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Project_Human  作者: 紅ノ月
2/4

Epi.2:FirstBlood

空き地から抜け出して住宅街を散策しているが人の気配がしない。化物…RPG風に置き換えてモンスターと呼ぶがてっきりモンスターが大量発生して家屋の倒壊や家事で阿鼻叫喚を引き起こしているものだと思っていた。

しかし、町は今のところ平和そのものだった。というか、人の気配もいた形跡もない。


「それにしても武器を何も持っていないのは心もとない」


さすがに素手で挑むのは厳しいので適当な住宅から武器になりそうなものがないか探らせてもらった。カギは何故か、かかっていなかったので侵入は容易だったがもちろん人はいない。

 その家に住んでいた人はキャンプなどのアウトドア好きだったのだろう。キャンプ道具が置いてあってその中にあるシースナイフと、いつまでもTシャツでいるわけにはいかないので服も頂戴することにした。

ナイフを持ってゆっくり進んでいると向こうから小柄で緑色の肌にギザギザの歯、ゴブリンが現れた。


「ゲキャキャキャ!」


俺の事を見つけると獲物を見つけたと言わんばかりに嗤い、駆けてくる。

俺はナイフを構え直し、ゴブリンを迎え撃つ用意をした。

ゴブリンは勢いを殺さず、俺に飛びかかってきた。俺はバックステップで避けたがゴブリンも追撃を行ってきた。ナイフで受止めたがナイフだと防ぎきれず、傷を負った。


「ぐっ…!」


攻撃をしたあとだったその隙にナイフで斬り掛かる。


「グギャァア!」


袈裟斬りで大きく傷ついたゴブリンに追い打ちをかけ、切り下げたナイフをそのまま切り上げた。

そしたらゴブリンは力尽きたようでそのまま倒れ込み、光の粒子となって消えてしまった。



━━━━━━━━━━━━━━━


Exp:640


Con:310


━━━━━━━━━━━━━━━


このまま休めそうな場所を探して今日は休むとしよう。食料も探さないといけない。


「グルルルル」

「ギャァギャ!」


 さっきのゴブリンの仲間か?

 くそ、さっさと離れておくべきだったか。

 慌ててナイフを構える。

大丈夫だ、さっきよりも慣れたからさっきより楽になるはずだ。


「ゴギャァア!」


 最初のゴブリンと同じように1匹が飛びかかってきた。だが、レベルが上がったおかげか動きも追える。

 半歩引き下がり、身体を縦にすることで攻撃をその場で回避した。

 過ぎていったゴブリンの背中に攻撃をXの字を描くように2連撃を繰り出す。

 そのままゴブリンはHP全損して消える。もう1匹のゴブリンは怯んでジリジリと後ろに下がるが、逃がさないとでも言うように仕掛ける。


「はああああっ!」


 ゴブリンの心臓目掛けてナイフを勢いよく突き刺す。ゴブリンはそのまま光の粒子となって消えてしまった。


━━━━━━━━━━━━━━━


Exp:640


Con:310


━━━━━━━━━━━━━━━


「レベルは…上がらなかったか。まあそんなすぐ上がるわけないか」


 ナイフもゴブリン3匹としか戦ってないが、もう刃がかけている。使い方も悪いしゴブリンもだいぶ硬いから仕方ないのかもしれない。

 さすがにもうここに留まるのは危険だ。早くここから離れなければ。


 そう思って立ち上がった時だった。

 遠くから風を切る音が聞こえた。嫌な予感がして大振りな回避行動をした。

 俺が座っていたところには1本の矢が刺さっていた。そして奥から現れる20匹はいるゴブリンたち。


「いくらなんでも多い……!」


失敗した。ゴブリンは群れで行動する種族だったか。そりゃ仲間がやられたら外敵を排除するのも通りだ。

 こっちはナイフ1本、鎧もなければレベルだって低い。

 じりじりと後ろに下がっていると屋根の上にいたゴブリンから矢が飛んでくる。


「ぐぁっ!」


 肩で矢を受けてしまった。痛みで思考が鈍り、顔を顰めて何とか倒れずに留まれた。

そのタイミングで2匹の剣を持ったゴブリンが走りかかってくる。

 1匹目は矢が刺さって鈍くなったが何とか回避して2匹目にはナイフを投げた。当然、剣で防ごうとしたのでそのままゴブリンに向かって走った。

 防ぐという行動を行ったおかげで俺への対処が遅れた。その隙を利用して足払いして転ばせた。立ち上がろうとしたゴブリンの腕を踏みつけ、剣を奪った。奪った剣でゴブリンの首を切りつけた。


