92話 体育祭練習①
グラウンドには全パーティ分の鉄球が用意されている。大きさは私の身長程度。160センチメートルにギリギリ届かないくらいね。これを動かすとなると結構しんどいんじゃないかしら。
「あ、そうそう。言い忘れていましたが……」
先生が私たちのパーティの方へ歩いてくる。なんとなく言うことはわかるわよ。
「ユーシャさん、セイクリッド系魔法はこの体育祭では使用禁止です。よろしくお願いしますね」
「は、はい……」
やっぱりね。この鉄球くらいならユーシャのセイクリッド系魔法で簡単に吹っ飛ばせると思ったもの。禁止になるだろうなと思っていたけど案の定だったか。
「よーし、とりあえずみんなで力を合わせて転がしてみましょうか。風の魔法……もしくは水の魔法がいいと思うの。得意な人、いる?」
私の質問に手を挙げたのはユーシャだけ。
「あんまり風と水の魔法は自信ねぇかな」
「私は攻撃魔法全般がダメで……」
「炎魔法なら得意なのですが……」
なるほどね。みんなの特性はなんとなくわかったわ。とりあえずヒラは魔法を使う人の支援役で決定として、アルチャルとシルディはどうしましょう。
「それじゃあ今から風魔法のコツを教えるから真似してみて。まずは見ること。『ウィンド!』」
右手を薙ぎ払うように斜め上に動かして風を起こす。軽くうったから当然鉄球はビクともしなかった。
「ま、まぁそれくらいなら……『ウィンド!』」
シルディも同じように手を振って風を起こ……そうとして起きなかった。
「ぷっ。情けないですねシルディ。見ていなさい」
アルチャルがシルディのことを小馬鹿にしつつ前に出てくる。
「『ウィンド!』」
勢いよく振った手から風が発生する。……そよ風レベルだけど。
「ぷっ。なんだよアルチャルー! お前も全然ダメじゃないか」
「なっ! シルディよりマシでしょうに!」
大笑いするシルディとキレるアルチャル。風魔法って結構繊細だから、大味な魔法が得意なシルディやアルチャルには難しいかもしれないわね。
……ん? 繊細? ならちょうどいい子がいるじゃない! このパーティ1繊細な子が!
「ねぇヒラ、風魔法、やってみない?」
「え、えっ!? 私……ですか?」
困惑したように私に聞き返してくるヒラ。よほど驚きだったのか目をまん丸にしている。
「うん。向いていると思うんだけど、試しにやってみない?」
そう言うとヒラは少しの間悩むような顔をして……
「わ、わかりました。やってみます」
ちょっとだけ嬉しそうな顔をしてそう答えた。
「力は入れすぎないように。繊細な魔力操作が基本よ。じゃあ……やってみて」
「は、はい。……『ウィンド!』」
ヒラがえいっ! と手を振った先に強風が吹いていく。うんうん、思った通りね。ヒラは風魔法の適性がありそうだわ!
「ま、マジかよ……」
「ヒラが……嘘でしょう?」
「失礼ね。ヒラはやればできる子よ」
ヒラを抱き寄せてよしよししてあげる。妹っぽいヒラはこっそり私のお気に入りだったりする。
「これで攻撃は決まったわね。私とヒラとユーシャで攻撃、アルチャルにブーストをかけてもらって、シルディは……あれ? 何するの?」
「お、おい!」
「ぷっ。何もできないの〜? シルディ。かわいそー!」
煽るアルチャルとキレるシルディ。本当は仲良いんじゃないの? この2人。
「シルディ、『ブースト』は使える?」
「……使えねぇ」
「えっと……水魔法は?」
「無理だな」
……あれ、やることない?
「だ、大丈夫だよシルディ! 他の競技で輝けるって!」
「本当? アタシいらない子じゃない?」
珍しく弱気になるシルディ。なんかちょっとかわいそうね。……ま、まぁ気を取り直して練習よ! シルディは今回は見守り役ってことで!




