勇者と魔王は勉強が苦手 2
「ったく……お前後でちゃんとファミチキおごれよな…………」
「おう。助かった、礼を言おう」
「何でこいつはこんなにも偉そうなんだろう(殴りてぇ……)」
ぐったりしたようにそうつぶやく勇者。どうやら、あのあと必死に課題を終わらせてきたらしい。魔王の言っていた通り、一人より二人の方が進み具合が格段と上がった(大半は魔王が勇者の答えを移していただけだったが)。
「あーあ、なんで異世界に来てまで苦労しなきゃいけねぇんだよ……」
「この世界で生き抜くためには必要な事だからじゃないか?」
「それはそうだけどさぁ……」
勇者は疲れたようにもごもごと愚痴をいう。
「シグマとか、ベクトルとか、シータとか、どこで、どう、使うんだよ!!」
「シータ可愛いよな」
「あーごめん多分それ別のシータだと思う」
どうやら魔王はとあるアニメを最近観たらしい。バルスがすごかった。
「つかさ、そろそろ下校時刻になるし、ぱっぱとコレ出して帰ろうぜ?
ファミチキと肉まんくいてーし」
ちゃっかりと肉まんを追加しつつ、時計を見やると時刻はあとすこしで18時を指そうとしている。サッカー部がボールを蹴る音も吹奏楽部が楽器を鳴らす音も、もうそろそろ止む時刻だ。
まぁ、帰宅部である彼らにとっては関係ない話であるが。
「そうだな、これ以上待たせると部下……いや、担任が怒るしな……」
「まじでお前んとこのアイツ、どーにかしてくんね?お前と一緒にいるといつもこっちじっと見てくるしひっついてくるしキモイんだよなぁ…………それに、なんか怖ぇし」
「すみませんね、キモいうえに怖くて」
「うぎゃあ!?」
勇者の後ろからいきなり声が聞こえてきた。振り返ると、ニッコリと微笑んだ、背の高い黒髪ーーーー担任(部下)が立っていた。
「セ、センセー、いつからそこに……?」
「さて、いつからでしょう」
部下はニッコリと笑みを浮かべたが、まるで氷河期に入ったかのようにあたりが凍えてくるかのような笑みだった。どうやら最初から聞いていたらしい。
「あ、魔王様、お疲れ様です。こちら、お預かりさせていただきますね」
「あ、あぁ、ありがとう」
さすがの魔王も動揺を隠せなかったようだ。もしくは、ただ単に部下の威圧に圧倒されていただけかもしれない。
「恐縮です。…………さて、勇者くん?君とはちょっとばかしお話が必要なようですね……?」
「ぁ……え…………すっ、すみませんでしたぁ!!!」
勇者は逃げ出した。一刻も早くこの場からさなれなければ命はない、と、そう本能が告げていた。
「アッこら!!待ちなさい!!!!」
結局勇者は校舎内を逃げ回ったが部下に捕まってしまい、小一時間ほどお説教を食らったのであった。
ここで部下初登場(男)
ちなみに今回以降はセリフと地の文の行の間隔をあけていきます。
(もし誤字、脱字等、気になったところがありましたらお気軽に言ってくださるととても嬉しいです(ボソッ))