表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/135

報告19 大学で行ったとある調査についての概要

北沢先生の用語解説


テロメアとは

染色体の末端にある遺伝子で、ヒトなどの細胞が細胞分裂などを行うと、次第に短くなり、ある一定の長さになってしまうと、それ以上分裂できなくなってしまう。つまり、テロメアの長さが短くなっていれば、その個体は老化していることがわかる。

【1】

 金閣寺を出た私たちは、次の目的地に歩いて移動した。ここからだと、歩いて大体20分程度といったところだろうか。移動の途中、私は水上に話しかけられた。

「ねえ、北沢。そういえば、新幹線の中での賭けどうするの?」

そういえば、すっかり忘れていた。私は、ババ抜きで水上と一騎討ちをしたときに、彼女を動揺させるために賭けをしようと提案したのだった。ただ、正直なところ、動揺させることが目的だったので、賭けの内容など、どうでもよかった。そのこともあり、私は関心なく答えた。

「そういえば、そんなことしたな…。別にいいよ。」

「なにそれ?もしかして、私が勝ってもそうやってうやむやにするつもりだったの?」

「さて、どうだろうな…。」


「じゃあさ、千歳ちとせちゃん(水上のことだろう)が、北沢くんになんかしてあげれば。」

大塚が言った。その途端、水上は急に動揺し始めた。

「な…なんかするって何を?」

「何か買ってあげるとか。」


大塚はそう提案したが、それはトラブルの元になってしまう。解釈次第では、違法賭博だ。それは、避けなくては。私は慌てて提案した。


「分かった。それじゃ、お土産屋で水上がお土産選んでくれ。それを俺が買うよ。」


「オッケー。じゃそれで。」

水上は了承した。彼女は嬉しそうにしている。それにしても、こんなに水上のご機嫌をとって良いのだろうか…。なんか後が怖い、そう思ったのは私だけだろうか…?



【2】

 私たちの次の目的地は北野天満宮だ。私はこの神社に行くために、3人を説得していたのだ。上野が私に尋ねた。

「なあ、北沢。どうしてここに来たかったんだ?」

「ああ。ここは、学業成就のご利益があることで有名なんだ。」

私はそう言った。だが、それは建前だ。私の本当の目的は…。私は、境内の中にあった石碑を見つめた。この石碑は奇縁氷人石きえんひょうじんせきと呼ばれるもので、かつては人探しをする際の伝言板として使われていたものだ。そのようなものが祀ってある神社ともあれば、私が中学生の姿になってしまった手がかりが掴めるかも知れない。そう思っていたのだが…。


 私たちは、そこで合格祈願のお守りやら何やらを購入した後、おみくじを引く事にした。別になんの変哲もない内容だ。そのまま木に結んでしまおうとも思ったのだが。

「過去の行いを振り返るべし」

という記載がどうしても気になり、持って帰る事にした。結局のところ、収穫があったとするならば、このおみくじだろうか…。



【3】

 それからは神社を巡ったり、仏像を見学したりさまざまなものを見学した。見学は順調進み、予定よりも3時間ほど時間が余ってしまった。だが、私にとってこの事は想定済みだ。最後に私はとっておきの場所を用意していた。

「なあ、北沢。ずいぶん時間余っちゃったけど、どうするんだ?」

「実は、工程表には書いてなかったんだけど行きたい場所があるんだ。きっと面白いと思うぞ。」

「マジで!もう神社とか、仏像とか飽きてたんだよね!!」

「お前、罰当たりだぞ…。」


 そんな話をしながら、私たちはある建物に着いた。そこは、歴史的な建物などではないが、特徴的な建物が立ち並び、正面には大きな門が設置されていた。私は門の端にある守衛室で待機している守衛に声をかけた。

