学校の七不思議 〜空の歌姫〜
先生から条件を提示された私。
それは、私と同じだけのスクールアイドルへの熱量を持つ部員を1人以上見つけること。
それは、思っているよりも難しいことで中々見つからない。
アイドルが好きだって子はいっぱいいたけど、自分がなりたいとまで思っている子は少ないし、私の想いを伝えたらみんな引いてしまった。
「どうしたらいいのー!!!」
私は1人で叫んでしまう。周りには幸いにも誰もいなかったので目立つようなこともなかった。でも、少しずつ心に焦りは出てくる。
そんな中、1つの情報が私の耳に入った。
「……なんかさ、最近誰もいないはずの屋上から女の人の歌声が聞こえてくるらしいよ?」
「えー!?なにそれ、怖ぁい」
たまたま耳に入っただけのクラスメイトの会話。屋上で女の人の歌声が聞こえてくるらしいというなんだか怪しい情報ではあったけれど、少し……いや、かなり気になった。
なのに、何日経ってもそんな歌声は私には聞こえてこなくて、でも他のみんなには聞こえてるみたいで、いつの間にかその噂はこの学校の七不思議とまで呼ばれるようになっていた。
星導学園高等部棟屋上
昼休みになり生徒達が各々昼食をとっている中、1人の少女が何も持たずにそこへ立っていた。
本来立ち入りを禁止しているこの場所に少女が立ち入りを許されている理由はその歌声にあった。
部活に所属しているわけではない。ただ、校外での活動にて好成績を残し続ける少女に、学校は例外的な対応として昼休みのみ屋上の使用許可を与えたのだ。
そんな少女は今日も歌う。空を見上げながら、透き通る声で。
そこから付けられた七不思議の異名は……空の歌姫。
その日の私は、先生への提出物を出し忘れていたことを思い出して、昼休みに慌てて最上階にある音楽室へと向かっていた。
「やばいやばいぃ!急がないとご飯食べる時間が無くなっちゃうよぉ!」
焦りつつもこれでも真面目な私は廊下を走ったりなんてことはする事もなく早歩きで急いでたんだけど、そんな私とすれ違う先輩がいた。
他の生徒とすれ違うことなんて当たり前のようにあることだけど、この階では別。授業が終わって少し経っているこの時間に最上階、文化系科目の教室しかないこのフロアに昼休みにいるのは先生だけなはずだった。
それを知っていた私は不思議な気持ちになり、その先輩の行方を目で追ってみる。すると、階段を……上っていった。上にあるのは屋上しか、私達は入れない場所しかないのに、その先輩は上に上がっていった。
すごく気になる気持ちを抑えつつ私は提出物を提出して、昼ごはんを食べるために急いで教室に戻る。
上に向かった先輩の存在が気になりながら。
この出会いは、偶然か、はたまた必然か?私の物語はここから大きく動き始めたりすることを、今はまだ知らない。
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