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電脳嫌いと電脳少女の電脳探偵  作者: 卓音 逢楽太
眠れない日々の始まり
3/10

依頼1

「早くしてよ、恵琉(える)にぃ」

 これで5回目だ。

「ミャア、少し待てって言ってるだろ。まだパソコンの修理初めて10分じゃないか」

 ミャアこと美也子(みやこ)とは俺の妹だ。そして、とてもせっかちだ。

「だって、待ちきれないんだもん」

 そういって椅子に座り、足をバタバタさせている。

「お前は遠足前日の小学生か」

「むぅ」

 妹はよく、気に入らないことがあるとほほを膨らませる癖がある。その仕草は、一部の男子に人気があるようだ。俺もかわいいと思う事があるが、それは、場の雰囲気や状況も関係すると思う。

 たとえば、下から見上げるような感じで、やや怒りながらほほを膨らませる、なんてのは個人的には最高だと思うが、ただのわがままな妹が兄にパソコンの修理をさせ、始めて10分で、早くしろ、と5回も急かしてくる状況で、そんなことをされても効果はとても薄い。

 長ったらしく論じている間に修理は終わった。

 15分か、まあまあだな。

「よし、終わったぞ」

「やっと終わったの?これからはもっと早くしてよね」

 無茶言うな、これでも早いほうだろ。

「だいたいおまえ、コンピューター部の部長だろ、自分で直せよな」

 妹はコンピューター部の部長であり、唯一の部員である。

 だから、一年生なのに部長をしている。

 最も部、というより愛好会なのだが。

「わたしは、インターネットとかソフト、アプリが好きなだけ、パソコンの中なんて興味ないの。それに、こういうの恵琉にぃのほうが得意でしょ」

「まあ、そうだけど……」

 事実を指摘され言い返せずにいると、入口のほうから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あっ瀬臥(せが)くん、やっと見つけた」

 その声の主はクラスメイトで学級委員長の秋山沙織(あきやま さおり)だ。

 入口に背を向ける態勢だったので、振り返りつつ答える。

「秋山さんどうしたの」

「高橋先生が瀬臥くんにパソコン見てもらいたいんだってさ。今、大丈夫?」

「ああ、うん、いいよ。またなミャア」

 と言って後ろを振り返ると、怖い顔でにらんでくる妹の姿があった。

「人前でミャアって呼ばないでって言ってるでしょっ!!」

「や、やめろ、やめろって。わ、悪かった、俺が悪かった。だから、引っかくな。痛いから、普通に痛いからっ!」

「ふんっ」

 助かった、もう少しで顔中に引っかき傷ができるところだった。

「じゃ、じゃあな、美也子」

 追撃が来る前にここから逃げだそう。

「………お、お兄ちゃん」

「ん?なんだ」

「その……ごめん……やりすぎた。それと……パソコン……あ、ありがとね」

「ああ、パソコン壊すなよ。修理が面倒だからな」

 妹はもう少し、素直になったほうがいいと思う。






瀬臥(せが)くんってさ、妹さんと仲いいよね」

「まあそうだな、ずっと二人だっだしな」

「ふぅん、そうなんだ」

 そう、俺と美也子はずっと二人だった。

 母さんは美也子を生んですぐに他界した。それからは、親父が男手ひとつで育ててくれた、というわけじゃない。どちらかというと育ててくれたのは、隣のおばさんだ。

 親父は何かを開発する仕事をしていた。なんで何か、かというと親父は開発していたジャンルはとてつもなく広く、これといって断言ができないからである。

 あえて説明するなら、ロボット、家電、パソコン、ソフトウェア、アプリケーション、ゲーム、と電脳(コンピューター)と関係あるものなら何でも作っていた。

 そんな親父が家に帰ってくるのは一年に一、二度、しかも、毎回親父が作ったというガラクタを持って帰ってくる。それだけじゃない、親父は半日もせずすぐに家を飛び出す、すごいことを思いついた、といって。

 そして親父は三年前、過労死で死んだ。最後まで、俺たちの事なんて考えてくれなかった。

 だから俺は、親父が嫌いだ、電脳が嫌いだ、大っ嫌いだ。

 それからは俺と美也子と二人で暮らしてきた。二人でなんて言えばあいつが怒るかもしれない。

 だが、あいつを一人と数えていいのか悩みどころだ。

 あいつっていうのは………まあ、後で紹介しよう。


「瀬臥くん、ついたよ」

 俺はその声に我に返る。そこは一つ上の学年、三年生のクラスだった。

「ここで、高橋先生が?」

「うん、そうだよ」

 秋山さんがその教室のドアを開ける。そこには当然、高橋先生が――いなかった?。

 そう、いなかった。

 そして代わりに、干乾びた何かがあった。

 秋山さんが干乾びた何かに話しかける。

「高橋先生、瀬臥くん連れてきましたよ」

 えっ!?あれが高橋先生!?どうして干乾びてっ!?

