第四話 人との遭遇
俺のキャラ女体化&ユニーク化事件から3日経った。
この間に俺は、ユニークスキルの使い方とそれを組み合わせた戦い方を模索していた。結果はなんとかこの森付近のモンスターとは難なく戦えるぐらいにはなった。巨大芋虫は除くけどね。
実際、巨大芋虫とはあれ以来戦ってない。運営のユニークスキルの試練? だったのだろうか……。
まぁ、良い。今はステータスもそこそこ上がってることだし次戦っても前みたいな地獄にはならないだろう。
ちなみに、今のステータスは
名前:ヒナ
性別:女
職業:歌姫Lv13
スキルツリー:歌Lv14
:魔力Lv14
:槍Lv19
称号:駆け出し冒険者、王昆虫討伐
依然として俺の性別は女のままであるのだが……諦めがついたとして、問題はこの歌スキルだ。歌スキルはその名の通り歌を歌う。歌を歌うことによってさまざまなことを起こすことができる。
例えば、回復の歌〈新緑の歌〉を歌えば歌っている間は回復をし、〈火の物語〉という歌を歌えば火を操ることができたりもする。さらには、身体強化や能力付加などもできるからいたせりつくせりというやつだ。
だが、そんな歌スキルにも問題はある。それは、消費魔力多いことだ。
大体1秒につき消費魔力は1.5。今、歌える歌は約1分。そうすると一曲歌うだけで全体の約4分の1は持ってかれてしまうのだ。
正直、この歌姫のドレスがなければなんにもできんとこだった……
「そろそろここら辺の敵に慣れてきたし、もうちょっと探索幅を広めても構わないかな?」
リスポーン地点に出てくる敵といえば、猪、動く木、狼、毒蛙だ。名前は覚えるのが怠いから覚えん。この敵の中でも厄介なのが毒蛙だ。こいつの攻撃に当たると一定の確率で毒になってしまうのだ。俺の所持品は始めたばかりの初心者とほとんど変わらないわけで……毒になってしまうと死ぬまで待たなければならんのだ。
猪に関してはもはや食材だな。猪突猛進でワンパターンだから余裕で躱せるから当たらなければどうってことはない。
ちなみに、このゲームには空腹度というのがあり、空腹ゲージというものが存在する。最初は100%から始まるのだが、徐々に減っていき、0%になってしまうとステータスが大幅に減少してしまいそのうえ、体力が少しずつ減っていってしまう。始めたての頃は激しい空腹感と共に死んだっけな。まじ辛かった。
今は猪の肉を焼いて食うというワイルドこの上ない方法で凌いでる。
『やば……か……たぞ』
『どう……の』
『い……こん……なんて』
「ん? 今何か聞こえた気がしたぞ?」
森の中を音の聞こえた方向に向かって進んでみる。少し進むとその音も明瞭になっていく。よく聞いてみるとどうやらパーティを組んでいるらしいプレイヤー達がモンスターに囲まれているらしい。さらに進んでいくとそのプレイヤー達の姿を捉える事ができた。
「おい! 防御魔法まだか!」
「回復まだー?」
「ちょっと! モンスターの攻撃受けてるんだけど! 前衛仕事しなさいよ!」
重そうな鎧を着けて身の丈よりも大きい剣を振り回している男の剣士が1人、軽そうな鎧を纏いナイフのようなものを2つ持っている盗賊もどきの男が1人、その2人の後ろにローブのフードを深く被り大きな杖を持っている魔法使いが1人の計3人。魔法使いに関しては顔がよく見えなかったから性別はわからんかった。
…………うん。見なかったことにしよう。触らぬ神に祟りなしってな。
「きゃっ!」
引き返そうとした時、悲鳴が聞こえる。その悲鳴の聞こえた方向を向いてみると、モンスターの攻撃を受けてしまって尻餅をついた魔法使いの姿があった。いや、正確には女の魔法使いだ。
「グルルル!」
モンスターの内の1匹である狼が魔法使いに襲い掛かる。その鋭い爪が魔法使いに接触する瞬間――――
―――ギンッ
その爪は魔法使いには当たらず、狼と魔法使いの間には1本の槍があった。
「おい、大丈夫か?」
「あ……うぅえ?……は、はい」
完璧なタイミングだ。ジャストゥタイミングゥ!
そう、狼から魔法使いを守った槍は俺が突き出した槍だ。
「こいつら倒しても?」
「…………(こくこく)」
どうやら良いらしい。周りを見てみる。さっきまで戦っていた前衛の野郎どもはやられてしまったらしい。まぁ、野郎なんて興味ねぇから。
モンスターの数は全部で4匹。猪1匹、狼3匹だ。
とりあえず、最優先で倒すのは猪からだな。
〈戦士の歌〉を歌い身体強化をする。素早さと攻撃力、防御力が上昇する。
「ブルルルゥ!」
猪が突進してくるがその攻撃は当たらない。俺は避けて猪の側面から槍で突く。槍が伸びきったタイミングで狼3匹が右、左、そして猪を飛び越えて3方向から飛び込んでくるので後ろに飛びのきつつ槍を引き抜く。すると、3匹の狼は飛び込んだため空中で頭をぶつけ合い小さなヒヨコが頭の上に出現する。スタン状態というやつだ。
運が良い。俺はこの間に猪を仕留める。
ちょうど仕留め終わると同時に狼達がスタン状態から回復する。
「「「ガルアァァ!!!」」」
めっさ怒ってる。いやぁ、これでもかってくらい怒ってますよ。
「ガルゥ」
「グルゥ」
「ガルアァ!」
3匹がタイミングを遅らせながら襲い掛かってくる。
まぁ、慣れてるんで当たりませんけどね。
避けながら〈時の歌〉を歌う。〈戦士の歌〉の効果は猪を倒した時点できれてる。
〈時の歌〉は一時的に自分以外の周囲の時間を止める歌だ。まだレベルが低いため、数秒が限界だ。
襲い掛かろうとしている状態で止まった狼たちを槍で攻撃する。
そして再び時間が動き出した時にはすでに狼たちはその体制のまま息絶えている。
「え?」
なにが起こったかわからなかったのだろう。後ろで魔法使いが口を開けたまま立ち尽くしていた。
ここはいっちょワイルドにきめちゃいますか~
「帰りなさい。ここは危険」
そして、森の奥へと去る俺。ワイルドだろ~?
えっ? もう流行じゃない? 知ってるよ!
でも、あの魔法使いの女の子はもう俺のワイルドさにメロメロだろうな。
今度から困ってるプレイヤーがいたら助けてやるのも悪くないかもな。女の子限定で。
さて、疲れたしそろそろログアウトするかなぁ~
~そして魔法使いは~
魔法使いは開いた口が塞がらないまま街に戻り、死に戻りした仲間に起こったことを説明するが逆に、頭を心配される魔法使いだった。
数日後、森にいる紅いドレスを着た歌姫は公式の掲示板で騒がれるのであった。
少しずつ書いてるんですけどね……遅くなりました。すみません。内容もグダグダになってしまってるかもですが大目に見てください……。ここまで読んでくださってありがとうございました!!!!