第一話 テクノブレイク!?
初心者なので見苦しいと思います
やっとだ。やっとこの日がきた。
思えば、小学校の頃からこの見た目の所為でいろいろと苦労したもんだ。修学旅行の際には大浴場に入る時間帯は制限されるし、男友達には微妙な目で見られる。挙句の果てには、好きな女の子に告白したら
『ごめん、日向君のことを男の子として見れないの……男の娘としてでしか見れないの!』
と言われて、顔を真っ赤にしながら俺の前から逃げるように教室を出ていったよ!
奇跡的なのは、イジメられることだけはなかったことかな…………まぁ、俺の知らないとこではいろいろとあったみたいだがな。
しかし、こんな悲しい日々ももうおさらばだ! ……何故かって? 見てくれ! この機材を!
とうとう、俺もVR技術の恩恵受けることができるのだ! どれだけ待ったことか……このVRヘッドギアを買うためにこの一ヶ月間バイト詰めだった……発売日当日は朝一で取りに行った。ちなみに、VRヘッドギアは抽選式だから抽選に当選すれば必ず手に入る。当たった時の嬉しさと言ったらパンツを頭にかぶって踊りだしたくらいだ。あの時の妹の顔は忘れられない。
そんなこんなで手に入ったVRヘッドギア。ヘッドギア単体ではゲームはできず、ソフトを用意する必要がある。ソフトの方は用意してある。<ファンタジースキルオンライン>通称【FSO】。
<ファンタジースキルオンライン>―――プレイヤー達は職業とスキルを選択しスキルツリーに装備し、さまざまな組み合わせをして冒険をしていく。なかには、魔法使いなのに斧を振り回すプレイヤーまで出てくるので自由度は高い。ゲームの中にいるNPCには高性能なAIが搭載され、さらには木を一つとってみても表面のざらざらとした触り心地や本物と見比べても何の違和感のない細かいところまでつくりこまれたグラフィティはもう一つの現実と謳い文句にされているのもうなずけるレベルだ。
俺はこの【FSO】でやり直すんだ……! とりあえず、キャラクターをつくらなければ……
キャラクターはゲーム会社に身長や体重などの身体情報と体全体が入っている写真を送る。すると15分くらいで俺と全く同じ見た目したキャラクターデータが送られてくる。それをパソコンの専用ソフトを用いて細かいキャラクターの見た目を編集していく。編集といっても全くの別人にすることができるというわけでもなく……せいぜい筋肉量や顔の輪郭をごつくしたり、髪の毛や瞳の色を変えられるぐらいだ。
それでも俺にとっては十分だ。今まではこの見た目のせいで俺からにじみ出るワイルドさが損なわれていたが、このキャラクターなら俺のワイルドさを表現できるだろう。
編集を終えて家の一階に下りる。
「あっ、お兄ちゃんっ」
「莉子か」
「キャラクター編集終わったの?」
「まあな~」
「じゃあ、今日から一緒にできるね~」
そう言って微笑みかけてくる莉子。
うぅむ……我が妹ながら可愛いな……俺より身長低いから若干上目づかいになってるのも萌えポイントだな。個人的な願望を言うと髪型はショートよりもロングの方が似合っててなお良い。
「お兄ちゃん? なんか失礼なこと考えてない?」
おっと、まずいまずい……妹を色欲の目で見てたことがばれたら大変なことになる。
「いや、気にすんな。さて、俺は試しにFSOにログインしてくるけど莉子はどうする?」
「私もこのあとギルメンと洞窟の攻略があるから~」
「そうか。がんばれよ」
てことは俺一人か。まぁ、最初から莉子のペースについていけるわけもないし……ちなみに、莉子はこのゲームをβ版からプレイをしており、結構な上位プレイヤーなんだと。β版からのギルド〈ヘカトンケイル〉に所属して日々攻略に勤しんでいるらしい。
「ごめんね、手伝ってあげられなくて……」
「いやいや、気にすんな。漢らしくワイルドにデビューをかざってやるぜ!」
「おとこらしく? わいるど?」
まだ莉子には俺のにじみ出るワイルドさにきづいてないようだ。
「そういえばお兄ちゃんのキャラクターみてないや……みせて?」
「おっけー」
まぁ、俺のキャラをみて驚くことだろう。
俺の部屋へと移動する。ちょうどデスクトップの画面は編集が完了した俺のキャラが映し出されてる。莉子は椅子に座らずに画面を食い入るようにみている。
「これ誰?」
「何をいって……俺のキャラに決まってるだろ」
「なんでこんなに渋いの?」
「俺の溢れ出るワイルドさを表すにはこれくらいじゃないとな」
「はぁ……まあいいや。街中でみつけたら声かけるね~」
「わかった。でも、俺莉子のキャラの見た目わからないが?」
「大丈夫! 見た目私とあんま変わんないから~」
「それ平気なのか?」
主に防犯的な意味で。
「大丈夫だよー外見がわかったからって住所までばれるわけじゃないし……お兄ちゃんみたいに編集する人なんてほとんどいないよ」
そんなもんなんだろうか……
「そんなもんなの。じゃあ、私は攻略しなきゃだからまたね~」
そういって莉子は自分の部屋へと戻って行った。
さてさて、俺もやりますかな!
VRヘッドギアを頭に装着する。催眠誘導型というもので眠るように意識が切り離されていく。そして意識が戻ると目の前には名前を入力してくださいという文字とともに名前を入力するための欄がある。
「名前はヒナタでいいかな」
名前を入力して決定する。すると〈これからはじまりの広場に転送します〉という文字がでる。次第に文字も消えていき目の前は真っ暗になる。これで俺のワイルドな第二の人生が始まるんだな……と感傷に浸っていたがいっこうに転送される気配がない。
あれ? なに? まずくない? 画面変わらないんですけど。
と戸惑っていると大音量のアラームの音が鳴り響く。それと同時に画面いっぱいに赤字で〈WARNING〉の文字が。
えっ……まずくね? 開始そうそうやばくね!? てかまだ始まってすらねえし!? あぁ……目の前が真っ白に……これが俗にいうテクノブレイクってやつ……なの……か?
そこまで思ったところで俺の意識は完璧に途絶えたのだった。
いろいろと教えていただければ嬉しいです