「高橋先生おきてください、瀬臥くんが来ましたよ」

 呼びかけでは起きないので秋山さんはゆすりながら呼びかける。

 すると今度は反応がありすぎるくらいで、半ば飛び上がるような勢いで顔を上げる。

「えっ瀬臥くんっ!?よかったぁ、たすかったぁ」

 抱きつこうとしてくるのでそれを軽く避け、あきれながら聞く。

「どうしたんですか、先生」

「パソコンがね、うごかないのぉ」

 大の大人がそれぐらいで泣くな、と突っ込みを入れたくなるが我慢する。

「わかりました、見てみますからそこ退いてくれますか」

「うん、わかったぁ……ぐすん」

 ほんとこれでよく教師をやっていけるな。

「えっと、これがこうだから……よし、これならすぐ直せます」

「ありがとぉ瀬臥くん」

 妹に続き、なんで秋山さんや先生にパソコンの修理を頼まれるかというと、ここ私立芭蕉高校しりつばしょうこうこうにはパソコンに詳しい人が先生や生徒合わせてほんの数人しかいない。名前からわかるとおり文系の学校だ。妹も一様、詳しいが妹はそういうことをあまり引き受けたがらない。

 よって、この手の厄介事は俺に回ってくることになる。

 ちなみに、俺は電脳(コンピューター)が嫌いなだけであって、パソコンを使わない訳じゃない。今の時代、パソコンぐらい使えないとなかなか不便からだ。それに、親父のせいでやけに電脳関係にくわしくなってしまったから、必然的によく頼まれる。


「よし、できました」

 先生のPCは簡単なバグだったのですぐに直すことができた。

「ありがとぉ、本当たすかったよぉ」

「さすが瀬臥くん」

 二人から賞賛の言葉をもらうが、毎回頼られたばっかりじゃため息しか出てこない。

「このぐらい自分で出来るようになってくださいよ」

「だってぇむずかしんだもん」

「まあ、いいですけど……」

 時計を見ると6時だ、日もだいぶ傾いてきたようだ。

「すみません、俺はもうこれで……」

「もう行っちゃうのぉ」

「晩飯作らないといけませんから」

「そういえば、家でご飯、瀬臥くんが作ってるんだったね」

「そうなんだよ、美也子に作らせると大変なことになるからな」

 俺の妹はとてつもないほど料理が下手だ。

 レトルトカレーで暗黒物質(ダークマタ―)ができるほどに。

 だから妹には台所は任せられない。

「秋山さん、じゃあまた学校で」

「うん、じゃあね」





 *******





 買い物をしてから家に帰る。

 今日の献立はトンカツだ。妹もよろこぶだろう。


 玄関の前に立ち、ドアノブに手をかけ一度深呼吸をする。

 意を決し、ノブを回して、家の中に入る。

「ただいま……」

「おかえりなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも……」

 出迎えてくれた言葉に被せて、そのうえ否定する。

「ご飯はまだつくってないし、風呂はまだわかしてない。それと、お前を選ぶことは絶対ない」

 このやり取りは毎回のことなので、難なくスルー。しかし、大事なのはこれからだ。

「えーそれってひどくないですか、マスター」

「そうか?妥当だと思うけど」

「へぇ、そんなこと言っていいんですか。へぇ……じゃあ、マスターのベットの下にあるコレクション、妹さんにばらしちゃいますよ」

 目の前のこいつはやると言ったら九十九%の確率でやり遂げる。もし、ベット下のコレクションが妹にばれると一生口をきいてくれないかもしれない。

 まずい、それだけは避けなければ……

「ご、ごめん、今のは冗談、本当はお前のこと大好きだ、絶対お前を選ぶから。なっ、だからばらしたりしないよな……」

 機嫌を直すため急いで言い繕う。

「選んでくださるならばらしませんよ。そんなことより、マスターがそんなに私の事を思ってくださってたなんて……今夜、いや、今からでも私と」

「やらないよっ」

 しまった、つい勢いで突っ込んでしまった。

「即答って……ひどいです……好きだって言ってくれたのに……」

 しかし、ここまでくればさすがにわざとらしい。

「もういいよ、その演技は……」

「あ、やっぱ、ばれちゃいました?」

「ばれるも何も、全然本気じゃなかっただろ」

「まっ、そうですね」

 あっさりしすぎだろっ。

 紹介し忘れたが、少し大きめのセーターに女子高生が穿()くような短いスカート、そして、青髪ツインテールに青色の眼、さらに猫耳、しっぽを持つこの少女の名前は『アル』、けっこう前に言っていた『あいつ』の正体だ。

