんなものは序の口である。


 次に案内した場所は、メインの個別指導を受けるスペースだ。ここは、学校の机とイス。仕切り板があるだけの簡単な作りになっている。

「ここは、個別指導用のスペース。机とイスは、学校で余ったものを譲り受けてもらった。」

「思ったよりシンプルだな。」

「前に、言ったろ?シンプルな方が勉強に集中出来るんだよ。」

「確かに…。」

「次は自習室。ここが最大の目玉だ。」


 この教室には、2種類の自習室があり、一つは、会話が出来る自習室、もう一つが会話が出来ない自習室だ。そして、それぞれの部屋の隅には、大型の箱が置かれていた。大塚が私に尋ねた。

「北沢くん。この箱って何?」

私は自慢げに箱の扉を開けた。箱の中には、充電されたタブレットが並んでいる。

「ここにはタブレットが入っていて、授業動画が見れるんだよ。」

そう言って私は、その動画サイトを見せた。上野はその動画サイトを知っていたよだ。上野は私に言った。

「それ知ってる!月額千円で授業動画見れるやつでしょ!」

「その通り。しかも、うちの学校の生徒は無料で見れる。」

「え!?そこまでする!?」

「ちなみに手の空いている講師の先生がいれば、会話オッケーな方の自習室で質問応対も出来るぞ。」

水上がボソッと呟いた。

「私、塾ここに乗り換えよう…。」


「案内はこんなもんかな。俺は少し勉強してから帰るけど、みんなはどうする。」


「私も勉強してから帰る。映像授業もちょっと見てみたいし。」

大塚が言った。

「塚ちゃんが勉強するなら私も勉強しようかな。」

水上も残るようだ。結局、上野も一緒に勉強することになり、4人でしばらく自習室を利用する事にした。もっとも、そうなるように私が仕向けたのだが。


 4人で自習をすることにした理由は、3人の学力を把握するためである。特に、私を除けば、学年トップの成績である大塚の学力はあらかじめ確認しておきたかった。私はすかさず、大塚の使っている問題集を確認した…。なるほど、新中問の発展を使っているのか。かなりのレベルだ。しかも、半分以上正解している。この子は磨けば、トップの私立にも合格するかもしれないな。

 

 次に、上野の勉強している様子を確認した。私が彼に英語を教えてから英語がすっかり好きになったようで、今も英語検定の勉強をしていた。この数ヶ月でずいぶんと変わったものである。


 水上は、数学をやっているようだが…。ちょっと待て…計算ミス多すぎるぞ、酷くないかこれ。この子は受験大丈夫なのだろうか…。


 そう思いながら3人の様子を観察していると、講師が出勤して来たようで、永に挨拶をしている声が聞こえた。

「お疲れ様です。」

「ああ、お疲れ様。早いね!今、ちょうど生徒が見学ついでに自習してるよ。」

その会話の後、一人の講師が自習室に入ってきて挨拶をして来た。それを見て水上は立ち上がった。


「え!?お姉ちゃん!!?」


そこに居たのは、水上の姉こと水上桜だった。

「千歳じゃない。来たんだ。」


「いや、お姉ちゃんなんでここに?」


「え?バイトだけど。」


私は、教え子の中で教員を志している者に声をかけていた。そして、桜も例外ではなかった。私は、妹の方の水上にボソッと言った。


「安心していいぞ、担当の先生選べるから。」


いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー、評価等を頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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