97話 夏服と膝枕
「うへぇ……もうクタクタよ」
綱引き練習を終えて帰宅すると流石にここ3日の疲れがドッと襲いかかってきた。まだ若いとはいえ、疲れるものは疲れる。
みんなには見せられないようなダラけた姿勢で寝転んでいた。
「お疲れ様でした、姫様」
「本当よ……もう」
あの学校、かなり無茶してるわよね。まぁ将来的に戦場に出て勇者と言われる存在の排出を目指しているんだからそれは当然か。人間としては伝説の勇者の後継者が現れてくれることを望んでいるんだろうし。
ただ……どうしてアルティス学園長は私の存在を黙っているのかしら。これでも一応特別実習後の登校は少しビクビクしながらだったんだけど……。
読めない。私がいくら考えてもアルティス学園長の考えていることだけはわからない。
考えられる可能性としては……アルティス学園長も魔界側の人間であること。でもそうしたらアルチャルとの関係性が複雑になってくるのよね。個人的に裏切ったという可能性もあるけど……。
強さも内面も含めて未だ底が知れないアルティス学園長。これからも警戒する必要がありそうね。
それはそれとして……
「姫様、おやすみになられた方がよろしいのではないでしょうか」
最近暖かくなってきたからかアスセナがメイド服を軽装に変えた。夏用メイド服ってやつね。それがちょっと……エッチなのよ。
アスセナが何か動作をするたびにわき、胸、太ももがチラリズムする。なんかお金取れそうね、アスセナのそれ。
「アスセナが膝枕してくれるなら休むわ」
エッチだなぁと思いつつ、それは口に出さない。
露出面積は広ければ広いほどいいって、かの魔王四天王の一角、ラーヴァナも言ってた。あのエロじじいの言葉を参考にするのはちょっと癪だけど、今ならその言葉の真意を理解することができる気がする。
「え、ええっ……もう、仕方ないですね」
仕方ないと言いつつそこそこノリノリで準備をするアスセナ。可愛いかよ。
「はいどうぞ、姫様」
スカートをポンポンと叩いて私を誘導する。花に吸い寄せられる虫のように私はアスセナの太ももにダイブした。
「ひ、姫様!? なぜうつ伏せに?」
「スゥー」
「息を吸わないでくださいまし!」
アスセナの匂い……なんだろう、この甘い匂いは。私と同じ洗剤を使っているはずなのに全然違うわよね。自分の匂いは知らないけど。もしかしたら同じ匂いなのかしら?
「なんだか落ち着くのよね、これ」
「そんなところで落ち着かないでください!」
う〜ん、改めて見ても太ももとスカートの境目とか、特にエッチよね。なんかこう……お腹の奥からふつふつと湧き出るものがあるわ。親友のアスセナに対してエッチとか思っちゃいけないのかも知れないけど……流石にエッチすぎる。しかもそれでメイドってあなた……もう!
「アスセナ、自分の身は大事にするのよ?」
「な、何をおっしゃっているのですか?」
唐突な身を大事にしよう発言はアスセナを混乱させてしまったらしい。こんなに女の子らしくて、可愛らしくて、あざとい子だったら言い寄ってくる人も多そうなものだけど。
「アスセナは恋人とかいたことないの?」
「い、いませんよそんなの!」
顔を赤くして強く否定するアスセナ。なんでそんなに力入ってるのかしら。
「ひ、姫様はどうなんですか? 恋人、いられたことがあるのですか?」
「いやいないわよ」
少なくとも今はまだね。いつかユーシャがそのポジションに……えへへ。
「そ、そうですか」
なんだか少し安心したような表情を浮かべるアスセナ。この子のことは時々よくわからないわね。
「じゃあアスセナ枕で少し寝させてもらおうかしらね。失礼しまーす」
「ならせめて仰向けになってからにしてくださいぃ!!」
アスセナの魂の叫びも虚しく、私はそのまま眠りに落ちた。




