71話 特別実習②
「それにしてもすごい獣道ね……」
アルチャルが示した方向に向かってまっすぐ進んだせいでとんでもない獣道を通るはめになった。草のツタとかをかき分けて強引に進むほかない。
幸いにもまだ魔物にエンカウントしていないから体力の消耗は少ないけどね。
魔界の魔法を使ってもいいならこんな道通らずにひとっ飛びなのに……。
なんて悪態をついている間も無く草のツタが襲いかかってくる。もはや魔物並みにタチが悪い。
「ユーシャ、これ斬れない?」
できるだけ目立つことは避けたいんだけどあまりにも進むのに障壁となる。ここはユーシャの剣の力を借りて力技で突き進みたいところね。
「いけると思うけど……大丈夫?」
ユーシャも当然余計なことをして魔物を引き寄せないかを心配している。私だってこんなリスクは背負いたくない。でもこの先を見るともっとツタが複雑に絡み合って私たちの進路を妨害している。やるしかないんじゃないかなぁ。
「……うん、お願い」
悩んだ挙句やってもらうことに。このままツタだらけの道を通って行って、そこで魔物に出会って身動きがとれない! ってのが一番危ないし、仕方ないわよね。
「よーっし、『セイクリッドスラッシュ!』」
ユーシャの剣が眩く輝きだした。ユーシャはその剣を構え、一閃!
一瞬光ったと思ったら目の前のツタは全て切り裂かれ地面に落ちていた。……すご。軽く環境破壊ね。
「よ、よし、魔物が来る前に走って行っちゃいましょ!」
みんなで全力疾走してその場を立ち去る。ユーシャの剣筋は見事なもので地に落ちたツタはふわふわしていた。滑らかな切り口ね……。
なんとかダッシュしてその場を離れることができた。魔物には……見つかってないようね。
さらに数分歩いて、ようやくアルチャルが見つけた開けた場所に到着した。
「はぁ〜疲れたあぁ!」
シルディが腰を下ろして叫ぶ。その行動で魔物を呼び寄せないかビクビクしたけど大丈夫そうね。心臓に悪いわ……もう。
「て、テント張りましょうか!」
珍しくヒラが積極的に動いてくれた。自分で動いてくれると私が支持する必要がなくなるから楽ね。
「あれ〜! ヒラちゃんテント張るの上手いね!」
「そんな特技があったなんて……知らなかったです」
ユーシャとアルチャルが意外そうに呟く。たしかに私も意外だった。
「わ、私……実はキャンプには行かないんですけど、キャンプ動画を見るのが好きで……。それで張り方とかを覚えたんです」
へぇ〜、そんなアウトドアには見えなかったけどキャンプ動画を見る、ね……。ヒラの意外な一面だわ。こうやって泊まりでみんなと一緒にいると知らなかった一面がどんどん出てくるかもね。
さくさくっとテントを張ったヒラ。すごいお手並み。元から丁寧な子だと思っていたけど、まさかこんな場面で大きく役に立ってくれるだなんて嬉しい誤算だったわ。
「ありがとうヒラ。正直、これからみんなで四苦八苦してテントを張るものだと思っていたから助かったわ」
ヒラの頭をなでなでしてあげる。ほわぁ〜と表情が和らいでいくヒラにほっこりする。
「リリー! 次は何するのー?」
背中をパチンと叩いてユーシャが質問してきた。……なんか今のはたき、強くなかった? 気のせいかな……。
「つ、次はそうね……水が飲めそうか調べに行くのと、食べ物を集めるので別れましょうか」
食べ物と飲み物がないと始まらない。とはいえどうやってチーム分けしよう……まず指示出しできる私とアルチャルは分けるとして、攻守バランス型の私はヒラと2人で組んで、ユーシャとシルディとアルチャルの3人かな。
「じゃあ組み分けは私とヒラ。ユーシャとシルディとアルチャルで行きましょう」
なんだか納得がいってない感じの表情をする人がチラホラいるけど……まぁいいわ。サバイバルに私情は不要! 絶対に生き残るって決めたんだから!




