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第3話:選ばれるもの
レジに立っていると、 同じ顔を何度も見ることがある。
同じ時間に来る人。 同じ棚の前で立ち止まる人。
気づけば、選ぶものまで似ている。
人の癖が、なんとなく分かってくる。
缶コーヒーもそうだった。
毎日ほぼ同じ時間に来るあの人は、 決まって同じ銘柄をレジに置く。
別に覚えようとしたわけじゃない。 ただ、繰り返されると目に残る。
人は、思っているより変わらないのかもしれない。
そう思っていた。
「お願いします」
短いやり取り。 バーコードを読み取る音。
レジ横の温かい棚には、 同じ銘柄のホットも並んでいる。
けれど、その人はいつも、 冷蔵ケースから取ったほうを持ってくる。
季節が変わっても、それは同じだった。
理由は知らない。 聞くほどのことでもない。
ただ、 毎日同じ選択が続いている、 それだけだった。
袋に入れて手渡す。
今日も、いつも通り。
そう思っていた。




