敵の傀儡
だいぶ久しぶりにこの世界に来た自分の実の婆ちゃんである、エルメと少しだけ話をしてから、『少しでも新しい情報を手に入れられると良いな』そんな事を思いながら僕は、自分の蝙蝠の様な翼で空を飛んで、皆で張った魔力防壁のある所へ、向かった。
因みに他の者は、僕の後に続く様に他の魔力防壁のある場所へと向かった。
そして、最初のボロボロになった魔力防壁のある所にたどり着いた僕は、初めて見た。魔力防壁をボロボロにした主犯を……。
ソイツは、真っ白で仮面の様な貌をしており、身体は紅い血の様な色の包帯でグルグル巻きに包まれている。それから、ソイツに脚は無く、宙を浮いている。何とも悍ましい姿だった。
でも、ソイツに会っても僕は、今までの経験のお陰か、全く驚いていない。
そして、僕がソイツを倒そうと、緋色のナイフを二本取り出して、構える。するとソイツは、僕の方を見た瞬間に逃げて言った。
因みにこの緋色のナイフは、触れただけで火傷する程の 熱を持っている、“陽石”と言う石で刃の部分が作られている。その陽石とは、その特殊な性質から、量はかなりあるのに、掘るのが大変なのだ。
______どれ位強いのかの情報は手に入れる事はできなかったけど、見た目は分かった。
そんな事を思いながら僕は、その日本の緋色のナイフを閉まってから、今僕達の拠点にしている所に向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
〜レイの家〜
「ただいま」
「おかえりないませ、レイ様」
僕が自分の家に帰ってくると、玲奈が一番最初に出迎えてくれた。まぁ、相変わらず、今まで通りの口調で、だけど。
______いつかはタメ口で話してくれると良いなぁ……。
そんな事を思いながら僕は、皆のいる居間へと向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
〜レイの家・居間〜
「ヤッホー!おかえり、レイ」
そう言ったのは僕の悪友の“リーティア”。彼女は、かなり強力な能力を持ってはいるものの、まだ未熟だからか、数回能力を使用すれば、疲れて寝てしまうのだ。
僕が彼女の事を何で悪友と呼んでいるのかと言うと、いつも面倒事ばかり持って来るからだ。
「うん。ただいま」
「そっちはどうだった?」
狭霧は言う。
「今から説明するよ」
そう言って僕は、今回の見回りで見たモノの説明を始めた。あの悍ましい姿のアイツの説明を。
そして僕が話し終わると、光司が口を開いた。
「なぁ、お前が見たそいつの事なんだが、俺もお前の説明に似た様な奴を見てんだ」
「……… え?」
「私もよ」
「オレもだ」
狭霧と叉吉は言う。
______どう言う事?僕の見たアイツはいっぱいいるって事?……もしもそうだったとして、あの一体一体が張った魔力防壁をボロボロにできる程の力を持ってたとしたら……結構マズイかもしれない。 でも、そんな力を持ってるなら、何で僕と顔を見るなり直ぐに去って行ったんだろうか......。疑問が増えるばかりだ。
僕が内心でそんな事を思っていると、エルメが口を開いた。
「……ごめん…別に隠してた訳じゃないんだけど、私、多分、今回の事件の主犯の事、知ってるかもなんだけど」
エルメのその言葉に僕を含めた管理者達は一斉に身構えた。当然だろう。今まで全員の力を合わせてやっとの事で主犯の手がかりを掴めたと言うのに、エルメは『今回が誰かを知ってるかもしれない』と言ったのだ。
「……どう言う事…?」
僕は目を細めて言う。
母さんも管理者達も怪しんでる様な表情でエルメの方を見ている。
それに対して、エルメは、
「まぁ……落ち着いて。私でも知らない部分が結構多いんだけど、知ってる限りの事は、全部教えるね」
そう言ったエルメに僕は読心術を使う準備をする。と言うのも、僕は昔から、自分で言うのも何なんだが、疑い深い部分があり、『読心術、習得しといた方が良いかな?』と思い、習得しておいたのだ。
そして、僕達はエルメのその言葉にコクリと頷いた。それから、彼女は自分の知っている限りの情報を喋り始めた。
「敵の名前は無いから私は、ソイツの事を“unknown”って呼んでる。…………それから、ここからは唯の憶測でしか無いんだけど、ソイツの能力の一つは“不知”で、種族は何らかの“神”だよ」
「どう?」
母さんは僕にそう聞いて来る。
「嘘は…………付いて無いみたいだよ」
エルメが言った事が本当であれば、今回の敵の能力は“不知”。まだ能力の詳細は分からないけど、今まで情報が全く手に入れられ無かった事も説明が付く。______でも、エルメはどこからこの情報を手に入れたんだろうか。
「ねぇ、エルメ」
「うん?どうしたの?レイ」
「どこでその情報を手に入れたの?」
僕がそう聞くと、エルメは、
「ふふ♪前に一回だけ戦った事があるのよ♪」
ウインクしながらエルメは、そう言う。
「………….いや、一回戦った事があるのなら、もっと情報、持ってる筈じゃ……」
リーティアが言う。
「戦った事があるけど、直ぐに逃げられちゃったの。だから、そんなに情報を手に入れる程戦った訳じゃ無いのよね……」
「……何と言うか。エルメらしいと言うか」
「でしょ?」
エルメはウインクをしながら言う。
「そんな顔で言う事じゃ無い……!」
______全く……エルメは……。まぁでも、これでようやく作戦を立てる事ができる。
僕達はそんな事を思いながら、今回の事件の主犯である、“unknown”を撃破する為の作戦を立てるのだった。