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報告21 北沢正体がバレる!?飛田主幹教諭と北沢進路指導主任の密談記録

北沢先生の今更ながらの用語解説


進路指導主任とは

進路指導主任と呼ばれる事が多いですが、正式には、進路指導主事と言います。学校教育法施行規則第71条に定められており、学校に必ず1人います。生徒の進路指導に関する業務の管理や指導助言を行います。私立では、合格実績などのノルマを課されてプレッシャーを与えられることも。

【1】


「北沢くん。いや…北沢さん。私は一度、君とちゃんとお話しをしてみたかったんですよ。」


 確かに飛田はそう言った。私の脳裏には、高田が「飛田先生は教員を性別問わず、さん付けする。」と言ったことが、すぐに浮かんだ。私は、飛田に質問をした。


「飛田先生、どういうことですか?」


飛田は答える。


「いやね。正直自信は、ないんだけど私の考えた事を聞いてもらってもいいかな?」


「はい…。」


私はただ返事をすることしかできなかった。



【2】

「私がこの考えに至ったきっかけは、君が、初めて部活に参加して水上さんと試合をした時からです。技術だけでなく適切なアドバイスをしてましたね。もちろん、中学生でもそんなプレーヤーは珍しくはありません。でも、それだけ実力があるのに体力がなさ過ぎる。それに、礼儀や勉強があまりにも出来すぎている…。数学の中間テストを覚えていますか?最後の一問は、中学生では、なかなか解けない整数論の問題です。それすらもあっさり解いてしまいましたね。そこに、違和感を覚えました。」


「北沢さん、覚えていますか?試合会場に向かうときに、私に道案内してくれましたよね?あのときの道案内は車を運転したことのある人の案内でしたね。道をただ知っているだけではなくて、混雑状況や一方通行まで把握してる中学生なんて会ったこと無いですし。おっさんかよ!って思ってしまいました。それから、水上さんから君が上野くんに勉強を教えている事を聞いたのは知ってますよね?その話があってから、時々君が教えている様子を見ていたのですが…。」


「あれ、見てたんですか。別に隠してた訳ではないですが…。」


「ええ。そこで、ほぼほぼ確信しました。あなたは教師になるための特別な教育を受けている、あるいは、元教師なのではないかと。そして進路指導室からこんなものを見つけたんです。」


 飛田はカバンから、青葉学園のパンフレットを取り出し、あるページを見せた。そこには、大人の姿の私の写真と記事が掲載されている。そして”進路指導主任 北沢明”と書かれている。ここまで、見せられたのだ、きちんと説明するのが誠意と言うものだろう。私は生徒の振りを辞めて大人の振る舞いで飛田に話を始めた。


「よくここまで、たどり着きましたね。別に隠していたつもりでは無いのですが、この姿で仕事をする訳にもいかなかったものですから…。」


「心中察します。なぜこんな事になってしまったのか、あなたにも分からないのではないですか?」


「はい。私は、去年まで青葉学園の進路指導主任として働いていました。ですが、その年の卒業式の日の夜に意識を失い、気がついたら子どもの姿になっていました。なぜ、こんな事になったのかは、正直なところ分かりません。

 それからは、弟に頼み養子縁組を組んでもらいました。その後、入学手続きをしていないと役所の学事課に相談してこの学校に転校した形になります。方々に働きかけて無茶をしましたが…。」


「なるほど、それでは最初の面談に来られた、保護者の方というのは。」


「はい。弟です。彼にもずいぶん迷惑をかけてしまいました。」


「本当に苦労されたんですね。それにしても、子供の姿に戻ってしまうとは…信じがたい話です。また話を聞かせてください。さてと、それじゃスッキリしたところで本題に移りましょうか。」


素性を話して緩んでいた緊張が再び引き締まった。身の上を偽って中学生として生活しているのだ。何かしらの罰則などを受けても仕方がないだろう。だが、飛田は緊張した私の様子を見て意外な言葉をかけてきた。


「安心していいですよ。最初に言ったじゃないですか。悪い話じゃないって。」


この言葉の直後、私は彼の思いもよらぬ提案に驚かされた。



「北沢さん。私と組みませんか?」





いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに正体がバレてしまいましたね。取れる行動は三つ、中学校を去るか教師を失職させるか、協力するかです。答えの想像はつきますが、そうでない可能性もあるのでそれも含めて楽しみにしています。 […
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