7話 実習前半①
実習室というからどんなものかと思っていたら……
「ひろーーーい!」
……私が感想を言う前にユーシャが叫んじゃった。まぁそういうこと。とにかく広い!
「はいそこ、お静かに」
「あ、はーーい……」
怒られちゃった♪ って感じの表情を私に見せてくる。可愛えぇ……。
「今日の実習は的当てです。パーティに1つ的を用意したので、そこに好きな魔法を撃ってください。的が威力を感知して色が変わるので参考に。では、始め!」
えっと……紫・青・赤・黄・白・黒の順で威力が高いということね。
「誰からいく? 私から?」
「いーや。ここはアタシから行かせてもらうぜ!」
指をポキポキと鳴らしながら前に出るシルディ。自信でもあるのかしら?
「行くぞ! 『ファイアー!!』」
シルディが使ったのは下級魔法『ファイア』。基本中の基本の魔法ね。
的の色が黒から白に変わる。6段階中の2段階目。まだまだということね。
「……ふ、ふん! アタシは攻撃はそんな得意じゃないんだよ!」
「わ、私も攻撃は得意じゃないから先にやるね……」
ヒラが積極的に前に出てきた。たしかにオドオドしていて攻撃的なところは見られないけど……
「ふぁ、『ファイア!』」
シルディよりさらに弱い炎が的に当たる。的の色は灰色。白色にもなれなかったってことね。
「ひう……」
小さい身長の上にさらに縮こまっていくヒラ。
「大丈夫だよシルディ、ヒラちゃん! 勇者パーティは攻撃だけじゃないんだから!」
「ユーシャ……」「ユーシャちゃん……」
慰められた2人が頬を赤くする。くっ……! この天然タラシめ……すぐに女の子を落とすんだから!
「つ、次! 私がいくから!」
「うん! 頑張って! リリー!」
さてと……周りを見る限り紫・青・赤・黄・白・黒の内の白止まりが1番多い印象かな? 黄色が出たら拍手って感じか。じゃあ黄色狙いくらいで……
「『バーニング!』」
渦巻く炎を的にぶつける! その瞬間的は青色に染まった! やば! やっちゃった!? 中位魔法だから大丈夫だと思ったのに!
「うわー! すごいすごい! リリーって天才?」
ユーシャが顔をキラキラさせて私を見てくる。
「そ、そんなことないわよ! ただ攻撃魔法が得意なだけで……」
今のは人間側の魔法を使った。つまり慣れている魔界側の魔法……たとえば『フランマ』とかを使っていたら確実に紫が出てたってことか……。まぁ魔王の娘だけはあるわね、私。
「じゃー最後は私かな〜♪」
ノリノリで前に出てくるユーシャ。どんな魔法を使うんだろ。
「おい! リリー、下がれ! 危ないぞ!」
「へ?」
「『セイクリッドジャベリン!』」
突然ユーシャの身体が白く光ったと思ったらとんでもない爆発音とともに白い物体が撃ち出された。直撃した的は紫色を示してから耐えきれなくなったのかそのまま砕け散った。辺りには的だった紫色の破片が散らばっている。
「……およ? やっちゃった?」
「コラー!!! 何をしているの! 加減というものを知りなさい!」
先生が鬼の形相でユーシャに詰め寄ってくる。
「ご、ごめんなさい! まさか壊れるなんて……」
先生に謝るユーシャの裏で、シルディに聞かざるを得ない!
「な、何!? 今の……」
「知らないのか? ユーシャは……あの伝説の勇者の娘なんだぞ? その才能を色濃く受け継いでるらしいんだ。まさか……ここまでとは思ってなかったけどな」
伝説の……勇者の娘……ってえぇ!? あの魔王をギリギリのところまで追い詰めて、勇者の存在を怖く思った魔王が私をここに寄越した、言わば元凶。それの娘が……ユーシャ!?
「ごめんねぇみんな。的が勿体ないから、私たちのパーティだけ2発目は無しだって〜」
こんなフワフワした娘が……伝説の勇者の娘……。
「どしたの? リリー」
「な、何でもない。ちょっと驚いただけ!」
そんな巡り合わせもあるなんて。これから私……どうなるの……?