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67.包囲

 


 扉を開けると、執事が慌てた様子で駆け寄ってきた。


「出迎えが遅れて申し訳ございません、タラゼド様。 御足労いただきありがとうございます。 さあ、主人のおります部屋まで御案内いたしましょう」


「ああ、すまない」



 ――その時、背後から声をかけられた。


「あなたが......タラゼド隊長ですか。 力強く、美しい......良いオーラですねえ」


 それは部下の声では無く、背筋を撫ぜられるような不気味な声色だった。


 振り向けば漆黒のフードを被った大きな男が立っていた。


 気配が無く、男のその様相は死神を想わせた。



「あなたは?」


「あ、あーあ! これはこれは、失礼いたしましたあ!! 私、こちらの研究員でしてね、あなたをお待ちしておりました。 名を、アルフィルクと申します」



「......は?」


 ゼルが間の抜けた声を出した。


 それはそうだろう。奴が名乗った名が本当であれば、奴は死四天魔、つまり魔王直属の一人なのだから。


「はいはいはい、バイガンさーん! この方達のお捜しの彼、連れてきて下さーい! あと、ブタ......じゃないアーゴン公爵もね!」


 二階からこちらを見ていた魔族が頷き奥へと消えた。見た目からして竜人族だろう。

 奴も気配が無かった......いつの間に。


「やはり、アーゴン公爵は魔族と」


 ベルナが言うとアルフィルクと名乗る男が答える。


「ええ、ええ! そうですよ! あなた方もそれを知っていてこちらへ来られたのでしょう? 彼を、ニール君を取り返しに!」


「......お前は、本当に死四天魔のアルフィルクなのか」


「ですです! ああ、でもまあ信じられませんよねえ......それでは少し失礼」



 ――バキュッ



 風が横を通り過ぎた。



 後方、振り向けば



 そこには首の無いゼルが立っていた。



 ――ブシュウッ



 噴水のように血が噴く、首無し。



「ぜ、ゼル......? え」



 三人の部下はそれを見て目を見開き唖然としている。



「どうです、私、強くないです? これで認めて貰えますか? え、だめ? もう一人殺りますか? ふへっ、ふひひっ」


 へらへらと体をくねらせ笑うアルフィルク。



 タラゼドは腰の剣を素早く抜き、構えた。



「死四天魔だろうが、知らん......お前は殺す」


「おおお、私の力を見て慄くかと思いましたが、戦意が全く衰えていない! 素晴らしい、流石ルビーで最も強いと言われるタラゼド隊長様だああー!」


 ――剣へと神力を込める。


「起動せよ、宝剣ヴナガーラ・ドラグーンッ!」


 タラゼドの呼びかけにより光を放ち起動する宝剣。辺りから刀身へと魔力が集束されてゆく。


 アルフィルクはその光景を眺め考察する。


「む、これは......私の魔力が、吸い取られていく? いや、私だけでは無いですね」


 そしてアルフィルクはすぐに気がついた。


 見回せばタラゼドの部下からも、そしておそらくはアーゴン邸周辺の魔力を持つもの全てから吸収している。


 魔力の強制集束。


「成程、成程。 それが代々受け継がれてきた......貴方のお父様の形見、ですか。 それで斬りつけられれば私でもタダじゃすみませんねえ」


 その言葉を聞き、タラゼドは息を呑んだ。


 何故なら、この武器が父の形見だという話は、王の間で行われた武器の認証の時に、王の前でしか口にしていなかったからだ。


 ――コイツが何故......私の身辺調査でもしたのか?だが、今の私に家族は居ない。と、すればあの時王の間に居た誰かか?


 やはり......魔族と通じている者が王の側近の中にもいるのか。

 いったいどこまで魔族に取り込まれている......この国は、実はもう魔族の手に落ちているのか?


「ふふふ、タラゼド隊長ォ? そんな目で見つめないでくださいよぅ! ふひっ」


 ――いや、待てよ。


 その時、タラゼドの心は落ち着きを取り戻す。


 ――こいつは、私達を殺す気、もしくは実験や何かに使うつもりで屋敷に入れたに違いない。でなければ、自分が魔族だと明かしはしないだろう。


 絶対に私達に負ける事はない、奴はそう思っているはずだ......だからこそ。


 この状況、今なら情報を聞き出すことも......可能か?


「お前は、死四天魔であるお前が、一体なぜここに居るんだ? 魔王の直属であるのにも関わらず、こんな人間界まできたのは......何が目的なんだ」


「え? ああ、そうですね。 まあ、端的に言えば魔王様が腑抜けてしまったと言ったところでしょうか。 いえ、実はね、私達の仕えていた魔王様は勇者に討たれ、今はその娘が魔王の地位に就いているのですよ」


 今、なんと言った?


