[オリジナル][SF]野菜炒めの錯綜
SFいきます。初挑戦。
たぶん、最初で最後。
野菜炒めの錯綜
東大に合格した
番号はもう無い。
どうしてこんなことが起きたのだろうと考えたところ、
思い当たることは1つしかなかった。
昨日の晩、野菜炒めを作っていたら、声がした。
燃えるような音の上で、微かに聞こえたそれは、
「オイスター怖い、オイスター怖い」と聞こえた。
ボロ屋で幽霊などいつもの事、彼は話し掛けてきた相手をからかう事にする。
「中濃でいい。オイスター高い」
「あんまりだぁ」
悲しげな声に追い打ちを掛ける。
「塩コショウでいいか」
声が聞こえなくなった。
なんとなく感じた罪悪感から、「あんかけにしようか」と言ったところ、野菜炒めが輝いた。なんとなく嬉しそうだ。懐かれたらしい。
何がツボかは人によって違うなぁ、と場違いな感想を抱きつつも手早く料理をつづけた。
作り上げた後、ちゃぶ台の上に置く。
さあ食べようと、箸をとって「いただきます」を言う。
ご飯を持った茶碗を手に、あんかけした野菜炒めに手を伸ばすと、
逃げられた。
何だこりゃ、と目をこする前には、宙に浮く野菜炒め。
しかも何となくブレている。高速振動をしているのかと悩む。だが別にどうでも良い。
重要なのは、食べられるかどうか。
「おとなしく俺の腹に収まりやがれ」とばかりに追うと、6つに分身した。
流石に驚いて逃げると、悲しそうな鳴き声がする。
「オイスター怖い、あんかけ嬉しい」
戻る。分裂する。戻る。分裂する。
彼は悟った。
親愛の情らしい、と。
試しにお手と言ったら、あんが手にかかった。
べっちょりとした。
座布団を敷いて、野菜炒めを席を勧めると、
彼女は野菜炒めと名乗り、性別は女だと言う。
野菜炒めにも性別があるのか、と話を聞くと、
千切りされた紅しょうががワンポイントだと言う。
うむ。ぴりりと効いている
ちなみに下の名前はアンカケらしい。そのまんまだ。
ぐぅ、とお腹が鳴る。
そういえば食事の途中だった。
どうしようか思案していると、アンカケは言う。
私、食べられますよ?
不道徳的な気がしたが、野菜炒めだから食べられるだろう。
少しもらうと、野菜炒めの味がした。
全部食べなければ、増えるという。
どういう理屈か分からないが、食費が浮きそうだ。
飯をかっ込んだ。
物足りないな、と腹をさすっていると、
座布団の上のアンカケは言う。
もっと作ればいいのです。
味付けによって、性格も変わるらしい。
キッチンで野菜を炒める音が響き、
全部で5皿の野菜炒めが誕生した。
腹がくちくになったので、野菜炒めたちと会話しながら眠くなるのを待つ。
明日は東大の合格発表日。
番号を確認して、ちゃぶ台の上に置く。
そのうち眠くなり、布団を敷いて大の字に寝た。
目が覚めると野菜炒めたちはいなくなっていた。
夢でも見たのかと目をこすったが、やはりいない。
ただ、冷蔵庫の食材は減っていた
考えても仕方が無いので、ちゃぶ台の上の受験票を手に取る。
合格発表が先だ。
校門をくぐり、掲示板を見ると、番号があった。
うむ。と頷き、ふと空を見ると、空にも番号がある。
見直してもやはり、ある。
目を凝らすと先頭に皿らしきものが見えた。
五種類の野菜炒めが編隊を組んで飛んでいる。
それぞれから伸びる五つの色が空を飛び交っていた。
五色の光は、やがて番号から、メッセージへと移行する。
「番号あった。合格おめでとう」
しばらくして学校の係員がやってきた。
番号が取り外される。
揉め事は避けたいよな、とため息を付く。
掲示板を見る。
無くなった。
掲示板を見る。
無くなった。
だが、まぁ、仕方が無い。
何でも出来る。
幸い食べるにゃ困らない
おしまい
SF(すこしふしぎな物語です)
サイズ的にはショートショートに分類されるのでしょうか?
おそらく梶尾真治さんの影響を受けていると思います。
オマージュ?リスペクトになるんでしょうか?判別が出来ていません。
SFで読んだのは1冊のみです。
どのタイトルだったかすら覚えていません。
数十年前の記憶です。
連想で頭の中に浮かんだ言葉をくっつけて、タイトルを考えました。
そこから文章を起こしましたが、知らずに被っているかもしれません。
気付いてないと思います。
もしそうでしたら、連絡していただけるとありがたいです。対処したいと思います。
読み直せるものであれば、読み直したいとも思います。
健康上の理由でしばらく書けそうもありません。
申し訳ありません。