冥界
〜次の日〜
〜冥界〜
他の四情達と戦った次の日、僕は自分の仕事場の一つである、“冥界”に来ていた。冥界とは、前に説明した通り、亡くなった者達の命が集まる場だ。それも、悪事を働いた者の魂、その様な事を働いていない者の魂問わずに集まるのだ。
それから、この冥界はかなり広かったり、二つの部分に分かれたりしている事もあり、僕以外にもここの管理者をやっている者が実は、もう一人いるのだ。
「…………遅かったな、レイ…………」
それがこいつ。名は“霊摩”。まぁ、こいつには元から名前を持っていなかったから、僕が付けた名前なのだけども。
こいつは冥界にいないと、霊体で肉体を持っていない為に消えてしまうのだ。その為彼は、四情になる事は無い。
それからこいつは、かなり冷酷な一面がある。例えば、この冥界には番犬として“ケルベロス”が複数体いて、そいつらが偶に他の魂を飢え過ぎて喰おうとする時があるのだが、その時に三つの首の内の一つを『…………どうせ切り落としても、再生するんだろう…………?』とか言って斬り落としたりするのだ。______まぁ、再生するけど、よくやるわ……。
僕も自分に残酷な所があると言う自覚はあるけど、こいつ程じゃ無いと思う。と言うかまず『飢えさせるなよ』って話なのだ。
「ごめん、霊摩。色々あってさ」
「…………まぁ、良い。……さっさと仕事を始めよう………」
「うん」
それにこいつは、本当に喋らなすぎる。______まぁ、良いけどね。必要な事はちゃんと伝えてくれるから。
まぁ、それはさておき、この冥界の風景的な物を説明しよう。まずこの冥界は、まるで真夜中の様に暗く、周りは断崖に囲まれている。それ以外ここには何も無く、殺風景な風景がずっと続いている。______霊摩もよくずっとこの空間にいられるものだ。
それから、ここは僕達が普段住んでいる所と別の空間にある訳では無い。実は、この空間と僕達が普段住んでいる空間は、地繋ぎになっているのだ。と言っても、地繋ぎになっているからと言って、ずっと歩いていればこの空間に来れると言う訳では無い。膨大な魔力で造られた結界で区切られており、とある特別な方法を使ってでしか、他の者はここに来る事ができないのだ。だから、今までここに侵入して来た者も僕が“冥界の管理人”になってからは、一度も無い。
僕が冥界の管理人を引き継ぐ時に先代から『私の代では一人だけ侵入者がいた』とだけ聞いた事がある。______一体どうやって侵入したのだろうか……。その時の侵入者は……。
そんな事を思いながら僕と霊摩は、魂が多く溜まっている所に向かう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〜冥界・魂の部屋〜
ここは、多くの亡くなった者(動物などの霊を含む)がいる所に来た。そしてここは、僕が勝手に“魂の部屋”と呼んでいる。まぁ、別にここは部屋では無いんだけどね。
それはさておき、魂達は落ち着いてるから、特に異常はここでは起こって無い見たいだ。まぁ、数は多いけどね。それも今の時期は、地上での死人が出やすい時期だから大丈夫なのだ。
そんな感じで僕達が魂の様子を見ていると、ここの守護を任せている一匹のケルベロスがこっちに歩いて来る。______どうしたんだろう。
そんな事を思っていると、そのケルベロスは僕にその三つの頭を僕にすり付けて来る。______あぁ…..お腹が空いたのか。
僕は懐からケルベロス達の大好物である“甘い物”を三つ程取り出して、このケルベロスに与える。するとこのケルベロスは、僕に三つの頭を擦り付けるのを止めてその甘い物に齧り付いた。
そして、その様子を見ていた霊摩は口を開いた。
「…………お前は……甘いな…………」
「そう?」
僕がそう言うと、霊摩はコクリと頷き、再び口を開いた。
「…………お前は、甘い…...」
別に僕は甘くなんか無い。そう僕は自分的に思っている。今だってケルベロスに優しくしてるのは、仮にも僕にとっての仲間の一人だからだ。僕は、敵には全く優しく接するつもりは無い。まぁ、よく『甘いな』と言われてるけども。
そして、僕がさっき甘い物を与えたケルベロスは、それを食べ終わったのか、再び僕にその三つの頭を擦り付けて来る。______これ、地味に痛いんだよなぁ。
僕が真ん中の頭を撫でてみれば、もう二つの頭が求めて来たから、他の二つの頭も撫でてから僕達は、ケルベロスを置いてそこを離れた。
因みに、ケルベロス達は僕には懐いてくれているけど、霊摩は全く懐いて無い。まぁ、それは当然と言える。だって彼は、さっきも言ったけど、かなり冷酷で怖い所があるからだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〜冥界・中心部〜
魂の部屋を離れた僕と霊摩は、他の所に何かしらの異常が起こって無いかを探す為に、岩でできた様な階段を駆け下りて、中心部へと向かう。
ここには、霊はいるものの、さっきの“魂の部屋”と比べると、明らかに数が少ない。と言うのも、ここは他の所よりも、もっと濃くて禍々しい魔力に覆われているから、あまり居心地が良く無いからだ。
どの位いづらいかと言うと、他の四情の者達でも『ここには長い間いたく無い』と言う程である。それにここは僕ですら『あんまりいたく無い』と思ってしまうのだ。地獄の番犬である、ケルベロス達ですら、ここには滅多にここには来ない。
「良かった。ここも全然異常は起こって無いみたいだね」
「…………あぁ、そうだな…………」
霊摩は、その場であたりを見渡しながら言う。
普段この空間での仕事はこの様な感じで終わる。でももし、この空間で何かしらの異常が起こった場合は、それを対処に追われたりする。だが、それは滅多に起こる事では無い。一年に一回起こるか起こらないか位なのだ。
そしてその日は、これで仕事が終わり、僕はグリムのいる、自分の家に戻った。