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プロローグ

こんにちは。あーくと申します。超テンプレートな話を書いてみたくなりました。文章力は控えめ、文章量も控えめ。なので、ゆっくりリラックスして読んでいただけるとありがたいです。


 異世界召喚。

 言うまでも無く有り得ない話だ。

 一度行っただけでも奇跡。二回目など神の気紛れだ。


 そもそも、異世界という存在自体が懐疑的であり、真面目に信じてくれる者など無に等しいであろう。

 現実逃避、と思われても仕方が無い。

 だがそれは存在する、と思わなければ夢見る者達は報われない。


 仮に、異世界が存在し、もしもその世界に召喚されたとしよう。

 普通であれば何を思うであろうか。

 普通でない状況に、何を思うだろうか。



 しかもそれが、二回目だとしたら。



 ある青年は、こう思った。



「早く帰りたい……」



 ◇



 黒宮(くろみや)和夫(かずお)は高校三年生であり、18歳である。

 それが俺であり、俺という人間を簡潔に語った文でもある。

 問題は俺が先程まで自分の部屋に居た、という事だ。


 そう、居たはずだった。


本でも読もうかな、と考えていた最中に突然酩酊のような感覚を覚え、徐々に意識が白く塗りつぶされた。




 ふと気付いて目を覚まし、先程の感覚が何だったのか自らを疑ったが、それよりも自分の目を疑いたくなった。

 目の前に広がっている光景が、目を覚ます前とは打って変わっていた。


 部屋全体が薄暗く、何処と無く怪しげな雰囲気。

 足元には、怪しさを一層盛り上げる、誠に意味不明な魔法陣が淡い光を帯びている。

 それが描かれている床は天然の石で出来ているようで、ひんやりと冷たい。



 ここまで述べてみれば、とてもじゃないが俺の部屋じゃないと嫌でも分かる。



「どこだここは」



 当然の問いが口から漏れる。

 しかし答えてくれる人などいない訳で、悲しく独り言と化した。


 だが、今も体を包むこのなんとも言えない感覚だけならば分かる。

 味わった事があるからだ。


 異世界召喚。

 である。


 丁度一年前くらい、今は18歳だから17歳、つまり高校二年生の時、有り得る筈の無い、異世界召喚とやらを味わった。


 それも定期テスト前という最悪のタイミング。

 家族や友人によると、俺はテスト前には人がまるで変わるらしく、とことん凶暴らしい。

 らしい、と自分の事なのにそう言うまでだ。だから一年前の事ははっきり言って余り覚えていない、というのが本音。



 そもそも、異世界召喚を味わった上で欠かせない補足がある。



 俺がいる世界には魔法が存在しているのだ。



 別に異世界があるくらいだ。

 魔法が存在していても何らおかしいことは無いと思う。

 そして、それは限られた者が使える訳じゃないのだ。

 こういう表現は分かりにくいから言い換えよう。



 誰だって魔法は使えるのだ。



 神様は全ての人類に平等に微笑んでくれたらしい。

 勿論というか何というか、科学も発展している面白い世界だ。


 平行している世界には、魔法、もしくは科学が無い世界もあるのだろうから、どちらも存在している事は案外好都合だと思う。

 だからというか何というか、魔法については制限が法律によって決められているので、決して無法じゃない。



 話を戻す。

 その異世界についてだが、頭の中にある朧げな記憶によると、さっさと魔王を倒した。

 自分の世界でやったら捕まるレベルの魔法をぶっ放して、さっくりと倒した、と記憶にはあるのでそれが真実なのだろう。

 自分の記憶なのに疑わしいとか、意味が分からない。


 ちなみに魔王を倒したら、どういう訳か知らないが勝手に家に戻れた。

 あまり考えすぎるのはいけないが、この現象だけは突き止めるべきだったかもしれない。

 それ程謎だ。



 その後の事はよく覚えている。


 何も無かったかのようにテスト勉強を再開し、ようやくひと段落ついたので、解放感と共にベッドに寝転がった瞬間にやっと頭が状況を理解した。



 あれ、なんか異世界行ってたんじゃね?



