表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トワイライト  作者: ねこる
4/15

思考

恐る恐る、もう一度右手を眼前まで持ち上げてみる。

さっきよりは幾分力が出たが、室内が薄暗くそこににゅっと真白い手が浮かぶ。

華奢で、女のそれのような白い手。

試しに指先をまげてグーパーしてみる。


やっぱり・・・「俺」の手なのか?

離握手を繰り返してみる。

なんだろう・・・この感覚・・・ああ

最近流行りのVRゲームをやっている感覚に近いんだ。

目の前に見えているのに、疑似世界のような・・・疑似世界なのに、リアルを感じるような・・・なんとも言えない不思議な感覚だ。

他人の身体に入って操縦しているみたい・・・・。


ふと手を伸ばすと、白い掌に続いて、これまた華奢な腕が伸びる。

薄く血管が浮かんで、病人のようだ。

ふと、腕に黒い・・・墨のようなものがついている。

ぼんやりと見つめると、模様のようでいて、それがなにかの文字であるとわかった。

それは恐ろしく汚いひらがなで、「たな にっき よむ」とかろうじて読めた。


・・・・?


どういう意味だ。

ギョッとして、もう一度しっかりみようと思ったとき、コンコンと、ノックをする音が響いて、それと同時にやや乱暴気味にドアが開けられた。

「リチェルカーレ!」


部屋は俺の部屋とそう変わらない広さだから、8畳くらいか。ドアと向かい合わせの壁にピッタリとベッドが据え置かれ、ベッドの両側には本棚が並び、ぎっしりと本が乱雑に並べられている。

寝ている姿勢では、姿かたちまで判別できないが、声からして若い男。

のしのしと、ベッド端まで歩いてくると、ぬっと俺の顔を覗き込むようにして見つめてきた。


「リチェ、大丈夫か?倒れたってきいたぞ」

男はまだ20歳前後か、浅黒い肌に短く刈り込まれた赤茶けた金髪、たいそう整った彫の深い顔をしている。

そして明らかに西洋人だ。

流暢な日本語で、俺を「リチェ」と親しげに呼ぶと、大きな掌でわしわしと俺の頭を撫でた。・・・・おい!ちょっと乱暴だぞ!

俺があまりのことにびっくりして黙っていると、さらに心配げに顔を歪めて、

「無理するなっていつもいっているだろう?水汲みぐらい俺がいくらでもやってやる」

そういってさらにわしわしとなで繰り回してくる。

イタイイタイイタイ


「あ・・・あの・・・」

あ、よかった。声でたよ。

ただし、間違っても「俺」の本来の声質とは程遠いけれど。

「ん? ああ、レオじいなら、いま村の診療所にいっているぜ。俺が留守を頼まれたんだ。ポパスの店で偶然会ってな。お前が水汲みの途中で倒れたって聞いて、すっ飛んできたんだ。本当・・・大丈夫か?」

・・・・・・・・・レオじいってだれ?

ポパスの店っていうのは、なんだ。「ポパス」という人の名前なのか?それとも「ポパス」っていう謎のアイテムの名前なのか?どちらにしても、ファンタジーなRPGにありがちなネーミングセンスだ。

頭の中は、過去にやったことのあるゲームやらラノベ小説の知識を総動員だ。

気遣わし気に俺を覗き込む男。

少なくとも危害を加えられる心配はなさそう・・・というより、むしろ助けてくれそう。


「あの・・・・あなたはどなたですか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