魔王と勇者は勉強が苦手 1
すうがく むつかしい ぜんぜん わからない
「お、勇者か。こんな時間に何してるんだ?」
「課題の再提出」
そうぶっきらぼうに答えると、勇者はまた課題の方に戻ってしまった。どうやら本日までに提出すべき課題を忘れていたらしい。
「一昨日あたりからあんなに言っただろ、課題大丈夫かって」
「うっせぇな、あんなもんとけっか。なんだよ、因数分解って。あんなのどこに使うんだよ」
「真面目に授業受けてれば解ける問題だろ」
「寝てた。そういうお前こそ何でいるんだよ、こんな時間に」
勇者は不貞腐れたような顔をしながら魔王の方へ見ると、魔王はふてぶてしい笑みで答えた。
「お前に付き合ってやるためだ」
よく見ると、勇者のと同じ課題が彼の手元にあった。
「お前もかよ。つか、なんで忘れてんだよ」
「寝たら忘れてた」
「………………」
勇者は、ものすごく呆れたような顔をして
「お前どうすんだよ……もうあとすこしで下校時刻だぞ……」
と呟いた。
「大丈夫だ。今から死ぬ気でやればすぐに終わる。これよりもっとひどい修羅場くぐり抜けてきたからな、俺は」
「それはこっちのセリフだと思うけどな」
勇者はそう呟いて課題の方に向き直った。
「それに、俺にはお前がいるじゃないか。一人より二人の方が作業効率も上が「お前それただ楽してぇだけじゃねーよな」」
「………………」
「………………」
「……一緒にがんば」
「自分で頑張れよ」
「………………」
「………………」