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トワイライト  作者: ねこる
3/15

目覚め

目が覚めると、そこは異世界でした。


ありがちな展開で申し訳ないけれど、まさにそうなのだから、どうしようもない。

見慣れぬ天井を目に、茫然としてしまった。


えっと???


どうにか視線を左右に振ってみる。

丸太が均等に並んだ天井は、なんていうか、ログハウスチック。

アウトドアな趣味なんて持ち合わせ居ないし、虫が大嫌いな母をして、キャンピングなんてあり得ないと、一切そういった経験もないまま典型的な都会っこで育ったので、想像の域をでないけれど、とにかく、「丸太小屋の天井」というのが第一の印象だ。

おまけに電気がないのか、部屋はひどく薄暗く、窓だろうか?わずかにほの暗い明かりが零れている。朝なのか夜なのかさえもわからない。


それよりも、全身が痛い。

身体を包む寝具はなんていうか、ゴワゴワとして決して心地の良いものではないし、満身創痍。全身のどこをとっても痛いというか重だるい。

多分、熱もあるのだろう、風邪をひいている時の、あの強烈な怠さに似ている。


ここ、どこ?


身じろぎ、身体を起こそうと努力はしたが、刺すような激痛にそれもかなわなかった。

なんとかして片手を顔の上にまで持ち上げる。

これだけで冷や汗ものだ。

そうしてようやく自分の手、そう、自分の手と認識したものを目にしてギョッとなった。


異様なくらい白い。

うっすらと赤い血管が浮き出たその手は、

少なくとも16年連れ添った自分の手とはどこをどう見ても違う。

特別体格が良かったわけではないが、平凡を絵に描いたような俺は、体つきだって平均的な男子高校生のそれだ。

少なくとも、目の前で消えていきそうなほど、白く細い長い指なんかじゃない。


どういうことだ・・・おれは・・・どうして?


混乱する頭を必死に働かせるが、考えた端から情報が霧散する。


えっと、えっと、思い出せ、俺。

あれは土曜日、土曜日の学校帰り、いつものように家の玄関アプローチを抜けて、家に入った・・・・いや、入っていない。

そうだ・・・あの時誰かに呼び止められて・・・そう、あれは宅配便の人だ。

ネットショッピングが趣味の多忙な両親は、よくネット通販を利用していて、毎日のように配達員がくるから、そう珍しいことじゃない。

それで、門扉のところまで戻って・・・そうしたら道路を挟んで向こうの歩道から圭が、弟の圭人が走ってきたんだ。

(にいちゃん!!!!!)

学校帰りで、ランドセルを背負った圭は、両手になぜかタマを抱えていて。

それを微笑ましくみていて・・・俺は・・・

いきなり角を曲がってきた大型トラックに気が付いて・・・俺は・・・・


とっさに飛び出して、弟と猫を庇った。



・・・・・・・・・・・・そうか、俺は車に、トラックに轢かれたのか。



どっぷりと汗が噴き出る。

轢かれた瞬間のことは、全く覚えていない。

本当に轢かれたのかどうかもわからないが、

この全身の痛みは、それと関係があるのだろうか。


わからない。・・・・本当にわからない。



感覚的には数時間だが、もしかしたら数分、数十分のことだったかもしれない。

気が付くと、眠っていたようで、先ほどよりも室内が暗く感じる。


あれほど混乱していたのに、一度瞬きをしたら

おもったほど動揺していない自分に気が付いた。


さっきまでの考えをまとめれば、自分は弟と、タマを守れたのだ・・・と思う。

いや、実際には、守り切れたのかどうかまではわからないけれど、

少なくとも、今際の際で良心に悖る行動はしなかった、それがわかっただけでも、少し安心できる。特別、出来のいい兄でもなかったが、大事な弟と、大事な相棒を守れたのなら、決して悪い人生ではなかっただろう。

無理やりそう思い込んで、それよりも、この先どうしたらいいかに考えをシフトする。


これからどうしたら・・・というよりも、ここはどこで、「俺」は「誰」なんだ。



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