76話 特別実習⑦
「剣がダメで、魔法も効かないならどうすれば……」
……ん? 何を焦っているんだろう。普段のユーシャだったら私と力を合わせて戦うことを選ぶはず。そして力を合わせて戦うことは[モンスターベアー]の1番いい対処法。片方が魔法を撃って爪で防がせる、その間にもう片方が魔法で仕留めるってのが正攻法なんだけど……気がつかないかしら?
「あのユーシャ……」
「り、リリー! 私がやっぱり剣で戦うからその隙に魔法で倒しちゃって! おりゃあ!」
「ちょっとユーシャ!?」
[モンスターベアー]の爪さばきは生半可な力ではどうしようもない。それほどまでにあの爪はストロングポイントなのにユーシャは無謀にも突っ込んでいった。くっ、こうなったら!
「『ファイアー!』」
先にこっちから攻撃! そうすればあの爪をなんとかできるでしょう?
「ガルゥア!」
予想通り[モンスターベアー]は先に飛んできた私の魔法に対処してユーシャへの注意が疎かになった。
「やぁぁ!」
「グガァッ!」
ユーシャの輝く剣が[モンスターベアー]の左腕を切り裂く。なんとか[モンスターベアー]の初撃は防げたけど2発目はユーシャ次第になってしまう。避けて、ユーシャ!
当然怒り狂った[モンスターベア]は近くにいたユーシャに向かって爪を振るう。
「くっ、ああっ!」
「ユーシャ!」
避けようとしたユーシャだったけど[モンスターベアー]の爪にかかってしまった。ユーシャの赤い血が闇夜に舞う。
これはまずい。[モンスターベアー]は出血させた相手からどんどん狙っていく。まるでサメみたいな性質を持つ。
「アルチャル! アルチャル起きて!」
私はテントに急いで入ってアルチャルを呼び出した。大声で起こしたから当然みんな目を覚ます。
「り、リリー様?」
「ユーシャが危ないの! 力を貸して!」
「は、はい!」
まだ寝ぼけた様子だけどここはアルチャルがいないと無理だ。私の魔法では爪にかき消されるけどアルチャルのあのランキング戦で見せた攻撃ならいけるはず!
「アルチャル、お願い!」
もう[モンスターベアー]の爪がユーシャに伸びようとしている。あれを直撃したら重傷は間違いない。下手したら肉が抉れることだってある。
「『バーニング』『ブースト』せやぁ!」
炎の中級魔法、『バーニング』と魔法を強化する魔法、『ブースト』を掛け合わせて矢に纏わせるアルチャルの必殺技。ランキング戦決勝でも私たちを苦しめたあの技が今、ユーシャを助けるために使われていることに少し感激した。
爆炎を纏った矢は[モンスターベアー]を貫いた! ユーシャには……よかった、ぎりぎり爪は届いていなかったわね。
「ユーシャ!」
ユーシャは全く動かない。ど、どうしたのかしら……まさか骨折でもしちゃったのかな……。
「ユーシャ、大丈夫?」
「あ……リリー……」
ユーシャの左肩は真っ赤に染まっていた。結構深くまで[モンスターベアー]の爪が入っちゃったのね。
「ヒラ、任せてもいい?」
「はい! 『リカバリー!』」
ヒラがユーシャの左肩に手を当てて魔法をかけてあげる。ヒラの回復魔法は優秀だからたぶんこれで大丈夫ね。
ヒラがユーシャを回復し終えたところでアルチャルとヒラとシルディを再び眠らせる。できるだけ長く寝ないと体を壊すしね。
再びユーシャと2人きりになった。さて……様子がおかしいけどどうしたんだろ……。
やっぱり私が聞いたほうがいいわよね? このまま放置するわけにもいかないだろうし、やるしかないか。まったく、リーダーってものは本当に大変なんだからもう……。