 と。

 思考がその事実をしっかりと認識する前に、眠気が襲ってきた。

 既に日を回ろうかとする時刻だったので、明日のためにもその日はすぐ寝た。



 そして次の日、流石に昨日の事はいくら人が変わると言われている俺でも覚えていた。

 それで記憶をほじくり返してみれば、とんでもないことを言っていたので、恥ずかしさで死ぬかと思った。

 度合いはと言えば、ベッドに寝転がり足を激しくバタバタし、羞恥に顔を赤く染め、枕に押しつけるといった所だろうか。

 勉強のしすぎってのも良くないようだ。


 ちなみに、その後母にうるさいと怒られたが、詳細を説明する事は勿論しなかった。

 適当にぼかした。



 そして今、俺はどう考えても異常な事態に遭遇している。

 現在進行形。


 乾いてしまった唇を舌で潤す。

 先程までは見えなかった物が徐々に鮮明に見えてくる。

 暗さに目が慣れてきたらしい。


 俺を、というか魔法陣を囲むように六つの柱が立っていた。

 そして上を見上げると、遥か上空に光が見えた。

 どうやら吹き抜けのようになっているらしい。

 だが、差し込んでくる光はかなりか細い。

 上まではかなりの高さのようだ。


 ここから動きたいのは山々なのだが、何故か体が動かない。


 硬直し切ってしまっている。


 それでも首は動かせるので先程から色々な場所を見ている。



 さて、この状況はなんと表わすべきだろうか。

 夢か、はたまた有り得ない異世界召喚か。

 俺は前者を選んだ。

 そう、思いたかった。



 心に言い聞かせるように、これは夢だこれは夢だ……。

 と念仏のように唱える。

 集中は直ぐに途切れてしまい、自己暗示を諦めて周りを見渡す。


 ゆらり、と人影が柱の陰に見えた。

 それはお化けの類では無く、間違いなく人だった。

 柱の陰からこちらを覗いている。

 それも、数人が。


 根競べをするように暫しの間、じーっと疑うような目線でそちらの方を黙って見ていると、カツンカツンと足音が聞こえた。

 徐々に音は近付いて来る。



「私の言葉が分かるかね?」



 歩み寄る、という姿勢を見せながら優しく話しかけてきたのは男性だった。

 後ろでは幾人かが慌てて止めようとするが、男性はそれをやんわりと抑え、俺の方に近づいて来る。


 対等な立場で話し合おう、という事なのだろうか。


 近くに寄られるとその男性がよく見えた。

 第一印象はなんか国王っぽい。

 流石に答えないのはおかしいので、



「ああ、分かるけど」



 普通に言葉は聞き取れていたのでそう答えた。

 我ながら適当な返し方だと思うが、仕方がない。

 初対面でそんな事を聞いて来るなんて、普通外国の人だ。


 ちなみに今目の前にいる男性は、俺のよく知る日本人風の顔ではなかったが、キリッとした端正な顔立ちだった。


 俺が答えると、男性は喜色満面の笑顔で、



「おお、そうか! 私はこの国の王だ」



 腕を大きく広げて歓迎する姿勢。

 本人が言っていたが、本当に国王だったようだ。

 風格って凄いと思う。

 確かに服も豪華に見える。



 そうしたら柱の陰にいた人達全員が出て来て、国王になんやかんや言われて、状況をよく理解しないまま謝られたかと思えば、先頭に立って魔法陣の部屋から退出していく。

 俺もそれに倣おうと思ったが、体が動かない事を忘れていた。

 少々冷や汗を流したが、黒いローブを着ている人が魔法陣の外に無理矢理出してくれた。

 どうやらあの魔法陣に何らかの原因があったらしい。

 やっと部屋から出れた。



 広い廊下を歩く国王の背を見ながら考える。

 とりあえず、今回の要件なのだろうか、と。

 もしそうならば聞くに越した事はない。



 ◇



 話を聞いてきた。

 しかし余りの面倒さに、思わず溜め息が漏れる。

 さっきから溜め息しかついていない。


 聞いた話を要約すると、『魔王倒せ、倒せば帰れる』だった。

 倒さないと帰れないらしいので、半強制的だ。

 だから、何で魔王を倒せば帰れるのかが分からない。


 今は客人用らしい部屋にいるが、これが客人用かと思う程度には広い。

 まぁ相手は国王だ。

 俺みたいな一般人とは価値観が違う。



 とりあえず分かった事は、十中八九異世界テンプレ物だろう、ということだった。


 

 国王には悪いが、はっきり言ってつまらない。



「早く帰りたい……」



 部屋には誰もいないと分かっていても、小声で弱音を吐く。

 しかし、なよなよしていても帰れない。それに一回経験済みだ。

 飽き飽きする展開なんてめんどくさい。

 早く帰りたい。

 もうそれだけが頭の中で渦巻いている。


 よくありがちな展開としては、頼れる仲間を探す、とか。

 傷心の人を慰めて仲間になってもらう、やら。

 有名になってハーレムを作る、とか。


 もう本当にマジでどうでもいい。

 いや、ハーレムにはほんの少しなびいてしまったか。

 しかしそんな欲望など帰還欲求の前には無力。


 続き。

 武器もどうでもいい。

 魔法あるからある程度はどうにかなる。

 後は、魔王を倒したら帰れるとか言う謎を解き明かしておきたい。


 しかし、早く帰りたい気持ちには変わりは無い。

 顔を上げると、心には一つの闘志が生まれていた。



 以上の理由により。



「とりま魔王殴ろ」



 何かを楽しむような笑みが顔に浮かぶ。

 虐殺だと可哀想だから、ストレスの発散がてら殴られてもらおう。


 もしめっちゃ強い魔王だった場合?


 関係無い。

 殴って殺す。


 それでもって国は助かる、俺はストレスを発散して帰れる。

 まさにWINWINじゃないか。



「くはは」



 人格がおかしくなってきたが気にしない。



 もう、さっさと帰ろうと思う。



 ていうか、絶対に帰る。

 邪魔したらどうなるか知らんぞ。

 特に俺をこんな運命にした奴。




かなり短いですが、さくさくとした展開を心がけていこうと思います。


また、前作っぽい短編を読んでいただけるとありがたいです。↓URL

http://ncode.syosetu.com/n3078cb/

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