幼なじみは家の前で《いつも》待ってる
俺は榎ノ下透。16才のごく普通な男子高校生だ。
学力は上の下。高校は近所では名の知れた進学校の三日市高校に通っている。
俺は彼女も。ましてや許嫁もいない。
幼なじみはいるが。
「うぅ・・・ん」
憂鬱な朝が今日もやって来た。目を擦り少し固めのベットから身を起こした。
緩慢とした足取りで一階のリビングに行くと母が今にも自分を叩き起こそうとしている所を父に取り押さえられていた。
「透!早く朝ごはんをたべなさい。お隣の山藤院さんに迷惑が掛かるでしょ?待ってもらっているのだからっ。もう・・・」
「分かったから・・・」
イスに座り目の前にあるのは日本人の朝食である白米と納豆とお味噌汁。白米は粒の一粒一粒まで朝の光を反射して光っている。
納豆は家はネギを入れる派なので横にネギがちょこんとおいてある。
お味噌汁は具沢山で自分のファストフードで塗り固められた味覚を戻してくれた。
「いただきます」
朝食はものの五分で食べた。
寝巻きをささっとぬいで比較的新しい制服に身を包む。少し大きいが身長が伸びることを思っての事だろう。
実は最近ニキビが出来てしまったので洗顔を念入りにしているのは秘密。
歯を磨いて鞄を持ち履き慣れない靴を履いて無言で出ていくとそこには幼なじみの山藤院花見がまだかなと腕時計を覗きこみながらじぶんを待っていた。
「透君。時間ぴったしだね」
山藤院花見。名前からして良いところのお嬢さんなのは分かっている。腰まで伸ばした黒髪に心の底まで見透されるような紫紺の瞳。桜の花弁のようなか弱さを思わせる桜色の唇。仄かに紅い白磁の頬。胸もそこそこある。
「花見。嘘いうなよ?俺は五分も遅れたんだぜ」
「そうかな?まあいいっか!学校行こ!」
花見と出会ったのは十三年前。近くの公園で黒服の男が花見を黒いワゴン車に乗せて連れ去ろうとしたのを俺が阻止し当時の山藤院グループ会長の山藤院君貴に目をつけられたことが始まりだった。
それ以来命の恩人として花見と行動させられているのだ。つまりはエロゲの物語と似ている気がするが・・ 。
しかし道を歩いていて思うのだが花見は俺とは絶対に釣り合わないのだ。しかし現在進行形でいまこうして談笑しながら登校しているので花見が俺に慈悲を掛けているのかと思ってみたり。
そして花見ははっきり言って俺に依存している感じがするのだ。部活は入っていないが委員会や役員もすべて俺と同じなのだ。
噂によれば山藤院一族はこの地域で絶大な権力を持っていて高校のクラス替えの際も花見が俺と同じクラスにしてくれと言ったらしい。
「透君はさ・・・その・・・好きな人とかいるの?」
爆弾発言やめろ・・・まじで。
「いるよ。お前は?」
花見はもとから紅潮している頬をさらに紅くして
「えっ!?わっ私はべべ別にいないよ!」
おまえわかるぞ!
「へー。予想してみようかな?」
「やめてよ!透君の意地悪っ。ってきゃ!!」
花見はどうやら道端の石に躓いてどてっと俺の上に覆い被さるようにこけた。花見は俺の真後ろをあるいていたため・・・。
「何すんだよって、ちょっ!」
花見の少し豊かな胸が俺の背中にバインと着地した。背中にふにふにする胸は自分からは見えないが端から見れば絶景になっていること間違いなしだった。
「透君!ごめん・・・」
「そんなこといってる場合じゃねーだろ。胸。なんとかしろよっ!」
「胸は何とかするよ?あ!もうチャイムなっちゃうよ!」