96話 体育祭練習④
「というわけで3種目目は綱引きです」
どういうわけかはちょっとよく分からないけど、綱引きか……純粋な力に加えて、魔法でどうにかするのが今までのパターンから推測できるわよね。
「ようやくアタシが活躍できそうな種目が来たな」
ここまで活躍できていないシルディがメラメラと闘志を燃やしているのを感じた。
「綱引きの相手にはマジックパペットを使います。そうすればパーティ間での人数差とかを気にしなくてもいいですよね? 4人パーティには4体のパペットを。5人パーティには5体のパペットを相手してもらいます」
マジックパペット……人形に魔力を入れ込んで自立するようになった生命体。戦闘員としても優秀だけど、囮役だとか色々な用途で活躍してくれる。
「それではパーティ毎にパペットをお貸しするので取りに来て下さ〜い」
先生の呼びかけに応じて続々とマジックパペットを受け取りに行く。
私たちも5体のマジックパペットと綱を受け取ってグラウンドの隅へ移動することに。
「さぁ! やるわよ!」
「「「「おー!」」」」
まずはやってみないことには始まらないわよね。マジックパペットのスイッチを入れて、準備完了!
スイッチの入ったマジックパペット達は一斉に立ち上がり、綱を持って整列しだした。
「みんな、並びましょうか」
並び方はどこかで聞いたことのある、背の高い順から。そして最後には1番ガタイのいい人を並べること。私たちで1番力があってガタイが良さそうなのは……まぁシルディよね。
「並び順はこうね。私、アルチャル、ユーシャ、ヒラ、シルディ。これでいくわよ」
「了解しました。リリー様とユーシャ様に挟まれ、光栄の極みです」
なんか顔がゆるゆるのアルチャル。大丈夫かしらこの子……。
「綱引き、楽しみだね!」
「力仕事は苦手です〜……」
たしかにヒラはこういう種目は苦手そう。ユーシャは何に対しても前向きね。すごいわ本当。
「アタシが1番後ろでいいのか?」
「たぶん力は1番強いでしょ? 筋トレもしているみたいだし」
「な、なぜそれを!?」
「見ればわかるわよ。努力の結晶があるじゃない。ね?」
シルディの頭を撫でて元気をつけてあげる。ここ二日間活躍できていないから落ち込んでいるかなーって思ったからなでなでしてあげたんだけど……嫌がるかしらね?
「お、おぉ……」
シルディは頬を染めて照れてしまった。何よ、結構可愛いところあるじゃない。
「さぁやるわよ! アルチャルは自分に『ブースト』を。ヒラは……シルディにね」
「了解しました!」 「は、はい!」
よし、まず思いつくことはやってみたわよ。
「じゃあいくわよ。せーーのっ!」
全員で綱を持って引っ張る。するとマジックパペット達は応戦してくる。ぐっ……結構強い!
「うおぉぉぉ! 気合い入れろよみんな!」
「言われなくても!」
『ブースト』がかかっていて多少余裕がある2人がみんなを鼓舞してくれる。これは確かに気合いを入れないと難しいわね……。
さて、この綱引き……何か私たちの見えていない正解があるはず。それを見つけないと1番にはなれない。
綱を引く……その力の入れ方じゃない! そうか! 相手の妨害を禁止するなんて言われてない。だったら……
「みんな! 私のカウントが終わったら手を離すのよ!」
「えっ? え?」
みんな困惑しているようだけどやるしかない!
「3・2・1……離して! 『サンダー!』」
みんなが手を離したことを確認して雷の魔法を綱に当てる。そのまま綱を伝って雷はマジックパペット達に襲いかかった。
狙い通り5体とも魔力のオーバーヒートを起こして地面に倒れる。その隙に……えいっ!
「綱、取ったわよ!」
「おお〜!」
なんか……見えてきた気がするわ! この体育祭の攻略法が!