 わかるとおもうがアルは人間じゃない、二次元の存在だ。


 二年前、親父の残したガラクタを整理しているときに偶然見つけたUSBカードの中にアルは入っていた。

 パソコンでデータを読み込んだ瞬間、画面の中に少女が現れた。それがアルだった。

 アルを最初に見たときかわいいと思った、俺にオタク趣味はないが素直にかわいいと思った。そして彼女は、俺と目が合うとこう言った。

「あっマスターおはようございます」

「えっ、えっと、おはよう……」

 これが俺とアルの最初の会話だった。

 そしてアルは、あいさつが終わると元気いっぱいに

「それじゃここのコンピューター全部乗っ取っちゃいます(・・・・・・・・)ね」

 といった。

 親父はいつの間にか家を改造していたらしい。最新のコンピューターを駆使し、家中の防犯カメラなどの防犯設備の管理をしている。なぜかホログラム機能までついている。さらに、どういう訳かこのホログラムは物に触れることができ、家中どこでも出すことができる。

 そのすべてをアルが乗っ取ってしまった。

 それからというもの、普段はパソコンやスマフォの中にはいっているが、ときどき俺の目の前に現れるようになった。それも、俺をからかうためだけに。

 マスターなどと言ってはいるが、その実、全然したってくれてはいない。

 いったい何のためのマスターだ。

 そして、アルがいることを妹の美也子は知らない。というより教えていない。いきなり俺が猫耳少女を紹介したら、妹は俺の事をどう思うだろうか。絶対、変な趣味だと思われる。ガラスのハートの俺にはとても耐えられない。

 それに、アルは自分から妹に知られようとしていない。むしろ、その状況を俺をからかうためにつかっている。どちらに転んでも傷つくのは俺だけだ。


「つかお前、授業中話しかけてくるなよ、集中できないだろ。今でも、授業中イヤホンつけてるから眼つけられてるのに、成績まで悪くなったらもう終わりだから」

「大丈夫です、マスターの頭が悪いのは元からですから」

「慰めになってない……」

 アルは、なんと学校にまで付いてくる、一度家に置いていったことがあるが、火災報知機をいじって俺が家に帰るまでの間ずっと鳴らし続けたことがある。そのあとの、苦情の処理がどういうありさまだったかは言わなくてもわかるだろう。

 アルを携帯に入れ、学校に連れて行っても、騒ぎまくる。アルは携帯の中だからボリュームの操作はできないし、俺の友達に適当にメールを送ったりする。

 そして、俺が常時イヤホンをつけてアルの話を聞くということを条件でおとなしくしてくれることになった。事実おとなしくはなっていないが、まだましだ。


「もうすぐミャアが帰ってくる時間だから、お前もうパソコンに返れ」

「私に返ってほしかったら、今から出す私も問題に10秒以内に正解してください。不正解だと、マスターのコレクションを妹さんにばらします」

 アルは尻尾を楽しそうにゆらゆらとゆらす。

「はぁ!?ちょっとどういう……」

「問題……」

「聞けよ!」

 まさか、ここでも未曽有の危機にさらされるとは。

 いや、待て。正解できればいいんだ。いくらアルでも解りっこない問題を出すとは限らない。

 しかし、そんな俺の思いを知ってか知らずかアルの問題はとてつもないほど難問だった。

「妹さんはあと何秒後に帰ってくるでしょうか?」

「えっ!?もう帰ってくんの!?」

「シンキングタイムスタート!!10……9……」

「え、えっと、あと何秒で帰ってくるか、だろ。えぇと……………わかるかっ!」

「……6……5…」

「ちょ、待ってく……っ!」

 突然の振動にびっくりした。どうやら、ポケットの中のスマフォが鳴ったようだ。

 こんなときに……

「いま、取り込み中なので後にしてもら……」

瀬臥 恵琉(せがえる)だな、お前の妹は預かった、返してほしかったら、1千万用意しろ」

「えっ!?」


 どもです。逢楽太です。

 2話目(ストーリー上では1話目)ということで、主人公瀬臥 恵琉(せがえる)とその妹瀬臥 美也子(せがみやこ)、さらに一応メインヒロインのアルが登場しました。この3人はレギュラーキャラクターです。

 それから、クラスメイトの秋山さん担任の先生の高橋先生、この2人はちょくちょく出てきます。

 今回は説明が多くなってしまったので、読んでいてつまらなかったかもしれません。

 すみません、です。はい。

 話を戻します。えっと、そう、最後でまさかの急展開、プロローグの内容が明らかになるかも?

 次回こうご期待。


 それではそろそろお暇を・・・


 これからもよろしくお願いします。

 感想お待ちいております。ノシ

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