9話 パーティ
もしも……魔王の娘である私と、伝説の勇者の娘であるユーシャが戦ったら……どうなるんだろう。いや、それよりも、私が魔王の娘だと知ったら、ユーシャはどんな反応をするんだろう。親の仇の娘……だもんね。
「いえーい! リリー、見てた?」
「えっ! あ、うん。見てたよ。すごかったね」
「えへへ〜、ありがと♪」
「……」
なんて答えればいいんだろ。実習まで普通に会話できていたのに。………あぁもう! 暗いことを考えるのやめ!
「ユーシャ!」
「は、はい!」
突然大声で名前を呼んだからか、ユーシャはびっくりして敬語で答えた。
「私……負けない! ユーシャよりすごい勇者パーティの一員になる!」
「……うん。でも私は嫌だなぁ」
「え、ええっ!?」
これを断れるとは思ってなかった……。
「だって……私、リリーと一緒に勇者パーティになりたい!」
「ユーシャ……」
そんなこと、考えたことも無かったけど確かに……。私たちでなればいいんだ。魔王軍も倒せる、勇者パーティに!
「はいはい。イチャイチャするのはいいけど次2組が実習室使うから移動移動!」
「ひゃ! 先生! イチャイチャだなんて……!」
クラスメイト達からクスクス笑われている。側から見たらイチャイチャしてたの? 私たち……。
恥ずかしくなってそそくさと実習室を出る。うぅ……これからどんな顔して教室にいればいいのか……。
「リリーどうしたの? 顔真っ赤だよ?」
「な、なんでもないわよ!」
あぁ……もう! なんで素直になれないの私! 今結構な大チャンスを迎えていたのに!
……魔王の娘、だからかな。……あれ? でも私もう裏切るつもりだし……別にいいのでは? だってあんな酷い魔王がいる魔界より、楽しくランランできる人間界のが楽しいに決まってる。アスセナも一緒に裏切らせればパーフェクト! なんだ! 悩むことないじゃない!
「……ユーシャ」
「ん? どしたの?」
歩くユーシャの腕を掴んで止める。心臓がドキドキするのがわかる……言え! 言うんだ、私!
「えっとね……さっきは言えなかったけど、私も……ユーシャと同じ勇者パーティになりたい!」
言えた……言えた! 心臓ははち切れるんじゃないかってくらいうるさく鼓動しているけど!
「うん! じゃあ一緒に頑張ろうね、リリー♪」
「おいおい、何お前たちだけで盛り上がってるんだよ」
「シルディ!」
プチ怒り顔のシルディと、あたふたした様子のヒラ。見た感じシルディに強制的に連れてこられたっぽい。
「アタシだってお前らと同じ勇者パーティになりたいぞ。今のままじゃ……足手まといかもしれないけど」
「私も……なれるならなりたいです! いや、できればでいいし荷物持ちとか、なんなら奴隷とかでもいいので!」
だんだん酷くなってるわよヒラ……。
「あはは。そんなことしないって。リリー、シルディ、ヒラちゃん。気が早いかもしれないけどさ、私たちで勇者パーティになって、この戦いを終わらせよ?」
「えぇ。協力する。何があっても、ユーシャの味方よ」
「あぁ! そのために……もっともっと強くなってやる!」
「わ、私も……みなさんのお役に立てるように、頑張ります!」
仮組みしたパーティは、そのまま卒業までパーティを組むこともある。って先生が言ってたけど、きっと私たちは卒業後も一緒。
「よーっし、ならパーティの名前はユーシャパーティだね!」
「あぁ!? シルディパーティだろ!」
「皆パーティwithヒラとか、ど、どうでしょう……?」
……この絶妙なバラバラ具合は少し心配だけど。でも、それが楽しいのかもね。
「じゃあリリーパーティでいいんじゃないかしら?」
私も少し、楽しませてもらうから♡




