脱出劇と死の祝詞 第一部完結
目を覚ますとそこは暗い監獄のようだった。
花見に注射された部分を手で触るとどうやら相当太い針だったらしく穴が小さく空いていた。
辺りを見渡すと綿がほぼ入っていない布団と粗末な簡易トイレが四畳位の部屋の片隅にあった。
辺りは目を凝らさないと見れないほど暗く、自分の手を見るのにも大変だった。
「起きましたか?透」
この声は、最初に案内してくれたお手伝いさんの声だ!
「はい。ここは?」
「ここは山藤院家の地下牢獄の最深部です。あなたはもう一生外には出られないと思います・・・」
「なんで?!どうしてだょぉ」
「花見さまは、貴方を洗脳するつもりだと思います。しかし代々山藤院家に使えてきた私はそのようなことを許しません」
「あなた。今座っている床は脱出用の通路に繋がる秘密の穴です。その石畳をずらしてください。武運を祈ります」
お手伝いさんは一瞬で姿を消した。
よし、お手伝いさんに脱出通路を教えて貰ったので早く逃げなければ。ん?
「謀反の刑でゴニョゴニョ・・・」
追っ手が迫って来ていた。早く逃げなければ。
俺は石畳を横にずらした。するとそこには楔で足場が井戸のように作られていた。
そこを降りて・・・。
「やった。抜けられた」
そこは家の前のマンホールに繋がっていた。早く家に帰りたい。その一心で玄関のドアをガチャンと元気よく開けた。
「うっ・・・なんだよこの臭い」
玄関にいても匂ってくる鉄の濃厚な臭い。俺は寒気がした。いや、母が肉を切っているだけだろ。そんな期待を胸に抱いて俺はリビングに入った。
「お母さん、お父さん。どうして?」
母と父は四肢を無惨に切り落とされていた。理由なんていらない。これは・・・花見だ!!!
辺りは血の海でカーペットに細かな肉片が飛び散っている。つけっぱなしにされたテレビは時間が止まってしまったかのような錯覚を思った。
そして、俺は気づいた。後ろに紅に染まりきった出刃包丁を構えた幼なじみがいることを。
後ろの正面だあれ?そんな事しか思えない。
「透君!一生二人きりだね。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」
そして高笑いにも、にた哄笑と狂気の笑みが俺の脳裏に染み付いて・・・
「グフォ。花見。止めてくれ!」
花見は躊躇なく俺の胸元を出刃包丁で貫いた。赤い鮮血が辺りに飛び散り菖蒲の柄を作り出す。
花見は二度、三度に渡り首や四肢を貫き通した。
菖蒲って、殺めにも考えれたな。
そんな豆知識。いらないよ。
俺は、死んだ。
だけど、この物語は続いて行く。
イメージはひぐらしみたいに複数の章を重ねていきたいです。
今回は透バットエンドです。