「14時に約束していた北沢明です。澁谷しぶや教授に取り次ぎお願いします。」

すると、守衛はどこかに連絡をし始めた。

「ねえ、北沢。ここは一体どこなの?」

「ここは、大学だよ。知り合いがここで働いててさ、電話したら遊びにおいでよってさ。」

「大学ねぇ。一体名前はなんでいうの?」

「有名な大学だから名前知ってると思うぞ。」

大塚はここがどこか気がついたようで、恐る恐る北沢に聞いた。

「も…もしかしてここって、西日本最難関の…。」

「そう、京大だよ。」


 そんな会話をしていると、大学生らしき人物が近づいて来た。どうやら彼が学内を案内してくれるらしい。私たちは、彼に着いていき研究室に入った。周囲には、中学生にとって奇怪な機材やらが置かれている。私たちが、研究室に入った直後にスーツを着た中年男性が入ってきた。

「やあ、北沢くん久しぶりだね。おっと、君たち3人は初めてだね。こんにちは、この研究室で、超電導の研究をしてます。澁谷と言います。今日は、面白いものをいっぱい見せてあげるから楽しみにしててね。」


 彼は、私の同級生の澁谷だ。大学生のころに知り合い、定期的に連絡を取り合っていた。そして、私の素性を知る数少ない人物でもあった。私は修学旅行前に、彼に事情を話していたのだ。

 澁谷は机の上に用意してあったバッドに何やら液体を注ぎ始めた。その液体は、白い湯気を上げているように見えた。大塚が興味深々で澁谷に尋ねる。

「あの、この液体って液体窒素ですか?」

「よく分かったね。そう、液体窒素だよ。危ないから触らないでね。ここに、この取っ手のついたレンガを置いて…。」

澁谷は、この実験のために作ったと思われる道具をバッドの中の液体窒素に浸した。よく見ると、そのレンガの中心には金属らしきものが取り付けられていた。澁谷は説明を続けた。

「さて、このレンガの中心には超電導体という物質が張ってあります。ここに強力磁石を近づけるとどうなると思う?」

「激しくくっつく!」

上野が元気そうに答える。それを聞いて澁谷はニヤリと笑みを浮かべ、説明を続ける。

「それじゃやってみよう」

そう言って彼は、強力磁石を近づけると、磁石は超電導体の上に浮いたままの状態になった。

「え!なにこれ!」

無表情だった水上も流石に驚いている。澁谷はさらに説明を続ける。

「ちなみにこのレンガを持ち上げて逆さまにしても…。」

そう言って彼は、レンガを逆さまにした。本来なら強力磁石は落下するはずだが、落下しないどころか、空中に浮いたままになっている。それを見ていた3人の目はとてもキラキラしている。

「さて、次は超流動を見せてあげよう。じゃ、後は頼む。」

彼がそう言うと、大学生が準備を始めた。彼らが3人を実験室に案内した。

「北沢くんは、ちょっと別の部屋で話をしようか。」

そう言って澁谷は、私を別の部屋へ案内した。



【4】

 澁谷は、私を応接室に案内し、ソファーに腰掛けた。澁谷が先ほどのように気さくに声をかけて来た。

「久しぶりだな北沢。それにしても、そんな姿になっちまうとは、本物なんだよな。」

「本物だわ。というか、今回はそれを確かめに来たんだがな。」

そう言って私は、小さな袋を取り出し、澁谷に渡した。

「その中には、弟の永の検体が入ってる。後は私の検体からDNA鑑定をしてくれ。」

「そうだな。今日の本題はそれだったな。俺でも同じ状況になったら同じ事をするだろうな。とりあえず、DNAを解析して、別の人間になってないか調べるってことでいいんだろ?」

「ああ。それともう一つ調べて欲しいことがある。」

「なんだ?」

「私の遺伝子にある、テロメアの長さを調べて欲しいんだ。」

「なるほどな…それは確かに知っておきたい情報だな。」

「ああ、テロメアの長さが分かれば、私の体が若返ったのか、単に子供の姿になっただけなのか、はっきりするからな。」

「俺も専門外だからな、なんとも言えんが、とりあえず遺伝子関連の研究をしてる奴に頼んでみるよ。」

「ああ。助かる。」

「また、連絡する。」


そう、やりとりをして私たちの班別行動は無事終わった。

いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー等頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