98話 体育祭練習⑤
「さぁ、4種目目は玉入れですよ」
「玉入れ?」
あれよね、上空にあるカゴに向かって玉を投げ入れるやつよね。
「特殊な玉を使います。みなさんの魔力に反応して色が変わるようにしておきました。またパーティでは同じ色になるようにしています。最終的に自分たちのパーティの色の玉が多いチームが勝ちです」
なるほどね。この攻略法はおそらく魔法にある。水魔法で玉を包んで他のパーティが取れなくする妨害策、風魔法で玉を運んで一気にカゴに入れる策、色々な選択肢があるわね。
「ちなみにカゴは一つ。そして魔力で空中に浮かび、不規則に動くので入れるのは難しいですよ。さてルールはここまで。玉を持ってみてください。パーティの色をよく確認しておくこと」
先生たちがグラウンドに不規則に玉を転がしていく。私が一個玉を持ってみると白い玉が黒くなった。ユーシャやシルディ、ヒラにアルチャルが持っても色は黒い。黒色が私たちのパーティの色ってことね。……魔王の娘の私がいるから黒色なんじゃないでしょうね。なんて変なことまで考えてしまう。
「よし、とりあえず投げ入れてみましょうか」
「うん! とりゃあ!」
ユーシャが景気付けに一発放り込む。見事に入るか……ってところでカゴが急停止。どこかへふわふわと飛んで行ってしまった。
「本当に不規則ね。これじゃあいくら投げても入らないじゃない」
「もしかしたら私の出番かもしれません」
そう言って前に出てきたのはアルチャル。
「というと?」
「こうするです! えいっ!」
なんとアルチャルは玉を矢の先端に刺し、そのまま弓で射ってしまった。そんな無茶な……と思ったけど意外や意外。そのままカゴに上手く入れてしまった。
「う、嘘……」
「ふふん! これぞ私の弓技です!」
誇らしげなアルチャル。ということは……
「ならアタシだって負けてられねぇな」
当然のようにシルディに火がついた。黒い玉を手に持って狙いを定める。
「おりゃあ!!!」
全力投球! かなり高くまで上がっているカゴにすっぽりと入れてしまった。
「よっしゃ!」
「やるじゃないシルディ、得意なの?」
「まぁな。ゲーセンとかで投げ物ゲーはよくやるし」
ふむふむ、これは意外と私たち向きの種目かもしれないわね。
「えっと……ごめんなさい。私はあそこまで届けられそうにないです……」
「うん。私も無理かな」
申し訳なさそうに頭を下げるヒラとユーシャ。向き・不向きは当然あるし、そこを補い合うのがパーティだから全然いいんだけどね。それに私だってこの競技では活躍できる気がしないし。
「カゴに入れるのはアルチャルとシルディが。私とユーシャとヒラは玉を拾って2人に渡す。これでいきましょうか」
とりあえず基本方針は決まったわね。今の練習段階では玉拾いの妨害魔法を使ってくるパーティはいない。でも本番では間違いなくやってくる。私だったら粘度の高い水を魔法で出して水浸しにして、玉を取れなくしたり重くしたりする。同じことを考えている人は何人もいると思った方がいいわね。
それと……玉を拾うだけじゃなく、入れる方にも策を練ってくるでしょう。そうなった時、私にできることは……必勝の方法を考えること。どの種目にも必勝法が絶対にあるはず。なんとなくだけど。それを見つけることが、今できることね。
私はだんだんとカラフルになっていくカゴを見つめていた。




