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幼なじみとのお泊まりと《無限ループ》

あぁ。花見は何て事をやらかしたんだ・・・。

朝、花見は父親に掴みかかってしまった。今後両親とどう接すれば良いのが・・・。

掛け時計を横目で見ると朝の九時半だった。

早く荷物を纏めて花見の家へ行かなければ。そんな想いが募って行く。

荷物を纏める手が少し震えて上手く旅行バックに服を詰め込めれない。

深呼吸をして心を落ち着かせてゆっくり、ゆっくり・・・。


「花見!準備が出来たから行こう」


花見は部屋のベッドで寝転んでいたが言った瞬間目に光が戻り、ルンルン気分になった。


「早く早く!」


花見は折れそうなほど細い手で俺の手を握りしめ階段を降りる。ドタドタと音がするが関係ないらしい。

母が心配そうな目で花見と俺を観るが花見はお構い無しだ。

父は神妙な顔で見ているが・・・。


「母さん。明日帰ってくるからよろしく。じゃあね」


ガタンとドアを閉めて隣の花見の家へ行く。花見の家は敷地が広大で、運動場位!いやもっとかもしれない。

花見は観音開きの扉の前へ立つと玄関のスイッチを7回連続で押した。するとギーと扉は開いて中にある寝殿造のような家宅が広がる。

池には睡蓮が浮かべてあり鯉が泳いでいる。松の盆栽はどれも素人の目から見ても立派なものだとわかった。

花見は自動で閉まる扉を見送り引き戸を引いて家に入った。中には着物とメイドの混合した服を着たお手伝いさんが十人もいた。

玄関でさえ十畳ほどあるのだ。花見の部屋は・・・。

そう思考が判断する前にお手伝いさんが一斉に、

「お帰りなさいませ。お嬢様。お連れのかたはどちら様ですか?」


と聞いた。なんだか新鮮だ

この場では花見は山藤院家の令嬢。大切な人。

やはり威厳もあるのか荘厳な口調で


「この御方は榎ノ下透君です。応接間にお連れしてください」

と言った。


「分かりました」


するとお手伝いさんの中の一人が旅行バックを持ち、応接間まで案内してくれた。花見は何処かへ行ったようだ。そしてこの家は迷路のような仕組みになっているようだ。回廊まである。


「透様は花見様とどのようなご関係で?」


「花見とは家が隣の幼なじみです」


お手伝いさんは無言でここが応接間というそぶりを見せ何処かへ行った。

花見は何処か?それを考える前に花見は姿を見せた。


「花見?それは!」


花見は豪華な着物を着ていた。深紅の着物で所々金の刺繍や椿の柄が入っていた。

髪は下ろしているが所々赤い色が混じっていた。

俺はぽけっとしているところをお手伝いさんに強制的に座らされた。


「山藤院家80代目次期当主。山藤院花見でございます。この度山藤院家に来ていただき誠に有り難う御座います」


「は、なみ?何それ?」

ぼけっとするしかなかった。空気は冷たく澄んでいて。


「私山藤院花見は、榎ノ下透様との婚姻を結びたく家に招待させて戴きました。ここにご署名を」


「花見?どうしたんだい?婚姻とかワケわからないよ」


するとお手伝いさんが来て、事情を説明してくれた。


「山藤院家は有能な遺伝子を持つ子供を授かるため次期当主様が相手を見つけ婚姻を結ぶという、儀式を行うのです。分かっていただきたい。これに反対、もしくは放棄したらどうなるかわかりますよね?」


花見はこの為に俺を友達にしたのか?嘘だろ。

花見の目はとても真剣だった。

俺は万年筆を手に取り、署名してしまった。


「婚姻は二方が二十歳に成った日に。あとは今日だけここに住み山藤院家の伝統を見てもらいます。口外なさらずに」


花見はまた何処かへ行ったようだ。俺は好きなところを散策してよいと言われた。しかし、俺は。

逃げる。


「池を見せて下さい。金色の鯉が見たいので」


お手伝いさんはまた俺を案内してくれた。こう見ると高名な美術作品が至るところに飾られている。

外に出た。

「ここは扇池です。池の形が扇に似ていると云われるので」


金色の鯉は岩の影に隠れているようだった。

んなことどうでもよい。早くこんなカオスみたいな所から逃げたい。そう思うしかない!


扇池から扉は十メートル。逃げればすぐだ。俺は走りだした。ライオンのように。

扉の前へついた。扉を強引に手で押すとすんなり開いた。だが、


「なんだよ・・・!これ!!」


開けたら普通の公道が広がっていると思っていた。だがそこにあったのは、また家からでた時の景色が広がっていた。後ろを見ると、家の玄関だったのだ。


「無限。ループ」

澄んだ声が響き渡る。無限ループと耳元で囁いたのは花見だった。

冷や汗が頬を伝い檜の床に落ちた。唇は震えて声を出すこともままならない。


「この家は結界が張ってあるの。ニゲラレナイけど永遠にフタリキリだね!」


「うぁあああああああああぁあ!!!!!!タスケテ!!!」


「無駄だよ?今日だけだよ?」


花見はニタリと笑い唇にキスをした。蜂蜜のように甘かったけど、安心なんかできなかった。


花見はまた朝のように目が猫のように鋭くなり深紅に染まり、瞳には山藤院家の家紋である菖蒲が渦巻いていた。

花見は眠たそうに優雅にめを擦ると寝ようという素振りを見せた。

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