49.守る ★
今夜泊まる宿を取ろうと、町を歩いている時だった。
僕は後ろから刺すような殺気に気がつく。
「――お前......レイなのか?」
聞き覚えのあるその声に、僕ははっとした。常に相手を威圧するかのような重い声。間違いなくスグレンストだとわかった。
彼は目尻をつり上げ、こちらを睨み付けていた。まるで獣が牙をむき威嚇しているような雰囲気が僕に伝わってきた。
「君は......スグレンスト......」
「やっぱりてめえか、まさか生きて......いや、それはまあいい。 ちょっと顔かせよ」
これは、きっとろくなことにならないぞ。多分彼は僕を消したいはず......仲間をダンジョンへと置き去りにした、しかもSSSランクという最高クラスの危険地帯に。
それはもはや仲間殺しと言われても仕方ない事だ。
仲間殺しは重罪......それが公に広まれば、彼らのパーティーの名は地に落ちる。それどころか、メンバー全員が厳罰に処されるだろう。
「大丈夫、僕はなにも言わない。 だからもう構わないでくれないか......頼む、争いたくない」
「はあん......おまえ、ずいぶん生意気な口を利くようになったなぁ? まあ、いいさ、それも含めしつけてやる。 昔はお前をたくさんしつけてやったっけか。 懐かしいなぁ」
スグレンストはうっとりとした表情になり続ける。
「泣きわめくお前を殴り付け、蹴りつけ、危なく殺しかけちまった事もあったっけかぁ。 けれど俺のしつけのお陰で最低限動ける白魔導師になれたんだよな......それが暫く見ない内に、こんな礼儀知らずのゴミになっちまって、俺は悲しいぜ」
しつけか......ただのオモチャ、サンドバッグのかわりだったろうが。しかしどうする、この感じでは何を言ったところで見逃してはくれないだろう。
「なあ、とにかくついてこいよ~。 時間もったいないだろ? こっちだって暇じゃねえんだ、面倒は早く終わらせようぜぇ」
その時、リアナが見かねて口を挟んだ。
「あ、あの、もうやめてください。 レイ様が困ってるじゃないですか......」
「女ァ、うるせえぞ!」
凄まじい殺気が奴隷に向かって発せられる。彼女の体が震えだした。
「わかった、もうやめてくれ......リアナ、君は少しどこかで待っていてくれないか」
「何いってんだてめぇ? その女も一緒にくるんだよ」
「......僕だけでいいだろ。 彼女は関係ない」
「口答えすんじゃねえよ、次ごちゃごちゃ言ったら女を殴り殺すぞ」
スグレンストの短気で荒い気性は嫌というほど知っている。こんな人通りの多い道端で殺しをするハズがないと決めつけるのは、かなり危険だ。
実際、とある町での事、気にくわない奴だったという理由で男性に暴行を加え投獄された事もあった。
その時は親の力で揉み消して、事なきを得たみたいだけど。
この場でもやりかねない。
「わかった。 ごめん、リアナ......何かあったら僕が守るから」
「......わ、わかり、ました」
その時、スグレンストが腹を抱え笑いだした。
「ぷっ、あっはっは!! おま、誰が誰を守るだ!? お前がその女に守られた方がまだ助かる見込みはあるんじゃねえのか? どこでそんな面白覚えたんだよ! サイッコー!! あははははは!!!」
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