72話 特別実習③
人数が少ない私とヒラのチームは開けた場所にある川に行ってお水を調べることに。逆に3人いて戦力的にも強いユーシャ、シルディ、アルチャルには森に入ってもらって食料を集めてきてもらうことにした。
「さ、行きましょうか」
「は、はい!」
そういえばヒラと2人きりの時間を作るのって初めてだったっけ。あんまり普段の会話に入ってこないくらいに奥手だから関わる機会も自然に少なくなっちゃうのよね。でも要所要所でいい癒し成分を出してくれるから私たちのパーティになくてはならない存在なのよ。
「ヒラはキャンプの動画とかよく見るのよね? お水が飲めるかどうかとかもわかる?」
「あ……知識には無いんですけど魔法で鑑定できます」
え……何その魔法。アウトドア以外でいつ使うんだろ。きっとキャンプの動画に登場していた人が使っていて、それを必死になって覚えたんだろうなぁ。そんなヒラの姿を想像すると可愛い♪
「ヒラって女の子らしい趣味を持っているとばっかり思ってたけど、案外男の趣味を持っているのね」
「男の……趣味?」
あら? なんかヒラに流れる空気が不穏なものに……。何かまずいことでも言っちゃったかな……。
「知らないんですかリリーさん! 今やキャンプは女の子たちもハマる最高の趣味なんですよ? 都会から離れて自然を満喫できるし、アウトドアなお料理も楽しめるんです! ……私は行ったことはないですけど」
「そ、そう。ごめんなさい……」
こんなに圧をかけてくるヒラは初めて見たわね。
テントを張った場所から歩いて5分くらいで川が見えてきた。パッと見た感じ綺麗そうだけど……。
「じゃあヒラ、お願いしてもいい?」
「はい! 『ウォーターチェック』」
ずいぶんそのままストレートな名前の魔法ね。ちなみに私たちは魔法で水を出せるんだけどあれは攻撃用の水。飲んだら間違いなくお腹を壊すわ。なんなら誤飲させて相手のお腹を壊す狙いもあるし。まぁ中には飲むための水魔法を使える人もいるみたいだけど。
「はい。この水なら大丈夫そうです」
「本当? じゃあ汲んで持っていきましょうか!」
持って来たボトルに水を入れて持ってみると……お、重たい。ヒラは両手で持ってやっとって感じね。私もちょっとこれを持って歩いて行くのは厳しいかも。
「ど、どうしましょう……」
ヒラが困った表情になってしまった。ここまで来て手ぶらで帰るわけにはいかない。魔界の魔法だけど、使うしか無いか。
「……任せて。『ムスクロラーヤ!』」
筋力増強魔法。これなら軽々と持ち運びできるわ!
「い、今の何て魔法ですか? 聴き取れなかったです……」
「き、気にしないで! 田舎に伝わる農作業をするための魔法だから!」
ふぅ。まさかこんなところで田舎から来た設定が役に立つとは思わなかったわね。もしヒラが魔界の魔法を勉強したりしていて詳しかったら危なかったかも。人間界じゃ魔界の魔法は禁忌扱いされているし。便利なのに……。
それからまた5分歩いてテントの場所に戻る。ユーシャ達は……まだいないか。食料を探しているんだから当然よね。
そこからみんなの荷物にあった水筒に水を均等に分けてあげる。よし、これでいつ合流しても大丈夫ね。
それにしても運が良かったわね。川までに魔獣一体くらいには遭遇することも覚悟していたけどまったく出会わなかったわ。もしかしたらユーシャ達の方に魔獣がたくさん詰め寄せていたりして。なーんてね。もしそうだったとしても大丈夫。だって向こうは強いパーティにしたんだから。




