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マリーはかわいそう

作者: さとう あか


マリーは、となりのクリーズ領の出身だ。

そして、今はこのベリダ領で働いている。


前に、どうしてベリダ領に来たのか聞いたことがあった。

クリーズ領でもできる仕事ではないかと思ったのだ。


するとマリーはクリーズ領ではうまく馴染めなかったと言っていた。

人見知りもしないし、愛想がいい彼女でもそういうこともるんだな、とおもった。


しかし、家族はクリーズ領にいるということらしかったので、なにか複雑な事情があったのだろうな。

私はそう思ってそれ以上は聞くことはなかった。


聞くことはなかったのだが、マリーは自分がその周辺の地域から爪弾きにされていた。

ということを言っていたのだ。

会合にも呼ばれず、地域の行事にも参加が困難だった。

そんな生活を苦に思い自分はこちらに出てきた。

ということらしい。


いや、家族大丈夫かなどいろいろ思うところがあったが、

現在進行形で仕事に遅刻したり、勤務態度もあまり真面目ではないマリーが言っているのを聞いていると考えるものがあった。


しかし、私の幼馴染みでマリーの恋人のジュンはそう思わなかったらしい。


マリーを爪弾きにするなんて!


と、怒り心頭だ。

クリーズ領での祭りにマリーは家族が参加するのにあわせて帰省するようでジュンもそれに同行するようだ。


ジュンはその機会にマリーを爪弾きにしている人たちにガツンと言ってやるぞと意気込んでいた。

いたのだがだんだん不安になってきたらしく私にも同行してほしいというようになった。


私は、まあ特に用事もないからな。

そんな軽いきもちで了承してしまった。


一応よそ者であるので私もジュンもマリーの家族とその地域の人たちに手土産を用意しどこぞの戦場に行くような気持ちで向かった。


マリーに同行して参加した祭りには意外にも歓迎された。

食事も酒もみんなと同じものを出されたし、自由参加のダンスにも参加しないかとなにかと気を使ってもらっていた。


想像していた以上に地域の人たちは優しかったし、おおらかだった。


肩透かしを食らっていたのはジュンも一緒だった。


でも、マリーたち家族は少し離れたところでなんとなくみんなに避けられているように参加していた。

それをみてやっぱり何かあるのかもしれないと思った。


酒が適度にまわって来た時だった。


「いや、マリーが連れてきたからどんなやつかと思ったらすんげえまともなやつだった。」


そう、みんなを取りまとめているであろうリーダー格の人物が言った。


「あそこの家族は本当はクリーズ領の隣領に住んでいるんだ。」


え?


マリーのお爺さんがクリーズ領で働いていて顔見知りが多いから祭りや集まりなんかがあるとこっちに顔を出すんだ。


え?どうしてわざわざこっちに来るのかだって?

住んでいたところで問題を起こしたんだ。


何をしたかったって?

何もしなかったんだよ。

何もしないのにこうした方がいい、ああした方がいい。

口だけはだした。


そして、会費も出さなかった。

会費も出さなかったのにああしろ、こうしろ。

そして行事で出される飯は食ってく。

手伝いも片付けもしない。


まあ、そりゃあみんな怒るよな。


それで顰蹙を買っちまったんだ。


でも、そういった地域の交流からも離れてしまうこともよくない。

て爺さんは考えたんだろうな。


だから、ここのクリーズ領で働いていた爺さんのツテでこっちに参加しているのさ。


けれどこっちでも飯は食って片付けはしないし手伝いもしない。

口だけだして手は出さない。


会費も爺さんが払っていたけど

その爺さんも去年死んじまって今年の会費はもちろん払われていない。


正直、どうしてこっちに参加しているのか


不満があるなら参加してもらわなくていいし、

どうして何にもしないお前らを参加させなくちゃいけないのか


ほら見てみろ。

片付けがはじまるまえにあそこの家族は帰っていくぞ

何も言わずにな。



マリーは言う。

みんな冷たいと。

家族もかわいそうだと。


たしかにマリーはかわいそうだ。

何も分かってはいないのだから。



残り物で悪いけれど持っていいけ。

そう言われてわたしはジュンの分まで抱えきれなほどのお土産をもらって宿にむかった。


イメージは町内会の会費払っていない人。

でも、子供会とか夏祭りみたいなイベントには参加して、文句ばっかり言っている人。


おじいさんはこういう地元で孤立するのはよくない。

というよりも、あまりに自分勝手に行動していることがよくない、というのと家族の今度はちゃんとするという言葉を信じてクリーズ領の方々に頼んで参加させてもらっていました。


クリーズ領の方々はマリー家族の隣領のことも耳に入っていてあまりクレームのようにおじいさんにいうのもなあという遠慮もあり、おじいさんは家族が行事などでどんな態度で参加していたかは知ることはなかったのですが、周りの人々はだんだんと距離を取るようになってゆきました。


何をするにも用意が必要です。

そして、片付けも必要です。

それは誰かの手がかかっている。

それは忘れずにいたいですね。

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