報告27 放課後学習塾の代替案
北沢先生の用語解説
したり顔とは
ドヤ顔の事です!!
【1】
次の週の日曜日、私はマンションの一室で永、飛田とともに密談をしていた。マンションの一室である事を不思議に思った飛田は私に質問してきた。
「北沢くん。このマンションは、君が持っている物件なのかい?」
「いいえ。違います。ここはレンタルスペースと言って、低価格で場所を貸してくれるんです。最近、この辺りでも増えてきてたので試しに使ってみました。いつも同じ料理店でというのもあれですし。」
「最近は本当に便利な世の中だね…。」
「それで、新しい取り組みはどうですか?」
「そうだね、北野さんは猛反対だったけど、大分落ち着いてきましたね。みんな文句を言わずにやってくれてるし。身になると思いますよ。あれは。」
「そのうち、朝学習では数学の計算問題も入れていきましょう。都立数学は基本問題だけで47点分出題されますから。」
「さて、飛田先生の要望には応えました。今度はこちらの要望を聞いてもらう番です。」
「ああ…。出来る範囲になってしまうけど。」
「先生は麹町にある、とある中学校の取り組みをご存知ですか?」
私は、その中学校のWebページを開いたタブレットを飛田に手渡した。
「へー。放課後に学校で塾をやっているのか…。しかもこれ公立の中学校で?」
「はい。私が目指しているのは、この中学の取り組みです。」
飛田は、タブレットを私に返すと同時に厳しそうな表情で言った。
「さすがに私の手に余りますね。私が校長だったとしても厳しいかもしれません…。」
もちろん、この返事は想定済みだ、私は今まで準備をしていた構想について一つづつ説明した。
「もちろん、承知しています。だからこそ前々から準備をしてきたんです。」
「前々から?」
「はい。つい、去年ですか。学校の近くにあるスーパーマーケット閉店しましたよね?」
「ああ、あのビルの一階にあったやつですよね。あれはお世話になっていました。」
「あのテナントのオーナー、私たちなんです。」
「へー。北沢さんが所有していたんですね〜。って、はい!!!??」
飛田は驚いて身を乗り出した。
私は、その姿を少し楽しみながら続けて説明をする。
「スーパーマーケットは、なかなか売れ行きが良くなかったので、いっそ弟の新事業の場に使ってもらおうと思っていたんです。」
私はそう言って、永に目線を送った。永は私に代わって説明を始めた。
「私はいくつか会社を立ち上げていまして。今度は教育事業を立ち上げようと考えていたところだったんです。そこで、あのスーパーだった場所を、塾に改装しまして、いつでも稼働できる状態にしておきました。講師は、兄が教えた生徒の中で優秀だった生徒に声をかけています。」
飛田は、目が点になったまま質問した。
「ですが、学校は公的な機関です。そこに協力をする事は難しいですね。」
私は、したり顔で飛田に言った。
「NPO法人の慈善活動として、無償で授業を行うとしたらどうです?」
「え!?それはどういう…」
「NPO法人としてなら学校とも連携が取りやすいでしょう?既に手続きも済んでいますし、もうすぐ校長先生にも通達が行くはずです。」
「ファッ!?」
永が私に代わって説明した。
「教育委員会の方の中に、商工会の会長だった方がいらっしゃいます。私、その方とは知り合いなんです。」
それを聞いて飛田は思わず言葉を漏らした。
「なに、この兄弟。怖いんだけど…。」
【2】
私たちの話を聞いて、まだ歩に落ちない事があるのだろう。飛田は、私に質問して来た。
「しかし、気になることがあります。まず、既に別の塾に通っている生徒のフォローですね。」
「その点ですが、今後、別の塾に通っている生徒はこちらに移転してくる可能性が極めて高いです。」
「どういう事ですか?」
「うちの学年で断トツで成績優秀なのが大塚さんです。彼女には、私の家族が運営する塾を開くと言ったら、喜んで移転すると言ってました。それに大塚のお母さん、結構、母親同士のネットワークを持ってる人みたいで、噂は広げてもらいました。こういう、地域の口コミは恐ろしいですからね。」
「君には、驚かされてばかりです…。でも、いいんですか?これってあなたたちのメリット無いのでは。」
永が飛田の質問に答える。
「今回の取り組みは、慈善活動というのもありますが、最新の学習指導法を試す場でもあるんです。そして、それで経営が成り立つようなら新しいタイプの塾として、教室を別の地域に展開する予定です。別に私たちにメリットが無いわけではありません。助成金も頂けますしね。ただし、この取り組みはあくまでも期限付きです。4、5年くらいですかね。それが終われば、民間企業の学習塾にしてしまいます。」
「なぜそのようなことを。」
「だって、無料で質の良い塾があるんですよ。そんなもの何年もやったら、その地域で商売をしているライバルの塾を一掃できるじゃ無いですか。」
「恐ろしい兄弟だ。」
「まあ、そういうことです。近々(きんきん)に校長先生の方から連絡があると思うので、宣伝をお願いします。私たちは、これから講師集めをするので、今日はこれで失礼します。」
「今日は色々とありがとう。なんか、思ってたより凄いことになっちゃったな…。」
そう言って飛田は去っていった。
さて、ここからが正念場だ。私たちは、改めて気を引き締めるのだった。
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