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報告2 二度目の中学校について

二度目の中学生として、学校に通う北沢。これでも北沢は元教師。教師目線のメタ発言を心の中で炸裂させるのだった。

【1】

 大体こんなものだろうか。私は今まで準備した内容をもう一度確認した。入学手続きも済み、必要なお金も準備できた。制服や筆記具などの購入も済ませた。それから念のため中学校の学習内容を一通り確認した。あの事件が3月の上旬で本当に良かった。おかげで、春休み期間中準備をすることができたからだ。そしてこれから最後の大仕事に取り掛かろうとしていた。

「兄さん。準備は出来た?」

「ああ、大丈夫だ。むしろ、お前の方が心配だ。本当に世話をかけるな。」

「ああ…。本当に上手くいくのか不安でしょうがないよ。」

これから学校に面談に行くのだ。しかも、本当の事は何一つ言えない。出来るだけ矛盾のないように設定も考えた。

「大丈夫だ、最近は複雑な家庭環境の世帯も多いし、学校もなかなか踏み込んでこないことも多い。安心しろ。」

「そうだよね。そろそろ行こうか。」

私たちは、自宅を後にした。


【2】

 自宅から徒歩15分、ここがこれから通う学校に到着した。さすが23区内の学校なだけある、綺麗な校舎だ。しかし、二度目の中学校というものは、こうもテンションが上がらないものだろうか。受付で話をすると、私たちは応接室に通された。やがて、3人の教員が入ってきた。一人は女性、残り2人は男性だ。おそらく、副校長、学年主任、担任といったところだろう。副校長は、簡単な挨拶を済ませた後、まもなく退出した。その後改めて学年主任の先生から挨拶があった。

「はじめまして。あきらくんの学年の学年主任を担当します。飛田領とびたりょうと申します。こちらは担任の北野と言います。」

飛田と名乗る男性は、白髪で細身の体型の男性で、その頬は痩せこけていた。おそらく定年間近なのだろう。一方で、担任は女性で年齢は見たところ、私より一回り上、四十代後半といったところだろうか。しばらくは、家庭環境や学力などの質問を受けた。そしてしばらくだった後で、飛田から提案があった。

「そろそろ、帰りの学活の時間ですね。どうでしょう。今からクラスに行って挨拶して、明日から登校するというのは。」正直なところ、弟を1人にするのは忍びない。(信頼はしているが)私は断ろうとしたが、その提案を聞くや否や、担任の北野は立ち上がった。

「それはいい案ですね。では、北沢君行きましょうか。」

「北野先生。明くんの返事を聞いてからですよ。」

「明くん早くクラスに行きたいですよね!こっちです!」

私は、勢いに負け、連れて行かれてしまった。あの時の弟の不安そうな顔と言ったら。そして、悟った。この担任はハズレかもしれない…。


【3】

 私は、廊下を歩きながら先ほどのやりとりについて考えていた。この担任は、人の話をあまり聞かない人物のようだ。そして部屋を出る直前の学年主任も、「またか…。」みたいな顔をしていた。この学年の人間関係は大丈夫だろうか?進路指導主任をしていた経験上、学年間での連携がガタガタだと進路指導は崩壊してしまう。進路指導主任の言うことを聞かない担任が出現した時はもうお終いだ。最も私の場合、進路指導を受けずとも問題ないが、他の生徒たちの事を考えると、他人事だが心配でならなかった。

 あれこれ考えているうちに、私は教壇の上に立たされていた。

「今年から、この学校に転校してきました。北沢明君です。皆さん仲良くしてあげてください。」

「北沢です。よろしくお願いします。」

(27人か、前の職場の生徒数よりも少ないな…。)しかし、このクラスメイトたちとどう接したら良いのだろうか。今後の悩みの種になりそうだ。

 この日は、クラスで簡単な挨拶を済ませて、弟と共に帰路についた。その後、レストランで今日会った事を確認した。

「途中いなくなって済まなかった。」

「いや、大丈夫。それより兄さん新しいクラスはどうだった?」

「挨拶しただけだしな。なんとも言えない。ただ不安があるとすれば…」

「担任の先生かい?」

「気づいてたか。」

 弟は会社をいくつか経営し、生き残っている。彼にも人を見る目がある事は私も認めていた。

「あの人、飛田先生が話しているときの目線が泳いでたり、睨んでたり、全く聞いてないねあれ。信頼もしてないんじゃない?」

「まあ、しばらくしたらわかる事だ。」

そうは言いつつも先が思いやられる。大の大人な割に内心はかなり不安だった。

「それじゃ、そろそろ帰ろうか。ここは、私が奢るよ。本当にありがとうな。」

「兄さんいいの?ごちそうさまです。あ、それと、兄さん話し方考えた方がいいかもよ。中学生っぽくない。」

「う、うむ…。精進しよう…。」


【4】

 次の日、私は身支度を済ませ、家を出た。現在の時刻は7時50分。朝ゆっくり出来て本当に助かる。教員として学校に通勤していたときは、7時には職員室に行き仕事の準備をしていた。しかし今は8時15分までに学校に行けば良いのだ。私は優雅な気分で学校に教室へと入った。

 3年1組、私が1年間過ごすことになる教室だ。少ない掲示物、綺麗になっている黒板、教室にはゴミも少なく清潔な環境だった。

「ほう。悪くない。」

教室を綺麗に保つことは、クラスの運営(私たちの業界では学級経営)の基本である。教室が汚いと、クラスは自然と荒れるのだ。まず、落ち着いて過ごせるだろう。そう思った。

 朝の学活を終え、1時間目の授業に入る前に、隣の席の男子生徒から声をかけられた。

「なぁなぁ。俺、上野って言うんだけどさ。北沢君はどの部活入るの?」

生徒のよくある行動パターンだ。転校生を部活に引き入れるように立ち回るのだ。

「まだ、考えていないかな。」

自分の話し方に違和感を感じながら、クラスメイトに変に思われないよう言葉に気をつける。

「なぁ、サッカーとかやったことある?」

「いや、授業でしか無いな。」

彼はサッカー部なのか。普通に考えればそうか…。サッカーは昔に比べて人気が無くなってきている。生徒の人数も減っているから当然試合が成り立たない学校やギリギリの学校が多いのだ。野球部も人数が足りなくて苦労している学校も多い。可哀想な話だ。

 上野と話しているうちに1時間目のチャイムが鳴った。1時間目は担任の英語の授業だ。チャイムがなってしばらくすると。大型テレビとそれを乗せたテレビ台を引きずりながら、北野が入ってきた。

(ほう。電子黒板か。いいものを使うじゃないか。)

今、教育現場ではICTの活用が求められている。電子黒板をきちんと活用できているのであれば、及第点といったところであろう。私は少し安心をした。しかし、安心したのも束の間の事だった。


【5】

 1時間目の休み時間。私は上野に話しかけられた。

「北野のやつすごいでしょ。いっつもああなんだぜ。」

1時間目、号令を何回もやり直し、その後は30分ほど説教。ほとんど授業は進んでいなかった。上野から聞いた話では、今日が今年度最初の授業だったそうで、最初の授業はいつも説教なのだそうだ。不適切な指導をする教員の中には、大して落ち度が無いにも関わらず、示しをつけるために激怒するものがいる。彼女はその典型だった。まったく先が思いやられる。

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