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スリーライティング・上 Three Lighting  作者: タイニ
おまけたち1

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おまけ2 誕生日とか、冬の夜道とか


皆様、今年もご訪問ありがとうございました。


『スリーライティン・下』を数話書き溜めて、新年には再出発するつもりでしたが、仕事や家の用事が込み入ってしまい、集中できずもう少し先になりそうです。

代わりにおまけの閑話です。


※おまけは時系列ではありません。

※とくにオチはありません。




まだ、11月の頃。


「おー!功。ソナさんのお子さんかわいかったぞ!」


事務所で功に会ったLUSHメンバーの伊那(いな)は、今日一番にそんな声を掛ける。

「ソナさんの?なんで伊那が見てるの?」


ソナとは、尚香たちに出会った最初の日のパーティーの主役である。まさに、ソナさんのお別れ会を功たちはダメにしてしまったのだ。

そんなソナさんが、出産してしばらく経った頃、お詫びも含めて功が出産祝いを尚香に渡した。もう2か月ほど経ち、今は今の時期でほしいものも出て来るので、直接いる物を聞いてもらって美香と尚香で買い物はしてきた。

贈り物は、被り物にもなる大きなバスタオルとソナが好きなお茶とお菓子のセット。まだ家に籠ることが多いので、少しでも気持ちの休息ができたらと細々(こまごま)選んだセットだ。マネージャ―三浦は来ていないが、三浦にも頼まれてオムツをドンと買って来た。



そんなわけで、昨日、みんなでファミレスに集まってお祝いをしたらしい。


最初に旦那さんも来て、親子に対面。お祝いだけして旦那と子供は先に帰り、久々に女性みんなでゆっくり過ごしたらしい。もちろん柚木と川田も参加。

写真を見せてもらうと、みんなで楽しそうだ。


しかし、功。

気に入らない。


「出産祝いだよね?」

「そうだけど?」

「なんでケーキ、2つもあるの?何のケーキ?」

「誕生おめでとう!だろ。」

「え?伊那がハッピーバースデーでも歌ったの?」

「なぜ。まあ、歌ったがな。普通に。」

「話し合わせなかったの?だからなんでケーキ2つもあるの?しかも、なんで伊那が参加してるの?」

最初の日もレリアのライブも、伊那はいなかったのでジノンシー女子と何の繋がりもない。


そして、不満ながら他の写真を見ていくと………なぜか、真理もいる。



「………」

不信の目で見る。

「あ?なんだ?俺が参加したら不満なのか?真理も呼ばれたから、その場にいた俺も付いて行っただけだ。」

「………女子会に参加するって、最悪だね………」

功ですら遠慮する。さすがに。

「最初の10分くらいは旦那もいたからな。」

「てか、なんで真理ちゃんも呼ばれるの?」

呼ばんでいいだろ、と思う。


「尚香さんの誕生日だったから。」

「……………」


一瞬時が止まる。


「…………は?」


「尚香さんの誕生日と真理の誕生日が1日違いだったから。」

「……は??」

「HPをチェックしている川田さんが指摘して、急遽電話。こっちの誕生日ケーキは真理と尚香さん二人分。」

「はー!!?なんで俺も呼ばないの??」

「女子会だろ?」

「だったら、伊那も行くなよ!」

「俺は女子の数に入れなくていいと言っておいた。ただの影で撮影係だ。その代わりケーキは両方俺が買ったからな。今時のケーキがどれだけ高いか知ってんのか?味の分かる女子なんで、安いケーキは買えんかったわっ。」

