82話 本当の戦い③
「なるほどなるほど、狙い目や盾の連携は悪くありません。が、個人の能力はさほど高くはないですね」
私たちを冷静に分析するアルティス学園長。その周辺にはまだまだ大量の黒い球体がふわふわと浮かんでいる。あのどれか1つでも私たちに向けられたらたちまち全滅だ。
「申し訳……ありません」
アルチャルが弓を落としがっくりとうなだれる。もちろんアルチャルに非はまったくない。アルティス学園長があまりにも強すぎるだけだ。あれで本当に私たちと同い年なの?
「そうですね、アルチャル。あなたがもう少し強ければ私を射抜けたかもしれません。具体的にはあと50倍ほど強ければ、ですね」
50倍……確かにそれくらい私たちとアルティス学園長の力の差は離れているように感じる。圧倒的強者のオーラを放ち、闇の球体を周りに侍らせる様はまさに魔の王、魔王のようだった。
私はその魔王の娘。"あの力"さえ使えばこの人と勝負になるかもしれないけど……みんなの前でそれを使うわけにはいかない。学園長の目の前でならなおさら。退学どころか、下手すれば殺される。
「さぁ、仕上げです」
「えっ!?」
目の前からアルティス学園長が消えた!?
「まず2人、えい」
声がしたのは……私より後ろ! ヒラ、アルチャル!
振り返るともうすでにヒラとアルチャルは倒れていた。
「ヒラ! アルチャル!」
「お次はこちらです」
再び後ろからアルティス学園長の声がした。あまりにも速すぎる。目で追うことすらできない。
恐る恐る振り返ると今度はシルディとユーシャが地に伏していた。残るは私、ただ1人。
「さて、駒を失いました。あなたはどうしますか? リーダーさん」
「……訂正があります。駒じゃなくて、仲間です」
私にはどうしてもそこだけは許せなかった。闘志も湧いてくる。でもこの人には絶対に勝てない。少なくとも、今のままでは。
冷静になれ、私。ここで負けるのは仕方がない。もう無理だと諦めるのも大事なこと。ここで怒りに任せて行動したら後でどんな報いを受けるか分かったものじゃない。
「そうですね……諦めよう、もう無理だ。でしょうか?」
「……心、読まないでもらえますか?」
この人はよくわからない。本当に心が読めてしまうんじゃないかと思うほど不思議な感覚を覚える。
「さて、皆さんに眠ってもらったのは理由があります。あなたと少しお話がしたかったんですよ。リリーさん?」
「私と?」
そういえばランキング戦の閉会式でも何か声をかけられたっけ。
「えぇ。ランキング戦の優勝パーティの司令塔。あなたがいなければこのパーティは成り立たないでしょう」
「……そんなことない。買いかぶりすぎです。シルディもヒラもユーシャもアルチャルも、私がいなくたって立派に戦えます」
なんなら私が一番いらないパーツかもしれない。ユーシャやアルチャルだって指示を出すポジションは向いているから。
「そうでしょうか? あなたは自分のパーティを信じているのですね」
「当然です。私は私たちを……誇りに思います」
そういうとアルティス学園長は少し表情が和らいだ気がする。相変わらず何を考えているのかはわからないけど。
「……アルチャルと双子なんですか?」
「はい。出来の悪い双子の妹を持つと苦労します」
そこから嘘は感じ取られない。つまり純粋にアルチャルを出来の悪い子だと見ているんだ。アルチャルは贔屓目なしに学年でもトップの実力者。それを出来が悪いだなんて……。
「私のこと、気になるようですね」
「そ、それはまぁ……」
なぜ同い年で学園長をやっているのか、なぜアルチャルとそこまで差が生まれているのか、気になる点をあげればキリがない。
「私に勝ったらなんでも教えてあげましょう」
「そ、それは無理でしょう……いくらなんでも」
アルティス学園長に勝てるわけがない。そんなのは一目瞭然だ。
「そうでしょうか。あなたが隠しているもの、全て出せばそうとも言い切れないのでは?」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。この人は……まさか私のことを知っている!?




