86話 吸収よ
「ただい……」
「姫様ぁーー!!!!」
「うごぉッ!!?」
家に帰ってドアを開けたら、いきなり白い物体が突撃してきた。
「ア、アスセナ!?」
頭から突っ込んできたのはもちろんアスセナ。目がウルウルしていて今にも泣きそうだった。
「姫様……私寂しかったです……」
「そ、そう。ごめんね」
学校行事だから仕方ない……と言うと「学校と私、どっちが大事なの!?」となりかねない。いやアスセナはそんなことを言う子ではないんだけど。
だからとりあえず頭を撫でてあげることにした。アスセナに突撃されて尻餅をついてわかったけど相当疲れたわね。『そこにある悪夢』って疲れるのよねぇ。生命力をそのまま吸われている感じ。
「ん……疲れたから部屋に入っていい?」
「あ、はい! ごめんなさい……こんな玄関前で……」
我にかえって恥ずかしくなったのか顔を赤らめるアスセナ。うん、可愛い!
たった2泊3日の特別実習だったけどアスセナの顔が懐かしく感じるわね。
「あ〜……本当に疲れたぁ」
「あの、姫様。遠くの方で姫様の魔力の暴発を感じたのですが大丈夫ですか?」
そっか、アスセナには私の『そこにある悪夢』の魔力が分かるのよね。あれを使うと言うことはつまり、相当なピンチだってことだから心配してくれたのか。
「大丈夫よ。先生と模擬戦をした時にちょっと使っただけだから」
そう言うとホッとした表情を浮かべたアスセナ。それにしても、あそこまで離れた場所から私の魔力を感じ取れるなんて流石ね。
「良かったです〜。もう飛び出して行こうか悩みましたよ」
「ふふ、来ちゃダメよ」
まぁ私があの力を使った時は決め切る時だから助太刀なんていらないんだけどね。アレで倒せないのなら誰が来たって終わりよ。
「あー……魔力がすっからかんだわ〜」
「あっ、それなら私の魔力、吸いますか?」
そっか、アスセナから魔力をもらうって手もあったわね。でも家事までしてくれているのにその上魔力までもらうのはちょっと気がひける……
「いや、いいわよ! 何もそこまでしなくても……」
「でも姫様、顔色が少し悪いですよ? 限界まで魔力を使われたのではないのですか?」
「うっ……ま、まぁね」
確かに今の私は限界ギリギリ。アルティス学園長の前では強気に演じて引き分けにしたけど、あのまま戦っていたら間違いなく私が負けていた。
「でも、寝ればある程度は回復するわよ?」
「それだとダメです! 魔力回復が先んじて体力回復が遅れちゃいます! 魔力は私からいくらでも吸ってください!」
「何でそんなに必死なの!? ま、まぁそこまで言うならありがたく頂くけど……」
魔力の吸収方法は主に2つある。まずは血を吸って魔力をもらう方法。でもこれは吸血種にしかできない方法。私は吸血種ではないからその方法では魔力を吸収できない。
もう1つは肌を重ねること。血よりは吸収率は悪いけどそこそこ程度には魔力を吸収できる。ただこの方法……お互い裸にならないといけないのよね。
「ひ、姫様……どうぞお布団の方へ……」
「あ、うん」
顔を真っ赤にしたアスセナに手を取られてお布団へ向かう。なんか……エッチなお店みたいよね。よく知らないけど。
布団の中に入って掛け布団をかける。もぞもぞと動いてアスセナが裸になった。私も服を脱いで準備完了。親友相手にこれは恥ずかしいけど、誰かに頼むとしたらアスセナにしか出来ないことよね。ユーシャともしコレをしたら……間違いなく我慢できないわ。
「さぁ姫様、どうぞ」
「い、いただきます」
裸のアスセナをぎゅっと抱き寄せて魔力を探る。あぁ、あったあった。魔力の流れを私の体の方向へ向けさせて魔力をいただく。あったかい……。アスセナの性格がそのまま出たような魔力ね。
ちょっと気になるのはアスセナの鼻息が荒いこと。吸いすぎたかな? いやでもこれっぽっちで魔力が減るほどの子じゃないし……。
とりあえず私は魔力の吸収を続けた。地道な作業なので1時間はかかる。吸収し終えた後なぜかアスセナが鼻血を出していたのは、きっと永遠の謎になりそうね。




