幼なじみは《いつも》俺にべったりしている ヤンデレ回
ヤバい!この進学校では些細な事も成績や自分に関わって来るのでこのまま遅刻したら・・・。
「透君。ちょっと待っててね。お迎えが来るから」
こいつは何を考えているのか?今は全力ダッシュしないと遅刻するんだぞ。何を呑気にやっているのか。
やはり花見の思考は読めないな。ん?
後ろから黒いリムジンがやって来た。ベンツか何かは知らないが傷を付けたらヤバい事になるのは間違いなしのリムジンだった。中には六十代の白髪のおじいさんが執事服に身を包んでいた。
「来た!小向さん。学校までお願いします!」
「は?まさか花見・・・リムジンを呼んだのか?」
「うん。当たり前です。あと学校の始業時間を三十分遅らせてあります」
「そんな事も出来るのかよ・・・山藤院家は」
山藤院家は世界に広がるレアメタルを扱う会社だ。
いずれ花見も何らかの形でそこに入るんだろうな。
しかし影響力が凄いな。持つべき親友だぜ!
「透君。学校が嫌なのですか?なんなら学校を休校にしますか?潰しますか?」
こいつはなんて事を言ったのか。潰しますかって・・・。
白髪のおじいさんは話の筋から察すると花見の執事らしかった。名前は藤川源三と言うらしい。
藤川さんはリムジンを停めると窓を開けて乗るようにと手を動かした。
「さあお嬢様。お乗り下さい。そこのお嬢様の親友ですよね?一緒にお乗り下さい」
リムジンは自動ドアで中は五六人が入れるくらいの広さだった。ソファはエアサスベンションでふかふかだしジュースも貰った。
リムジンは校門の前に止まった。周りの生徒がじろじろ見てくるが気にしないことにする。
校門を直進すると下駄箱があるのだがそこまでの道のりが約百メートルある。植え込みには色んな花が咲き誇っていてこの桜並木は春休み中に花見開場にも選ばれるくらいだ。
下駄箱までの道を歩いていると、花見が急に立ち止まり髪を耳に掛けた。
それだけでも絵になるほど美しいのだ。
「今日は数学が1限目にあるね。私は数学が得意だからいい日だなぁ!」
花見は今にも天に昇りそうな表情で俺に語りかけた。
桜吹雪も相まって女神が降臨したような雰囲気がでている。
ふぅ。下駄箱についた。俺は一年一組五番だがら・・・ここだ。
学校の空気は和気あいあいしていて始業時間が三十分おくれたことにより皆にこにこしていた。
一階の右手にある長い廊下の突き当たりにあるのが一組だ。人数は三十人で静かなクラスだ。
花見が先に教室に入ると言って入った。
「おはようございます」
クラスの空気が一瞬で変わった。男子は目を光らせて花見をなめ回すような視線で見ている。
「透君?どうかしたの?」
「何でもないよ。席につこ。遅れているし」
俺と花見は窓がわの席だ。春は日光が差し込んでとても暖かい。たまに花見が寝てしまうからコツンと頭を叩いて起こすのも一興だ。
そのとき花見は顔を膨らして怒ったり、顔を紅くして恥ずかしがるので表情の変化も楽しめる。
花見はちなみに学年トップだ。テストは常に百点。容姿も百点。運動は?ちょっと だが・・・。
授業中はうつらうつらしているが急に当てられても百パーセント答えるし、品行方正、成績優秀なら何も言われないがな。
時計の短針がぐると回って・・・。
「さようなら」
学校が終わってしまった。花見は一緒に帰ろう。と言うが今日は用事があって帰れないと伝えると一人で帰っていった。
用事とは委員会のことだが、委員会の時に一緒に帰ろうと先輩に言われて校門を出たが・・・。
ゾワリ。と冷ややかな視線を感じた。背中にドライアイスを突っ込まれているような・・・。
辺りを見渡すと、校門の真ん前に花見がいた。
「花見!何でここにいるの?」
花見は目がおかしかった。顔が能面のようになり、瞳が紫紺から紫紅に、口はニタリとつり上がった。
「透クン・・・。どうしてホカノオンナとカエルノ?」
いや・え?
「委員会の先輩だよ」
花見は目に光がなくなった。
「先輩。透君にチカヨラナイデ」
「は?なんであたいが!」
花見は人智を越えた速度で先輩に近寄り腕を持ちながら、
「ダカライッテマス。警告デスヨ」
と言った。
先輩は逃げていった。
「さ!透君!帰ろう」
「うん・・・」