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第三話 現実逃避

 そういえば今日の夕飯は何にしようか。

 我が家での食事は俺担当だ。しかし、俺はもともと料理は得意ではなかった。

 ――――あの事件以来、俺は必死に料理を勉強するようになった。

 

 ――――――死の毒鍋事件(あの事件)――――――

 それは小学校三年生の夏休みのことだった。

 珍しく母さんだけが海外赴任からの仕事から帰ってきた。

 そう。帰ってきてしまったのだ。

 今までは母さんが何か言う前に親父が飯を作ってくれていた。


 それは親父が朝食を作ろうとした時のことだった。


 「じゃあ、久しぶりにあたしがご飯を作ってあげようかしらねぇ~」

 「いや、神子(お母さん)さん。仕事から帰ってきたばかりで疲れてるでしょ? 休んでて?」

 「気にしない気にしな~い」

 「いや、少しで……『僕、お母さんの作ったご飯食べてみたい! お母さんの手作りのご飯たべたことないし』

 

 親父の顔が青くなった。

 俺は言ってしまったのだ。悪魔の一言を。


 「あらあら~じゃあ上腕二頭筋によりをかけてご飯を作るわね!」

 「わーい」


 親父はとうとう頭を抱え込んでしまった。

 親父は知っていたのだ。よりをかけるのは上腕二頭筋にではなく腕にだということを。


 「できたわよ~」

 「わーい、でもなんで朝からお鍋なのぉ?」

 「あたしが行ってた海外では朝からお鍋を食べるのよ」

 「へーそうなんだー」


 俺は知らなかった。刻一刻と破滅へと向かっていることを。

 俺は鍋の中をのぞき込んだ。そこには……言えない。スープは紫色をしており、具と呼ばれるものは……スライムのようにぐにゃりとしていた。

 俺は子供だった。今の俺なら決して口にはしないだろう。まず母さんに飯を作らせたりしない。

 だが、おれは子供だった。なにもわからなかった……知らなかったのだ。その鍋がどんなに危険だったのか。そう、無知は罪なのだ。

 その鍋という毒物が口に運ばれた瞬間、俺は激しい激痛に襲われ意識を手放してしまったのだ。

 俺はその頃から料理を学ぶことを決心した。あんなもの妹には食わせられない。今ではもう料理は得意分野になっており、他にも母さんの所為で裁縫などにも手を出していたこともあって友達からは『お前って女子より女子っぽいよな』と言われることが多々あった。

 今では親父が地方の方に単身赴任しており、母さんには料理をさせるわけにはいかないので、親父の後を引き継ぎ俺が料理当番をしているわけなのだ。

 

 ……あまりの出来事にトラウマを思い出してしまったじゃないか!


 なんなの!? なんなのこれ!? ヒナって何! 俺の名前はヒナタじゃい! こんなの女の子みたいじゃないか! なんか性別も女になっちゃってるし……。


 自分の体を見てみる。そこには俺が編集したはずの筋骨隆々の体なく、スラリと細い華奢な体つきをした肉体があった。

 そういえば、巨大芋虫と戦った時になにか違和感があったのはこういうことだったのか。

 てか、なんで今まで気付かなかったんだ?


 「あーあーあー」


 声のピッチが高い。まるで女の子みたいだ。

 体以外にも声もか……

 完璧女だよな~だがしかし! 俺の心はワイルド! 溢れ出るワイルドは止められない!


 …………運営に連絡するかな。


 とりあえず、ログアウトだな。

 ゲームの中での意識が遠ざかる。

 そして目覚めたときには自分の部屋のベッドの上だった。

 さて、早速運営に報告するかな。

 

 パソコンを起動させゲームのサイトに行き、今までに起こったことをまとめメールにして送る。


 ふう……一仕事終えたぜ。あとは夕飯を作るだけだな。今日の夕飯はカレーにするかぁ……。

 起きてから股がスースーする気がする。気のせいか。

 エプロンを着け、カレーを作ってると莉子、母さんの順にリビングに集まる。

 ちなみに、母さんの名前は紗枝(さえ)という。

  

 「リゼロア洞窟の地下三階までの攻略終わったー!」

 「あら、あたしも早くリゼロア洞窟に行きたいわ~」

 「大丈夫だよ~お母さんならすぐ来れるよ!」


 そんな会話が聞こえてくる。あれ? 母さんもやってたのか

 カレーを作り終え配る。

 

 「お兄ちゃんはどこまで進んだの?」

 

 「ん?」

 やべ……どう答えよう。

 「森……かな?」

 「まだ、始まりの森か~そうだよねぇ、お兄ちゃんはこの手のゲームはじめてだもんね」

 

 いえ、迷いの森です……


 「日向ちゃん……お母さんが手伝おうか?」

 「私も手伝うよ!」


 いやいやいや、まずい! 実はバグって女の子としてプレイしてるってばれたらこのまま女の子としてプレイさせられてしまう……!


 「いや、気にしないで。もう少し強くなってから頼むよ」

 「そう? 遠慮しなくていいんだからね?」

 「おう、頼みたくなったら頼むよ」

 「うん! 任せて! じゃあ、私は続きを攻略してくるね! お兄ちゃんごちそうさま!」

 「さて、あたしもがんばろうかしら。日向ちゃん、ごちそうさま。あと、その服似合ってるわよ~」

 「お粗末様でした。ほどほどにな~。ん? 似合ってるって……何が?」


 服を見る。なんじゃこりゃ!? なんで俺ふりふりのワンピース着てるの!? 一体誰が……いやわかってる。あの二人だ。


 シュタッ!!


 「母さん!?」

 残像でも残るのかと思うくらいのスピードで逃げやがった! ありゃあ世界狙えるぜ!

 「やれやれ……」


 着替えて自分の部屋に戻る。


 「おっ? 返信が来てる」


 運営からの変身返信メールだ。メールボックスから開く。


 「えっ?」


 『Re バグ発生の件について

     今回はわが社のゲームファンタジースキルオンラインをご購入してい

     いただきましてありがとうございます。

     今回ヒナさんに起きたバグの件についてですが、バグではなく仕様に

     なっております。ユニーク職業、ユニークスキル、ユニークアイテム      などのユニークユーザーに選ばれた人にのみあのような試練を与えて

     いるのです。ですのでお気になさらずプレイしていただけると幸いで

     す。』


 「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 どうやら俺は女としてゲームをやっていくしかないらしい。

行き当たりばったりで書いているのであんまり上手くないですけど読んでいただけて嬉しいです。少しずつですがお気に入り件数も増え作者は歓喜のあまり三点倒立をやってしまいそうです。やりませんけど。今回も読んでくださりありがとうございます。これからもなるべく早く更新していきたいのでよろしくお願いします!

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