63話 魔界へ①
黄金週間が絶望週間に変わった私にとっては来るな来るな……と念じていたけれど、時間の流れは残酷なものですぐに一週間が終わってしまった。実習はなかなか順調に進み、みんなの連携も深まってきた。これなら黄金週間明けの特別実習でもなんとかなる……かも?
ただ困ったことはみんなから黄金週間の過ごし方を聞かれたこと。まさか魔界に帰る☆ なんて言えるわけないし……。まぁ田舎の実家に帰るということでごまかしたけどね。
「やだやだやだ! 魔界なんか行きたくない!」
「ひ、姫様ぁ! 駄々をこねないでくださいまし〜〜!」
本当に行きたくない! 魔王に……父に会う会わないに関係なく、もう魔界なんて行きたくないよぉ……ユーシャたちと遊びたかったのに……。
「もう召集された以上行くしかありません。だって……名目上は魔王様からの召集ですから」
そう、魔王からの召集ということは要するに来なければ殺すということ。半ば脅し……。行く以外の選択肢なんて取れるわけないのよね……。
「はぁ……仕方ないか……」
「姫様、そろそろ出発しないと遅れてしまいます!」
「そ、それはマズイわね。じゃあ……行くわよ!」
「はい!」
嫌な嫌な黄金週間が始まる……! ちゃんとここに……ユーシャたちの元に生きて帰ってこれるように頑張らないと。
「「『フライ』」」
おっとっと……! 久しぶりに飛んだからちょっとバランスが! やっぱり日々の鍛錬がないとなまっちゃうわね。
「姫様、大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫よ。でも少し手を取ってもらっていい?」
「はい♡」
アスセナの柔らかい手を握ってバランスを取る。アスセナの手……安心するわね。もう魔界にいる間ずっと握っていようかしら。
「ありがとう。じゃあ行きましょうか」
「はい!」
人間界をそそくさと脱出して魔界へ。『フライ』はどうやら人間界だと認められていないというか、高等な魔法だと思われているから見つかると厄介なのよね。初日に学んだことをちゃんと活かしているわ! ドヤァ!
しばらく飛んでいくとすぐに空気が変わっていく。この淀んだ感じ……帰ってきたのね、魔界に。まぁアスセナと魔物狩りした時にも帰ってきたけど、今からは魔界の大元まで行かないと行けないのよね……。
召集書に書かれた場所にようやく到着! 指定された場所は魔王城ではなく、魔王出張先2号目。さぁ……誰が待ち構えているのかしら?
「こ、こんにちは〜」
魔王出張先2号目の建物の中からドタバタと足音がする。この慌ただしさ……まさか!
「リリー!」
出てきたのはおっぱいも背も大きい黒髪ロングの女性。丸っこい羽が生えているのが特徴的なこの人は……
「べ、ベルゼブブ!」
魔王軍四天王の1人、そして紅一点でもあるベルゼブブ! よく面倒を見てもらっていた私にとって姉のような存在なの。
「久しぶりじゃない! でもなんでベルゼブブがここに?」
「ふふん♪ 魔王様からのご依頼でね、リリーの成果の発表を聞いてこいってさ。終わったら遊んでもいいって言われたよ」
「本当!? 嬉しい!」
なぁーんだ。ベルゼブブが試験官なら全然いいや。何ならこっち側に引き込みたい……けどダメか。四天王っていう立場ある人だし。
「お久しぶりです。ベルゼブブ様」
「あら、アスセナじゃないか。6年ぶりくらいかな?」
もちろん私の昔からの友達でもあるアスセナとは顔なじみよ。
懐かしいわね……なんて思っていたらガバッと私のこともアスセナも両方をハグしてきた。
「えっ? どうしたの、ベルゼブブ……」
「どうされたのですか!?」
「人間界に行ったのだろう? それを聞いて心配だったのさ。大丈夫? 酷い目にあっていない? 人間ってイジメとか多いんでしょ?」
ぶっちゃけ魔界より楽しい……なんて言えないわよね。
「心配性ねベルゼブブは。ありがとう、大丈夫よ」
少し裏切っていることに対して申し訳なくなっちゃった。ベルゼブブは本気で私たちを心配してくれる……良い人だから。