「......な、なんだと? 魔王を勇者が、討っていた?」


「た、隊長、そんな話......私、初めて聞きましたよ」


「それは、そうだろう。 私も今初めて聞いたのだから......」


 戸惑う聖騎士とタラゼドにアルフィルクは続ける。


「あらあら、そうですか何も知らないんですねえ......って、そりゃあそうですか。 国家機密ですもんねえ、これ。 まあ、そんなことはどうでも良いのですよ! そう、現・魔王様があまりに腑抜けてましてね、人との融和がどーたらこーたらって......私ら魔界の魔族が今までどれ程の迫害を受け、荒廃した魔界へと追いやられ苦汁を舐めさせられてきたか! あの小娘はまるでそれをわかっていない!! だから!!!」


 ペラペラとひとり言のように言葉をならべるアルフィルク。

 彼は最後にこういった。


「我々、前・魔王様の遺志を継ぎし、死四天魔が人間界を統べなければと動いているのです!! ......えっと、わかりましたか?」


「そんな戯言......信じると思うか?」


「信じても信じなくてもご自由に。 我々は計画を進めるだけですので、っと......ほら、来ましたよ。 あなたの愛おしき部下、ニール君です」


 ――ジャラ


 現れたのは



 鎖に両手と体を巻かれた一人の男。黒い髪の色と、背丈でニールだと辛うじてわかるくらいで、顔は大きな二本の角が生え、最早人の物ではなくどちらかと言えば竜人族のそれだった。


「どうですかね、カッコよくなりましたよね? ニール君、ふふ」



 怒りが沸点を越える。



 瞬く間にアルフィルクとの距離を詰め、首を狙い剣を振るう。


 この剣は周囲の魔力を集め、刀身に使われる特殊な魔石によりオーラを爆発的に増幅させる力を持つ。


 いかに魔族の最上位で格が違う化物だろうと、これを受ければ死の淵へと送ることが出来るだろう。


 ――ガキーンッッ!!


 しかし、ニールがアルフィルクとの間に割って入る。


 小型のダガーにより、タラゼドの剣を受ける。が、その破壊力にダガーは吹き飛び、ニールの肩を深々と斬り裂いてしまった。


「な、なぜ......ニール!!」


 呼びかけにニールは反応しない。それどころか反撃に打って出るニール。


 俊敏な動きで残った片腕のダガーを振り、タラゼドを殺そうと攻防を繰り広げる。


「ニール、待て! 私がわからないのかっ!?」


「......」


 無言の強攻に、どうすることも出来ず攻撃を凌ぎ続けるタラゼド。


 しかし、タラゼドは思い出す。


 ニールは、家族想いだった。


 隊の皆をも家族だと言い、困っている人間がいればよく助けていた。


 沢山の人に愛されたニールは、今はもう居ない。


 目の前にあるのは、魔力に支配され、魔族に変化させられた『ニールだったモノ』だ。


「......ニールは、こんなに弱くない」


 ――だが、お前の体を傷つけてしまうことを許してくれ。


「眠れ、ニール」


 タラゼドはニールの間合いに一瞬で踏み込み、一太刀の間に脇から対角の肩へ斬り上げ、両断する。


 ――ドシャ


 倒れる元はニールだった体に、タラゼドは祈りを捧げた。


「素晴らしい!! その宝剣は持ち主の身体強化も施すのですね!! 今の彼、えーと......あれ、だれだ? あ、ああそう、ニーム? あれ、違う? まあ、いいや......そこのそれはSレート魔族にも相当する強さだったのに!! これ程簡単に殺してしまうとは!!!」


 タラゼドはじっと睨みつけ、ゆらりとアルフィルクへと一歩、また一歩と近づいていく。


「......皆、援護を頼む」


 タラゼド隊が各々に頷き、戦闘態勢へと入る。



「ふむ、さて」


 ――パチンッ


 アルフィルクが指を鳴らした。


「感動の再会も終えたところで、さて、お次はメイン! やっぱりパーティーですよね?」


 屋敷中の扉が開き、ぞろぞろと大量の魔族が入ってくる。


「......なっ」


「え、うそ......」


「100は居るぞ、た、隊長」


「こ、これは」


 現れた魔族はAレート、Bレートが殆ど。Sレートと思われるのは階段上で眺めているバイガンのみ。


「皆、御馳走が食べたくてうずうずしてますよ〜? ね、タラゼド隊長様?」



 ――これは......いや、まだ




 諦めてなるものか!!



 私も部下達も......こんな所で、まだ死ねない!!






「では、皆さん......たーんと召し上がれ」




 ――魔族達が一斉にタラゼド隊に襲いかかる。








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