77話 特別実習⑧
「ユーシャ……」
声をかけたはいいものの、その後にどんな言葉をかけてあげればいいのかはわからなかった。
ユーシャとは思えないほどに落ち込んでいるし、いつもの覇気も笑顔もない。ただただ落ち込む少女がそこにいるだけだ。
「……ゴメンね、リリー」
「……どうして謝るのよ」
ユーシャはよく戦ってくれた。結果的にピンチを招いたことは間違いないけれどあの勇気を咎めることは誰にだってできない。むしろユーシャの勇気ある行動は讃えられるべきこと。私は[モンスターベアー]の特性を知っていたから突っ込んじゃダメと分かっていたけど、普通の人間なら知る由もない。それでもなお戦おうとした、みんなを休ませてあげようとしたユーシャは立派な勇者だった。
「私が足を引っ張っちゃったから……」
「そんなことないわよ。あそこで突っ込める勇気を持っていることは凄いことだわ」
たぶん、ありとあらゆる励ましの言葉をかけてもユーシャには響かないだろう。それくらいユーシャの顔は沈んでいるし、目には生気がこもっていない。
どうすればいいんだろう……どうすれば今のユーシャを救い出せるんだろう。私が……私が何とかしないと!
「あの……リリーさん、交代の時間です」
「え、嘘!? もうそんな時間!?」
時計を確認したら確かにもう2時間経っていた。気まずい空間に時を忘れて過ごしてしまっていたのね。
「……じゃあよろしくね、ヒラ」
「は、はい!」
1度決めたルールをいきなり改変すると混乱が生じる。ユーシャのことは何とかしたいけどとりあえず今日はそっとしておいてあげた方がいいかもしれないわね。ヒラ、ごめんね……気まずいまま任せちゃって。
とりあえずテントに入って寝袋の中へ。あったかい……なんだか気まずい空間からこんな落ち着く空間に来たから温度差がすごいわね。なんだか安心して……ポカポカして……寝ちゃうわ……。
……はっ! いつのまにか深く寝ちゃっていたのね……。
横を見るとユーシャも寝てる……。寝顔可愛いかよ。ってそうじゃなかった! とりあえず1日目は生き延びられたようね。
「おはよー」
見張りをしていたのはアルチャルとシルディ。早朝とはいえ数時間見張りをしているから2人の目は冴えていた。
「おはよ。よく寝れたか?」
「以外とね。2人は?」
「私はどこでも寝れるタイプだからな」
「私も、よく眠れました!」
2人の心配はいらなさそうね。喧嘩しないかはハラハラしたけど、なんとか仲良く見張りできていたようだし。
「じゃあ朝ごはんの準備を……」
いや、私は料理苦手だから誰かに任せよう。うんうん、こういうのは分業の時代よね。私だけに任せられるのは納得がいかないわ。主に料理の面は。
「「んん……」」
ユーシャとヒラものっそりとテントから出てきた。こっちは眠そうね。……ん? ヒラって結構その……あるのね。初めて知ったというか着痩せするタイプだったのか……ゆるいパジャマだとチラッと見えたけど相当のものだったわよ?
意外にも手先が器用なシルディが果物の皮を手際よく剥いて出してくれた。水とフルーツって、なんかモデルさんみたいな朝ごはんね。
「はい、手を合わしていただきます」
「「「「いただきます」」」」
……なんか悪魔小学校をふと思い出したわね。給食の時みんなでこうしていた気がする。山にいると童心に帰ってしまうのかしら。
ユーシャの顔は……やっぱり元気がない感じ。このままじゃあと1日半を生き残れない。さぁ、ここは私の腕の見せどころよ! 悩めるパーティメンバーの心を癒してあげるんだから!