「これで1匹……ッ!」


 もう1匹のゴブリンが後ろから斬りかかってくるのを剣で受け止める。

 そこへまた矢が飛んでくる。剣を受け止めている俺は回避できず背中に矢を受ける。

 苦悶の表情を浮かべるが腕の力は緩めない。


「はあああああっ!」


 上から斬りつけるように力づくでゴブリンを弾き返す。体制を崩したゴブリンに剣を突き刺す。

 2匹目のゴブリンを光の粒子に変えた。


せめてレベルが上がってくれたら楽なのにと思う。

 だが、そんなことを考えている暇はない。こうして思考を巡らせている時にもゴブリンの追撃は行われているからだ。

 屋根の上のゴブリンは相変わらず降りてくる様子はない。高所の有利さはきちんと理解しているようだ。奥のゴブリンの群れの中にいる普通のゴブリンとは違い、ガタイが良いヤツがいる。きっとそいつがリーダー格だろう。

 手に持った棍棒を地面に叩きつけ、地面のアスファルトに罅を入れて欠片を散らす。

 そして一人の人間に部下が5匹もやられたことによる苛立ちを隠そうともせずに吼える。それは「あの人間を殺せ」という命令だったのだろう。周りにいたゴブリンがそれを合図に走り出した。

 本来なら背を向けて全速力で逃げたいところだがそうしたら屋根の上のゴブリンが矢を放つだろう。今一番危険なのは背を向けて矢を受け、足止めされたところに袋叩きにされることだ。

 それを避けるには向かってくるゴブリンたちを迎え撃たなければいけない。

 先頭を走るゴブリンの肩に手を付き、地面を思いきり蹴る。勢いあまり足が頭の位置を超え、俺の視点だと天地が逆転するとゴブリンの無防備な背中が見える。そこに体を捻って勢いをつけて首筋を斬る。

 その後ろにもう1匹のゴブリンがいたので体を捻って付いた勢いをそのまま利用して袈裟斬りで胴体を真っ二つにする。

 そこからは乱戦だ。乱戦ならば仲間を打つ可能性がある弓は使えない。それはさっきのゴブリンとの戦闘で実証済みだ。

 アドレナリンが出ているせいか身体が羽のように軽い。相変わらず矢が刺さった肩と背中はズキズキジクジク激痛がするがここでヘマをしたら死ぬぞと自分に言い聞かせて気合いで紛らわせている。


「ふーッ、あと半分か」


 いくらレベルアップしても多勢に無勢。半分ぐらいまで減らしたところでレベルの差が10とか20あればこの差も覆せるのかもしれないな、と半ば現実逃避をする。

 半分まで減らせたが無傷ではとはいかなかった。身体中が傷だらけで服に血が滲み、棍棒で殴られた左腕は骨折しているだろう。ステータスを見なくてもHPが半分、いや3分の1にまで減っていることは明白だ。

 半分も仲間がやられた事で俺への警戒心も高まり、容易に近づくことも無くなった。だが、そんな臆病になる部下たちに苛立ち、我慢できなくなったホブゴブリンはもういい、お前らは下がってろとでも言わんばかりに横柄な態度で割り込んでくる。

 まずパワー系なのは間違いないだろう。手に持った棍棒をそのまま受け止めれば間違いなく手に持っている剣は折れる。


「ボスが自らお出ましか」


 正直今の状態の俺では重すぎる相手だ。身体中から今も流れる血はHPを削り、骨折や数多の切り傷により先程より動きは鈍い。

 だが、相手はそんな俺を手負いの獲物ぐらいに思っているのだろう。大振りなモーションの振りかざしを見て俺は回避を試みる。


「ッ!」


 大振りなモーションは注意を引くため。俺はホブゴブリンに意識を持っていかれ、他のゴブリンを意識外に置いてしまった。2匹のゴブリンが俺にひっつき、動きを阻害する。そんなことをされてしまえばホブゴブリンの渾身の一撃を食らうことになる。そうなれば間違いなくのこりのHPは吹き飛ぶ。

 ━━死。

 棍棒が目の前、本当に文字通り目の前で止まった。運動エネルギーが巻き起こした衝撃波のみが伝わってくる。

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