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エピローグ
*この作品は設定用紙紛失につきストップしていたものを、この度無事発掘できたため、一部手直しして再掲しています。
サン・グラニデの山裾にほの暗い霧がかかる頃、
遠くで羊飼いの呼び笛がこだまする。
ホッチ村は、グラニデの中腹に位置する、人口200にも満たない小さな集落だ。
その村の中心部から外れた森の端に小さいながらもどっしりとした造りの
切り妻屋根の小屋が見える。
リチェルカーレは、小さくため息をついた。息は白く濁って空中で霧散する。
(・・・決断をしなくてはいけない。)
人知れず、またため息が出る。
麻縄を括り付けた木桶を握る手は、どこまでも白く、血管が透けて見えるほどだ。
(僕にはもう、時間はないのだから・・・)
それからもうひとつ、ため息をついた。
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