「ああ?許さん!!意味が分からん!!!!」

「お前、20のクソガキなのに、外資大企業OL女子会に参加する気なのか?その方が最悪だろ?」

「由梨ちゃん怒るでしょ??」

結婚予定の伊那の彼女である。


「途中から由梨も来た。」

「え?!…………由梨ちゃん、ジノンシー女子とは気が合わないと思うんだけど……」

由梨ちゃんは現在頭半分が刈り上げの上に、ピアスが10個くらい付いている。

「功よりはよっぽど平気だろ。」

「…………そう?俺の方がまともだよ?」

「普通に馴染んでたぞ。お前や真理と話せる女子なら由梨は余裕だ。むしろ由梨の方が性格は大人しい。」

「でも、これからは伊那までちゃっかり混ざらないでね。」

「分かった。保証はしないが約束はしよう。」

伊那とは、こういう男である。





***




世田谷の小さな家。



「あ、章君。お疲れ様。ご飯は?」

仕事が終わった後に、尚香の家に文句を言いに来た章。



「お代わりいる?」

「少し。」

なのに、親子丼を出されてそれを食べている。


「ソナも旦那さんも喜んでたよ。ありがとうって。」

「………」

「お礼はいらないって伝えたけど、それだと気持ちが落ち着かないからって、帰る前にみんなで買い物してきたんだ。ソナも気分転換になったみたい。はい!」

と、牛丼屋のレトルトカレーセットを貰う。

「いろんなお店行って、結局それにした!」

「……お返しとかいらないから、価格が分からないようにあれこれ買ってって言ったのに……」

「ソナの気持ちだよ。章君、ありがとうね。マネージャーさんにも。」

尚香が電話を掛けて、相手からもお礼を受け、章も不器用にソナにお礼を言った。



そして一息。


「………てか、そうでなくて、なんで尚香さん、誕生日だって言ってくれなかったの??」

「…………。」

ご機嫌だったのに、変な顔になる尚香。


「尚香さんが教えてよ~。」

「………章君に?自分の誕生日を私から?」

「友達だし~。」


章は誕生日を把握するのが苦手で、どうにか道の誕生日だけはアラームを設定しておいて頑張っている。数字の羅列が苦手なのだ。カレンダーがカレンダーということは分かるし、今日が何日でカレンダーのどこということは分かるのだが、それで1年全体を見通しその月以外の何かを割り出そうとすると、頭の中が全部ただの数字の列挙に戻る。1年全部が1枚のカレンダーならまだ大丈夫らしい。

男なので、ただ記念日などそういうことに気が回らないというのもあるが。



「……なんで章君に誕生日お祝いしてもらうの?いいし。」

そもそも誕生日を祝いたい歳でもない。

「いいしって、おんなじ食卓囲う仲なのに!」

「………」

「30って、還暦じゃなくて古希じゃなくて何て言うの?ちゃんとお祝いしないと!」

「……まだ29なんだけど……」


「なんだ、章。ケーキが食べられなくて拗ねてるのか?尚香、まだケーキ余ってただろ。」

「おじいちゃん。僕も呼んでよ!」

「道さんにケーキを頼んだんだけど、その期間章は忙しいって聞いたからな。すまんかった。」

この3日間は、功だけ他のライブにゲストで出ていたのだ。



そして、半分食べているケーキをきれいに切って、こたつに出してもらう。

「わーい。では、改めて尚香さんの三十路のお祝いをさせていただきます!」

と、余計なことを言う。

「29だってば。章君絶対、結婚できないタイプだよね。」

「アラサー、中央値にあと一歩!」

構わずお祝いモードのである。


ケーキの前にいるのは章だが、ハッピーバースデーを歌って、おじいちゃんおばあちゃんも盛り上がり、最後に拍手をしてお祝いされる。

「わーー!尚香さん、29歳!!」

「………ありがとうございます……」

なんだかスッキリしないが、ダイニングの椅子の方にいた尚香がしぶしぶお礼を言う。




「章君。有名人やアイドルって、ファンにもプレゼントとかもらうの?」

ケーキを頬張る章に、少し興味深そうに尚香は聞いた。


「今の時代は、事務所が受け取りNGだからSNSとかで祝ってもらってる。

アイドルの時はファンの子が俺とかエナドリの名前で寄付したり、奉仕活動とかしてくれるから、俺もお年寄りだけや低所得の家にお米や食材を配ったりする奉仕活動とか頑張った。古い建物の壁のペンキ塗りとかもした。」

