プロローグ③
一「…帰れないだって?」
突然謎の寒気がした。
この状況には勿論、目の前のおっさんやそのおっさんの話す内容に引くほど驚いている。
けど、一番の理由は俺が何かとんでもないことを忘れているような気がするからだった。
一「…ホンニさんでしたっけ、僕は今どんな状況に置かれているんですか?」
恐る恐る聞いている俺に対してホンニはイライラと焦りを募らせているみたいだった。
ホ「んーよしわかった!理解してもらう時間は無いし、君に納得してもらうために真実を見せようか」
ホンニが指を高らかに鳴らすと目の前に薄型の液晶テレビが突拍子も無く現れた。
テレビはコンセントが繋がってもいないのに一人でに電源がついてとある映像を映し出す。
一「なんだよこれ…」
そこには電車が移っていた。
おかしい点はただ一つ、車掌室の窓に人が一人突っ込んでいること。
そしてその姿、服装には覚えがあった。
ホ「これ人間時間における45時間前の君ね、君は線路に落ちそうな子供助けようとしてこうなっちゃったんだよね~」
ここで俺はある答えに辿りついてしまった。
映し出された映像、目の前の神を名乗るおっさん、辿り着かないわけがない。
一「俺死んだのか?俺死んで別の世界に転生されたりすんのか!?」
ホ「いやしないよ」
一「しないのかよ!!」
夢見がちのアニメ好き青年が不安と期待をもって妄想したのに酷いおっさんだ…
一「おっさんいい加減にしろよな、俺だってこんな場所にいたくないんだからふざけてんなら早く帰らせてくれよ」
ホ「お、おっさん!?君ちょっと僕神だからね!偉いからね!しかもまず帰れないし、まだ死んでもないからね!!」
いきなり逆ギレしてくるとは、どう考えてもこんなのに付き合わされている俺の方がキレるべきではないだろうか。
…ん?いや待て?
一「おっさん、俺死んでないの?」
ホ「初めから死んでるなんていってないでしょ」
ここに来て衝撃の事実、俺まだ死んでない!
でもそれじゃあ、これはどういう状況だ?
一「俺はてっきり死んだからそのパラレルワールドに転生してくれって話かと思ったけど、じゃあなんで俺はこんな場所で神を名乗るおっさんと話してんだ?てか、俺あれで生きてるの?」
もう一度テレビを見ると無様にガラスに突っ込んでいる俺の姿がある、この映像を見たおかげで記憶もおぼろげながら戻ってきている。
あれは新しいバイトの面接を受けに行こうとして電車を待っていた時だった。