「へー、……そうなんだ……」

知らなかったので驚く。

「町単位でも食材は配るから、割り当てのない家に持って行けるように、一旦役場に寄付して俺は持って行っただけだけど。」

と、昔の写真を見せてくれた。

「あ、章君が幼い!かわいい!」

「どれどれ?」

お父さんやお母さんも興味深そうに見ている。

「章君、こんな時くらい笑えばいいのに。」

真顔だ。



「あと、俺はなかったけど、センイルカフェって、ファンの子がオリジナルカフェ出してくれたりする。お店や車のカフェで。」

「すごい?そうなの??」

「街頭広告まで出す。」

「……え?」

「カフェとかは、経費以外の儲けを寄付したりするところには、顔出したりしてたよ。」

「…………」

尚香、驚いてしまう。

「自主カフェってこと?主催ファンの??」

「うん。」

「お金は?」

「儲けがない場合も多いみたいだけど。」

恐らくそうであろう。権利などはどうなっていいるのかと考えてしまう仕事人尚香。


「でも、俺やソンジが中学生の間は会社が自粛するように言ってたから、最初は他のメンバーだけだったけどね。俺がいた頃は、そこまでするファンはまだ少なかったけれど。」

エナドリ人気右上がりの真最中に章はやめたのだ。



「尚香さん、何かプレゼント買うよ。何がいい?」

「なんにもいらない。」

「何か買うってば。」

「いい。」

「何か言っててば。」

「いいって。」

「何でもいいから!」

「うるさいなってば!!」

尚香、遂に怒る。


「………!

……尚香さん、怖い…………」

怯える章。


「尚香、ここまで言われるなら、何かちょっとしたものでもいいから貰えばいいだろ……」

「………」

お父さんに言われるも不服だ。


そしてもう一度章を睨むと、弱ってウルウルした顔をしていた。


うわっ!こいつ!!

と、心の中で思ってしまう。お父さんお母さんの同情を買おうとしているのだ。

「分かった……。じゃあ、ラムレーズンのアイス買って。コンビニにあるの一個でいいから。」

「わーい!」




というわけで、面倒事はさっさと済ませることにして、住宅街の目立たない遊歩道を通って、少し離れたコンビニまで目立たない道を歩く。



冬の夜道。


こんな季節でも昔ほど寒くはないが、それでも冬の空気は少し冷えて、とこまでも見通せるように澄んで気持ちがいい。


暗い道だけれど、建物の中から漏れる光も何だか温かい。


「尚香さん、楽しいね。」

「全然。」

「俺は楽しいよ。」

「………。」


時々話しながら、でも何も話すこともなく、ただ歩くこの道。



どうせならとドラックストアであれこれ買い出しをし、そこになかったアイスをコンビニで数個買う。


「冷凍庫いっぱいになっちゃうね。入るかな。」

「冷蔵庫、大きいの買おうかな……」

「え?俺のために?」

人んちでご飯を食べていく、どうしようもない男が言う。

「違う。来年の旧正月にお兄ちゃん家族も海外から帰ってくるし……」

「え?尚香さんの?」

「うん。初めて子供3人も全員で日本に。狭い家だからホテルに滞在だとは思うけど、うちにもご飯食べに来ると思うし………」

「………」

自分の知らない人間関係がドンと現われ、章は何か不安になる。


「………なんて顔してるの?」

「…………別に………」



「尚香さん。おじいちゃんとか俺のこと捨てないかな?」

「なに急に。」

「……俺、役立たずかな?」

「………?どうしたの?私は捨てても、おじいちゃんは捨てないよ。」

「……そうかな?」


「大丈夫だよ。」

あまりに不安そうなので、大丈夫と尚香はにっこり笑う。



そんなふうに、あれこれ言いながら、二人は世田谷の小さな家に戻って行くのであった。





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